がんの制圧に必要な人材の養成・検診から診断・治療まで

2012年7月29日(日) 大阪大学 市民公開シンポジウム

(主催:文部科学省がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン 於:大阪大学中之島センター)
山本ゆき「山本孝史のいのちのバトン」代表

演題「がん対策基本法の原点に立ち返って」

 がん対策基本法は2006年6月16日に制定され、以後、6年が経過、施行から5年が過ぎました。今年6月には、第2次の国の「がん対策推進基本計画」が発表され、今後の5か年の国の取り組みが明らかにされました。新旧の基本計画から見えてきたことを当時の山本孝史の思いを織り交ぜながら、がん医療の分野を中心にお話しいたしました。

  基本法は、25日間という異例のスピードで成立しています。そのきっかけは、山本の参議院本会議での代表質問(2006年5月22日)でした。「自分はがん患者である」と告白し、貧困な日本のがん医療の改善を訴えた山本の姿をビデオで流し、私も改めて、がん患者当事者たちの運動が結実した基本法の原点を忘れてはならないと思いました。

  この5年間で、拠点病院が整備されつつあり、がん専門の医療従事者も育成されて治療の充実が図られ、緩和ケア体制も強化されてきました。しかし、がん医療や支援の格差の解消はまだ進んでおらず、今後の5年間で、格差の解消、治療・緩和ケアのさらなる充実が求められています。

  最後に、「がん末期になっても光り輝く時間がある」と、厚生労働委員会で切々とがん患者の心境を吐露した山本の言葉を紹介し、山本の生き方をお伝えしました。

  第2部で、パネルディスカッション「医療人材養成はどのようにがんの医療を良くするのか? ~がんを防ぎ、見つけ、治すための討論会(キャンサーボード)を通じて~」が行われました。ご登壇された医療者の皆さんは次の通りです(敬称略)。

祖父江友孝(大阪大学大学院医学系研究科環境医学教授)、森井英一(大阪大学大学院医学系研究科病理学教授)、内布敦子(兵庫県立大学)、水木満佐央(大阪大学)、腫瘍内科医:吉田直久(京都府立医科大学)、放射線治療医:長谷川正俊(奈良県立医科大学)、緩和医療医:恒藤暁(大阪大学)、がん看護専門看護師:田墨惠子(大阪大学)、医学物理士:大谷侑輝(大阪大学)、細胞検査士:南雲サチ子(大阪大学)、がん専門薬剤師:上島悦子(大阪大学)、外科医:松浦成昭(大阪大学)

  これからは、患者さんを中心にしたチーム医療が充実され、手術療法、抗がん剤療法、放射線療法が組み合わされた集学的治療が主流になっていくようです。それに平行して緩和ケアが提供され、在宅医慮・在宅ケアの充実も図られていきます。器にすぎなかった基本法に、少しずつ魂が込められ、命がけで訴えた先人たちの思いに近づいていっているような気がしますが、地域連携や希少がん対策など、残されている問題も山積しています。