朝日売新聞「窓」 (07/07/31)
 論説委員質から     山本孝史さんの闘い

 「医者からは重病人と言われ、候補者らしからぬ候補者だったが、ともかく最後まで選挙ができて、おまけに当選までさせてもらい、不思議な気がしている」

 進行がんと闘いながら、参院選に出馬した山本孝史さん(58)は、民主党で一番最後に当選を決めた後、そう言った。

 「選挙を通じて命の大事さを訴える候補者が増えてきたような気がする」「がん患者として体験したことを、引き続き政治の場で訴えていきたい」

 体重は10`減り、体はすっかりやせた。選挙区から比例区にくら替えし、ボランティアが細々と支える選挙戦では、街頭に4回しか立てなかった。最後の演説では「しんどいんです」と漏らした。

 山本さんは5月末、主治医から「体力が落ちて、これ以上、抗がん剤治療はできない」と言われたこともあった。残された時間をどうするのか。思い悩んだ末の結論が「命の政策」を訴えることだった。

 その心境を山本さんは手記「いのちをかけて、いのちを守る」に記している。

 治療が難しいがん患者でも、できることはたくさんある。いい仕事もできる。こんなメッセージをがん患者や難病患者、障害者、虚弱な高齢者など国や社会から「役に立たない」と見なされがちな人たちに代わって、社会に届けたいと思った。

 山本さんは30日、医療用麻薬などの承認を検討する厚生労働省の会議に出席した。がんの治療を続けながら、自ら「一日一仕事」と決めた活動を再開した。    〈梶本章〉

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