許すな飲酒運転!見逃すな飲酒運転!
「交通事故ゼロをめざして!」2002年11月28日産経新聞
運送会社 嫌疑不十分で不起訴
東名の飲酒死亡事故
東京都世田谷区の東名高速で平成11年11月、飲酒運転の大型トラックが乗用車に追突し女児二人が死亡した事故で、飲酒運転を黙認していたとして道交法違反(使用者の義務違反)容疑で書類送検された運転手の勤務先である高知通運(高知市)と同社土佐支店の支店長代理(42)について、東京地検は27日までに、嫌疑不十分で不起訴処分とした。
警視庁高速隊の調べによると、運転手(懲役4年の実刑判決で服役中)は事故の約3時間前に飲酒をし、足がふらつくほどの状態で運転。運行管理者の支店長代理は、運転手がしばしば飲酒運転をしていたことを知りながらも対応をとらずに事故当日も運転させて、結果的に飲酒運転を黙認したとして、時効である27日直前の今月14日、同代理と法人としての同社の立件に踏み切った。
しかし、東京地検は、同社は運転手が9時間のフェリー乗船中の飲酒はあり得るとの認識はあったが、酒が残るまでの認識はなかったと判断。飲酒を把握していたと認める証拠がないとの理由で、運行管理者の責任は問えないとした。
遺族、検察批判 「企業の言い逃れ許す」
この事故で二人の女児を亡くした井上保孝さん(52)、郁美さん(34)夫妻は27日午後、不起訴処分を東京地検から聞かされた。28日に命日を迎える娘たちに、よい報告はできなかった。
保孝さんは「法律の限界なのか」。郁美さんは「警視庁の書類送検はうれしかったが、ここにきて大きな壁にぶつかった」と話す。
井上さん夫婦は「悪質な交通事故で会社の責任が問われないとなると、企業の言い逃れを許すことになる」と検察の対応を批判。「起訴しても有罪にならない、ということなのだろうが、裁きの土俵にのせることに意味があり、『悪質な運転は許さない』と警鐘を鳴らせるのに」と無念さをにじませた。
小学二年の片山隼君=当時(8)=がダンプカーにひかれて死亡しながら運転手が不起訴となり、再捜査を要望して、東京地検が在宅起訴した経験を持つ隼君の父、片山徒有さん(46)は「不起訴という門前払いは被害者の気持ちを軽視した判断。再捜査をお願いしたい。私自身、命日を迎えるのは苦しかった。命日前日にこんな結果を知らされたご遺族の気持ちを思うとつらい」と話した。
悪質な交通事故防止に取り組む元交通遺児育英会(現あしなが育英会)事務局長、山本孝史参院議員(民主)は「地検の決定は常識外れの判断」と手厳しい。「飲酒は『本人の問題』というが、社の責任が問われないのでは、飲酒運転厳罰化への流れを止め、管理者の気の弛みにつながる」と批判した。
交通事故議連事務局長の井上和雄衆院議員(民主)も「日本は飲酒運転に甘い。飲酒・危険運転について、管理者責任を問うよう法整備をする必要がある」と述べた。