朝日売新聞「天声人語」 (07/08/01)

 どうっと吹いた風が、自民党という森の木々をなぎ倒していった。累々たる倒木。聞こえてくるのは、首相や閣僚たちへの恨み節だ。「一票」が猛威をふるった7月の言葉から。

  東京で3選をめざした自民の保坂三蔵氏は、あえなく6位に沈んだ。「年金問題、政治とカネ、閣僚の失言など暴風雨のなか、演説の大半をおわびや経過報告に割かれた」。本論で勝負できなかった、と悔しさをにじませる。

  農村でも逆風が吹いた。新顔が大敗した山形で、運動中に応援に歩いた衆院議員は、支持者の突き上げを食った。「大臣の失言、なんだべ」「松岡(農水相)の後は、ばんそうこう張った男か。安倍さんには学習してもらわねえと」

  落選したほかの陣営も悲鳴を上げた。「年金だけならいいが、余計なものがどんどん出てくる」(青森)。「オウンゴールが4点ぐらいだ」(千葉)。足を引っ張った代表格の赤城農水相は選挙翌日、「…………」。終始無言で登庁した。

  惨敗を尻目に、首相は続投を表明した。派閥のボスらが即刻承知したのを、作家の辻井喬さんは嘆く。「子分を一人でも多く閣僚にしようという計算で、自民党全体のことなんて考えていない。まして国家の将来なんて頭の片隅にもない」

  追い風は民主党に吹いた。比例区の最後に滑り込んだ山本孝史氏は、進行がんと闘う。「天から『あなたの出番を作りましたよ』と言われた気がする。6年は無理かもしれないが、命ある限り仕事をしたい」。弱い人たちへの優しさを、自らに課す。

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