朝日新聞(大阪版) (07/07/13)
命の訴え
 
胸腺がん・山本氏 「自分しかできぬ仕事」

神経の難病・川口氏 「取り組む分野増えた」

 

 難病を抱えながら、比例区で再選を目指す参院議員がいる。胸腺がんの山本孝史議員(58)=民主=と、筋肉に力が入らなくなるギラン・バレー症候群の川口順子元外相(66)=自民。政治家にとって、病気の公表は重い選択だった。2人は、当事者の視点を国会で生かしたいという。(上野創、向井貴之)

 「国会議員の一番の仕事はいのちを守ることと思ってる。がんで亡くなる人が減るように、がんになっても安心して医療が受けられるように、この1年思いを込めて働いてきました」参院選が公示された12日夜、新宿駅東口。山本氏は、鼻の下に付けていた酸素用のチューブを外してマイクを握った。

 がんの治療を受けていると国会で公表してから1年。その間、がん対策と自殺対策の基本法を議員立法で成就させ、基本計画や大綱づくりで市民や他の議員と奔走した。いずれの法も、患者や遺族らの視点を尊重しながら国が責任を持って取り組むと明記されている。

 一方で病気は進んだ。「投票日まで生きられるのか」と不安に駆られたこの春、引退も考えた。「制度ができた後が重要。病気になったら何もできなくなるマイナスの人生でええのか。自分しかできない国会での仕事があるやないか」。そう思い直し、大阪選挙区から比例区にくら替えして比例区での立候補を決意した。

 抗がん剤の治療は体力勝負。街頭で長時間話すのは難しいが、少しでも「弱い立場の人にも生きる権利を」と伝えたいと考える。6日、都内で開かれた集会ではその気持ちを訴えた。「選挙はどういう社会にしたいか、みんなで考えるチャンス。命のことを考えましょうよ」

 川口氏は12日、東京.秋葉原で第一声を上げた安倍首相と並んだ。その後は神奈川県内で街頭演説も。だが、足への負担を考え、歩数を制限しての選挙活動だ。3月下旬、車から降りる際に強いしびれと痛みが両足に走った。ギラン・バレー症侯群は筋肉を動かす神経の障害で、10万人に1、2人が発症する難痛だ。約1カ月の入院を余儀なくされた。

 退院直後は、ドアのノブも回せないほどだった。それでも早期発見の場合は数カ月で治ると聞き、リハビリに励んだ。「病気を公表したら、選挙に悪影響が出るのでは」と悩んだ。しかし、「重病で選挙に出られないらしい」とうわさを立てられ腹を決めた。6月4日、パーティーに車いすで臨み、公表した。拍手に励まされた。

 疲労がたまると回復が遅くなるため、今でも時々つえを使う。活動も首都圏中心に限定されそうだ。だが、地方の専門医の不足や医療費負担の問題など、取り組みたいテーマが増えたという。

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