メールマガジン「蝸牛のつぶやき」バックナンバー
               
(vol.18  2004年9月、10月)

10月31日(日)号

 くらしの安心を守るのは、誰か?

 小泉改造内閣の発足を受けて開かれた臨時国会。冒頭の総理所信演説に対して、民主党から質問に立った、衆議院での横路孝弘「明日の内閣」厚労大臣、参議院での朝日俊弘、柳田稔議員が、期せずして同じ趣旨の問いかけをした。

  「国民の安心を守るのは誰か? セーフティネットを整備する責任は、誰が担うのか?」。
自助、自己責任を強調する小泉総理に、社会保障再構築を進める際の、理念を明確に示せと迫ったのだ。しかし、小泉総理から、公的セクターの役割についての明確な答弁はなかった。

 自助や自己責任は当然だが、そうした個人的取り組みの及ばないところに落とし穴がいっぱいある。社会的なリスクに、個人で対応するのには限界がある。だからこそ、政府が存在し、社会保険や社会保障が制度化されているのではないのか。この視点を、3度も厚生大臣を務めた小泉さんは、残念ながら持っていない。

■ 生活保護費の国庫負担を削減?

 いわゆる「三位一体の改革」に伴って、厚労省は、生活保護における国の補助率を大幅にカットするという。
生活保護制度の運営の適正化は当然だが、それによる財源の削減額は知れたもの。憲法が保障する生存権を具体化した生活保護制度、すなわち、国が最低生活を保障するための生活保護までも、国家財政の行き詰まりを打開するためだとして、簡単に変質させて良いのだろうか。それが厚労省の姿勢なのか。

 現在の生活保護制度は、病気や失業等により生活が困難となった現役世代が、一時的に生活を支える「止まり木」のような役割を果たしていると言うより、高齢者が、低年金や疾病などのために、長期に受給するという制度になっている。
三位一体改革で国庫補助率をカットする前に、低年金の高齢者の生活を、誰が、どのようにして支えるのかを議論するほうが、先決なのだ。しかし政府や厚労省が年金「改革」で出した答えは、基礎年金の15%カットだった。


■ 見通し不透明な「介護保険の見直し」 

 来年度に大改正が予定される介護保険だが、自民党の腰が引けている。
 介護保険財政の膨張を抑制するため厚労省は、(1)軽度の要介護者には、介護保険からの給付を取りやめ、代わって介護予防事業への参加を求めることと、(2)障害者への支援費制度の財源が不足している事態の打開策としても、被保険者の範囲を最大で20歳からに拡大し、保険料の納付を求めることを考えている。

 ところが経済界は、「今年は年金保険料が引き上げられ、社会保障における企業負担の増加が決められた。そのうえ、来年度は介護保険料での企業負担をまた増やすのか」と大反対。自民党も、その声に押されて、腰が引けているのだそうだ。

 理念なしに、財政の改善だけに着目して制度変更を行なうと、混乱が拡がるだけだ。
 現行の介護保険制度の実態は「高齢者介護保険」。そのため、40歳〜64歳の人は、保険料を負担しつつも、給付は限定されている。
 そもそも、社会保障制度を普遍的な制度にしていこうとするのならば(すなわち、社会保障制度を、あるべき姿に近づけようとするならば)、負担や給付を年齢で区切るのはおかしい。
介護保険を、介護を必要とする高齢者も含めたすべての障害者の生活を支援する保険制度に発展させ、給付もゼロ歳からにすべきだ。
 企業は、負担が増えると反対するだろうが、企業は、障害者にも職場を保障する社会的責務がある。低い障害者雇用率を改善することなく、負担増に反対という姿勢は、決して社会からの支持は得られないと思う。ぜひ経済界も理解して欲しい。


◆ ちょっと遅れましたが、今週の「何でやねん!?」

* ケリー候補とのテレビ討論会に臨んだブッシュ大統領の背中に、四角い盛り上がり。受信機だろうと噂された。「華氏911」でムーアが暴いた、おどおどしたブッシュの表情を思い出した。それでも、最後はブッシュかな。そんな気がする。
* サモアで、自衛隊が建てた「復興支援」モニュメントが爆破された。まるで戦勝記念碑のように、道路の真ん中のロータリーに立っていた。自衛隊が撤収するときに、地元の人たちが自発的に建ててくれたのなら、爆破はされない。自衛隊が自分で建てたら、「ここまで来た」という印みたいなもの。やっぱり自衛隊は、軍隊だ。

* 郵政民営化断行内閣というなら、ブレアが「教育、教育、教育」といったように、小泉総理も所信表明演説を、郵政改革で押しまくれば良かった。税制や施設利用の優遇措置を講じたままの「民営化」では、宅配便システムを開発・展開したヤマト運輸との競争は、公平とは言えないのではないか。小泉さんは、郵政改革で何がしたいのだろう。
* 郵政公社が、正月2日の年賀状配達の復活を計画中とか。サービス過剰だ。何でも便利になれば良いのか。お正月は、みんなで休もう。お正月は家庭で静かに過ごすのが、日本の伝統だ! デパートも元旦から営業する店がある。開店すれば売り上げはあるだろうが、「家族そろってお正月」の時間を奪うのは如何なものか。
* 国会周辺でも、コンビニの新規開店が相次いでいて、コンビニの角を曲がれば、またコンビニという状況。値段は割高、大量に捨てられる食料品。深夜営業での電気代は馬鹿にならないだろうし、犯罪も誘発する。そもそも終日営業は人間の生理的営みに反する。便利さもホドホドが肝心。 

