産経新聞 社会ニュース (06/06/03)

民主・山本孝史議員 「がん告白 患者と国会結ぶ」

治療体制向上へ訴え

  民主党の山本孝史参院議員(56)が5月22日の参院本会議で自らがん患者であることを告白し、同党が提案しているがん対策基本法案を今国会で成立させるよう訴えた。「当事者が動かないと政治は動かない」と語り、抗がん剤治療を受けながら議員活動を続けている。治療体制の向上を目指し、今月6日の参院厚生労働委員会で再び質開に立つ予定だ。

 「がん治療には地域開格差、施設開格差があり、治療法があるのに『もう治りません』といって見放された『がん難民』が日本列島をさまよっている。救える命がいっぱいあるのに、次々と失われている」

  本会議の代表質問で小泉純一郎首相を含む、議場の議員全員にがん対策の重要性を訴えた。涙がこぼれ、ハンカチでぬぐった。持ち時開15分の経過を知らせるメモが事務局から扇千景議長に渡された。扇議長は遮ることなく最後まで開き入り、小泉首相は丁寧に答弁書を読み上げた。

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  がんと診断されたのは今年1月。昨年12月末に受けた血液検査で異常が見つかった。医療機開が年末年始の休みに入ったため、ひたすら診断結果を待つ正月だった。
  「大病を告げられたときは、あわてましたよ。でも、来るべきものが来たなという感じだったかな」
  政治家にとって病気の告白は政治生命の終わりを意味する。病気とわかれば求心力を失ってしまうため、永田町ではひた隠しにするのが常識。
  あえてがんを告白したのは、患者たちの"声にならない声”を直接国会に訴えることができるからだ。
  昨年5月、患者本位のがん医療への改革を話し合う「第1回がん患者大集会」が大阪市で開かれた。2000人の患者が全国から集まった。
  「集会をきっかけに、ぐーっと厚生労働省が動いたんです。がん対策推進本部と事務を担う推進室ができた。病と闘いながら訴え続けた先輩たちがいるからです」
  当事者でなければ政治は動かせないことを実感した。

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  5歳の時に2つ年上の兄を交通事故で亡くし、ぽっかりと心の中に穴が開いた。
  「がんは死と隣り合わせだけれどすぐに死ぬわけではない。荷物を片づけたり、嫁さんに迷惑をかけないように書類の整理をする時間もあるからね」と自分を納得させるように語る。
  学生時代は交通遺児の支援活動に没頭。交通遺児育英会の事務局長を経て政界に身を投じた。
  約12年間の議員生活を通して、年金、臓器移植、薬害エイズ、介護保険などの問題に取り組み国会論戦をりードしてきた。「日本の社会保障制度の良心」(厚労省幹部)と役人からの信頼も厚い。
  がんを告白してから、事務所には激励の電話が絶えない。民間療法のパンフレットとともに励ましのメッセージを贈ってくれる人もいる。
  取材中も病気を知った知人からお見舞いの電話がかかってきた。
   「引退するなんていってないよ。今も国会にいるよ。先のことは神のみぞ知るだよ」と笑顔で答える。
  国会議員としての活動を優先させるため、地元の大阪ではなく、東京の病院で、国会日程をにらみながら治療を続ける。
   「がん医療に足りないものは何か。患者とともに考え、国会と患者の懸け橋となりたい」

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