がん対策基本法

目次

 第一章 総則(第一条―第八条)

 第二章 がん対策推進基本計画等(第九条―第十一条)

 第三章 基本的施策

 第一節 がんの予防及び早期発見の推進(第十二条・第十三条)

 第二節 がん医療の均てん化の促進等(第十四条―第十七条)

 第三節 研究の推進等(第十八条)

 第四章 がん対策推進協議会(第十九条・第二十条)

 附則

 

 

第一章 総則

 

 (目的)

第一条 この法律は、我が国のがん対策がこれまでの取組により進展し、成果を収めてきたものの、なお、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている等がんが国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状にかんがみ、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び医師等の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

 

 (基本理念)

第二条 がん対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

一 がんの克服を目指し、がんに関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、がんの予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。

二 がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を受けることができるようにすること。

三 がん患者の置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重してがんの治療方法等が選択されるようがん医療を提供する体制の整備がなされること。

 

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、がん対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。


 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、がん対策に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 

 (医療保険者の責務)

第五条 医療保険者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第七項に規定する医療保険者をいう。)は、国及び地方公共団体が講ずるがんの予防に関する啓発及び知識の普及、がん検診に関する普及啓発等の施策に協力するよう努めなければならない。

 
  (国民の責務)

第六条 国民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、必要に応じ、がん検診を受けるよう努めなければならない。

 

 (医師等の責務)

第七条 医師その他の医療関係者は、国及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力し、がんの予防に寄与するよう努めるとともに、がん患者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながん医療を行うよう努めなければならない。


  (法制上の措置等)

第八条 政府は、がん対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 

 

第二章 がん対策推進基本計画等

 

 (がん対策推進基本計画)

第九条 政府は、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、がん対策の推進に関する基本的な計画(以下「がん対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 がん対策推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。

3 厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、がん対策推進協議会の意見を聴くものとする。

5 政府は、がん対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

6 政府は、適時に、第二項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

7 政府は、がん医療に関する状況の変化を勘案し、及びがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、がん対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

8 第三項から第五項までの規定は、がん対策推進基本計画の変更について準用する。

 

 (関係行政機関への要請)

第十条 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、がん対策推進基本計画の策定のための資料の提出又はがん対策推進基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。

 

 (都道府県がん対策推進計画)

第十一条 都道府県は、がん対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県におけるがん患者に対するがん医療の提供の状況等を踏まえ、当該都道府県におけるがん対策の推進に関する計画(以下「都道府県がん対策推進計画」という。)を策定しなければならない。

2 都道府県がん対策推進計画は、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画、介護保険法第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画その他の法令の規定による計画であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。

3 都道府県は、都道府県がん対策推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 都道府県は、当該都道府県におけるがん医療に関する状況の変化を勘案し、及び当該都道府県におけるがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、都道府県がん対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

5 第三項の規定は、都道府県がん対策推進計画の変更について準用する。

 

 

第三章 基本的施策

 

第一節 がんの予防及び早期発見の推進

 

 (がんの予防の推進)

第十二条 国及び地方公共団体は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響に関する啓発及び知識の普及その他のがんの予防の推進のために必要な施策を講ずるものとする。


 (がん検診の質の向上等)

第十三条 国及び地方公共団体は、がんの早期発見に資するよう、がん検診の方法等の検討、がん検診の事業評価の実施、がん検診に携わる医療従事者に対する研修の機会の確保その他のがん検診の質の向上等を図るために必要な施策を講ずるとともに、がん検診の受診率の向上に資するよう、がん検診に関する普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

 

第二節 がん医療の均てん化の促進等

 

 (専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成)

第十四条 国及び地方公共団体は、手術、放射線療法、化学療法その他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。


  (医療機関の整備等)
 

第十五条 国及び地方公共団体は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくそのがんの状態に応じた適切ながん医療を受けることができるよう、専門的ながん医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、がん患者に対し適切ながん医療が提供されるよう、国立がんセンター、前項の医療機関その他の医療機関等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 

 (がん患者の療養生活の質の維持向上)

第十六条 国及び地方公共団体は、がん患者の状況に応じて疼(とう)痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること、居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保すること、医療従事者に対するがん患者の療養生活の質の維持向上に関する研修の機会を確保することその他のがん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとする。

 

 (がん医療に関する情報の収集提供体制の整備等)

第十七条 国及び地方公共団体は、がん医療に関する情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるとともに、がん患者及びその家族に対する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、がん患者のがんの罹(り)患、転帰その他の状況を把握し、分析するための取組を支援するために必要な施策を講ずるものとする。

 

第三節 研究の推進等

 

第十八条 国及び地方公共団体は、がんの本態解明、革新的ながんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他のがんの罹患率及びがんによる死亡率の低下に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、がん医療を行う上で特に必要性が高い医薬品及び医療機器の早期の薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)の規定による製造販売の承認に資するようその治験が迅速かつ確実に行われ、並びにがん医療に係る標準的な治療方法の開発に係る臨床研究が円滑に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

 

第四章 がん対策推進協議会

 

第十九条 厚生労働省に、がん対策推進基本計画に関し、第九条第四項(同条第八項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、がん対策推進協議会(以下「協議会」という。)を置く。

第二十条 協議会は、委員二十人以内で組織する。

2 協議会の委員は、がん患者及びその家族又は遺族を代表する者、がん医療に従事する者並びに学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。

3 協議会の委員は、非常勤とする。

4 前三項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 

附 則

 

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十九年四月一日から施行する。

 
 (厚生労働省設置法の一部改正)

 

第二条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第十七号の次に次の一号を加える。

 ・十七の二 がん対策基本法(平成十八年法律第   号)第九条第一項に規定するがん対策推進基本計画の策定及び推進に関すること。

 

 

独立行政法人評価委員会

 

・第六条第二項中「独立行政法人評価委員会」を

 

に改める。

 

がん対策推進協議会

 

 

第十一条の二の次に次の一条を加える。

 (がん対策推進協議会)

 

第十一条の三 がん対策推進協議会については、がん対策基本法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。

理 由

我が国のがん対策がこれまでの取組により進展し、成果を収めてきたものの、なお、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている等がんが国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状にかんがみ、がん対策を総合的かつ計画的に推進するため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び医師等の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。