* 小泉総理の所信演説が、テレビで生中継された。総理の演説中に、議場で隣席の議員と談笑する武部幹事長。終了後、テレビ局のインタビューに、「意気込みに溢れる演説でした」と武部幹事長。あなた、演説、聴いていなかったでしょう? テレビは何でも映し出す。お気をつけあそばせ。

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10月3日(日)号

 イチロー選手が、84年ぶりに大リーグの最多安打記録を更新。いつもは冷静なイチロー選手の笑顔が素敵でした。

 「時間が経って、とんでもないことだと気付くでしょう」というイチロー選手のコメントを聞きながら、「とんでもないことになることが判っていたのに」と思ったことがあります。年金制度のことです。

■年金財政を左右する人口と経済成長

 民主党組織や労働組合などから依頼されて、年金についてお話する機会が増えました。こんな風にお話しています。

 年金改革とは、長期的に年金受給総額に見合った年金給付財源を確保する手立てを講じることですが、その際、大きな決定要因は、年齢別の人口と経済成長の見通しです。

 わが国の出生者数を経年で見ると、戦後直ぐの第一次ベビーブーム(団塊の世代)、その子ども世代である1973年をピークとする第二次ベビーブームと、大きな山が2つありますが、第三次ベビーブームの山は出来ませんでした。

 このため、団塊世代の年金は第二次ベビーブーマーが支えても、第二次ベビーブーマーの年金を支える力が、人口構成上からして日本社会にはありません。たとえ少子化傾向が改善されたとしても、年金保険料を負担するのは20年後になりますので、年金財政を好転させる力とは当面はなりません。

 そして、日本社会が迎える人口減少社会では、保険料納付者の数が減少したうえに、経済成長も高原状態になるため、賃金の増加は見込めず、保険料納付総額は伸びません。一方で平均寿命が伸びて、年金受給期間が長期化します。こうして、年金財政は今後さらに厳しくなるはずです。

■年金制度の破綻は既定の事実だった

 しかし、この様な事態になることは、すでに20年ほど前には判っていたのです。団塊の世代は、自らの年金給付に備えて保険料を早期に引き上げ、積立金を保有しておくべきでした。しかし、保険料引き上げはできず、たとえできたとしても、膨大な積立金の存在は、別の深刻な問題を引き起こしていたでしょう。

 次なる手立ては、年金給付総額の引き下げでした。年金受給開始年齢の引き上げは、年金受給期間を短縮することから極めて有効な年金給付総額の抑制策ですが、段階的な実施しか選択肢はないため、急激な給付総額の抑制とはなりません。そして、いまでも60歳定年が主流となっているのが現状ですから、定年から年金受給までの「空白期間」が生じるという問題も残されたままです。

 こうして、「とんでもないことになることが判っていたのに」、政治も国民も、有効な年金改革はできず、問題の先送りを続けてきたのです。今また、同じ過ちを繰り返そうとしています。

■理念を明確にして改革を説くこと

 社会保障改革の理念は、「負担を求めざるを得ない時は公平に」「給付を削減せざるを得ない時は、大きな給付を受けている人から順番に」です。

 その観点からすれば、基礎年金の負担の一元化(国民年金被保険者の1号は定額、2号は定率、3号は自ら負担せずという、歪な保険料負担の構造を是正する)が最優先課題です。そして、基礎年金を手厚くする方策を追求すべきです。

 私は、年金の講演会でこのように年金改革を説きます。参加者の皆さんは納得してくださり、消費税引き上げにも理解してくださいます。

 岡田代表と連合の笹森会長が会談し、基礎年金の一元化で合意しました。税目が明記されていないので、消費税か、所得比例の社会保障税とするかは今後の議論に残されています。以上述べたような方向性を示して、与党も協議に応じるなら、協議すればよいと思います。

 ところで、これからの日本社会が「とんでもない」方向に進まないように、小泉純イチローの「改革」には、絶えざる監視が必要です。

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9月15日(水)号

  13日、民主党臨時党大会で、岡田代表を再選し、新体制が発足しました。

 岡田代表は、政権交代の実現が、唯一最大の仕事と言っています。そのために、党改革、政策、選挙態勢の3つを課題に挙げました。与党である自民党は、党内で政策の食い違いがあっても、最終的には官僚が書いた作文をベースに、多少の色付けをすることで進んでいくでしょうが、政権を持たない民主党では、多様な意見を一本にまとめるのは大変です。また、官僚機構が候補者の供給源になりつつある現状では、ますます政策面での違いを見せるのは大変です。「自民党+官僚機構」に対比して、「民主党+市民団体」という構図しかないのではないでしょうか。

 岡田代表は、党改革で自民党との違いを見せようとしています。代表交際費の公開、党会計への外部監査の導入などですが、選挙対策など、お金の動く部分まで公開するのは、手の内を見せているようなものだとして、反対の声もあります。しかし、民主党にとって政治資金の透明性は、自民党との違いを鮮明にする最大要素です。行き過ぎた党改革が党解体につながるのではと心配するむきもありますが、ここは、一致団結して「明朗会計の民主党」をPRすべきです。

 大会の壇上には「明日の内閣」のメンバーも並びました。鳩山外務、菅国土交通、横路厚生労働と、重厚な布陣で、政権交代があれば、この顔ぶれになるのだろうと言うリアリティを感じさせました。

 大会後、さっそく横路大臣と今後の厚労委員会での議題を協議。日歯問題での閉会中審査を要求すること、年金、介護保険への対応などを話し合いました。内閣改造で、坂口大臣の後は、やはり公明党なのでしょうか。

 13日の大会前には、難病患者団体から、「三位一体の改革に伴って難病対策費が一括して地方に交付されるため、全国的な施策面でのバラツキが出る。何とか国の責務を明確にして、ばらつきのないようにして欲しい」との陳情を受けました。難病対策の座長を務める谷博之議員が宇都宮市長選に担ぎ出されるかもしれないという新聞記事に驚いています。

 大会後は、ホームレス対策の来年度予算について厚労省からヒアリング。大阪選出の辻、稲見、中川代議士に、松岡、山本の参議院議員が出席。雇用対策臨時特例交付金が打ち切りになることで、仕事を失うホームレスがえること、その対策が全くなされていないことについて、きちんと対策を考えてほしいと強く要求。次回までに具体的な回答をするよう求めました。

 9月9日は救急の日で、通りかかった東京駅で「除細動器」の実演を行なっていました。音声での指示があるので簡単ですが、いざ生身の人体に装着するとなると、使用する自信は、ぐらぐらしそう。

  10日、ようやくマイケル・ムーア監督の米映画「華氏911」を観ました。イラク戦争には大義がなく、ブッシュ政権と軍需産業の蜜月がクローズアップされている内容です。また、軍による入隊志願者のリクルートでターゲットとされているのは、失業している若者です。アメリカにとって戦争は、「自国経済の浮揚策であり、若者の失業対策」というメッセージは強烈です。マイケル・ムーア監督が、「大統領選の前にこの映画をテレビで放映したい」と言っているそうです。ブッシュ大統領の続投を許すのかどうか、それを決めるのはアメリカ国民ですから、国民一人一人にこのドキュメンタリー映画を通じて「イラク戦争の真実」を見てもらうことはいいことだと思います。

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9月2日(木)号

 参議院ODA調査団の一員として、8月17日から26日まで、タイとインドネシアを訪問し、ODAによる事業の現場視察や関係者との意見交換を行なってきました。

 ODAや草の根無償支援、技術移転プロジェクトなど、できるだけ多くの現場を訪ねたいと要望したのですが、日程や交通機関、治安情勢などから、残念ながら視察地は限られたものにならざるを得ませんでした。
 しかしながら、「今後、日本はどのような理念に基づいてODAを展開すべきか」という根源的な質問に答えられるようにと、また、現地の日本関係者から「いい話」ばかり聞かされないようにと、出発前には、国会議事録を読み返し、関係部署から各種の報告書を入手して、できるだけ事前勉強をして出かけました。外務省が行なっているODAの民間人モニターと同じレベルの報告書では、国会議員としての名折れになりますから。

 昨年、ODA大綱が見直され、日本のODAは戦略的な色彩を強めようとしています。現地での多くのご協力のお陰で、今回の視察を通じて、財政再建下におけるODAのあり方、ODA事業の評価方法、東南アジア諸国との外交関係など、多くの課題について考察を深めることができました。詳細については、別途に報告をします。タイでもインドネシアでも、街に溢れるアジアの熱気に心地よさを感じました。

 ちょうど視察時期と重なったアテネ五輪では、日本選手の活躍、マラソンや体操競技でのスポーツマンシップの発露など、まさに感動しました。
 一方、日本の政治状況は、橋本元総理も関与した日本歯科医師政治連盟からの1億円献金事件や、関電の管破裂事故、さらに三菱自動車の開き直りなど、唖然とさせられる事件が続いています。感動を与えられる政治を展開しなければなりません。

 岡田代表が再選されることになりました。小沢さんは「政策論争がなかったのが残念」と言われたそうですが、対抗馬のない選挙では、仕方のないことでしょう。
私は憲法改正に反対ではありませんが、現在のような政治状況、国民の政治意識のなかでの改正には慎重です。原理主義者と言われる岡田代表には、変な妥協はして欲しくありません。

 来年に予定される介護保険の見直しに向けて、9月4日に、市民団体主催のシンポジュウムに出席します。その準備をしています。介護保険財政の強化、介護サービスの質的向上が、見直しのポイントです。

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