第9回 がん患者大集会報告
辻恵美子 がん患者サポート団体「ぎんなん」代表)
2013年11月24日(日)、神戸の臨床研究情報センターにおいて、がん患者団体支援機構主催により、第9回がん患者大集会が開催された。
第1回は2005年NHKの協力の下に大阪で開催され、当時片隅に追いやられていたがん患者と医療体制に、風穴を開けたといってもいいくらい、社会的にも大きな反響を呼んだ大会として、未だに記憶に新しい。以後、運営メンバーは何回か交代し、2006年、当時参議院議員だった故山本孝史議員の尽力で成立した、『がん対策基本法』の後押しを受けて、がん患者の為に、その信念を絶やすことなく活動を続け、今年で9回目を迎えるに至った。
今回のテーマは「がん患者が望む最期の迎え方」 ~在宅・ホスピス・病院・その他~。
基調講演は在宅医として患者の信頼厚い、長尾クリニック院長の長尾和宏先生。他に次の3名も講演された。
(1)田村美生夫氏(患者代表・ひょうご患者連絡会事務局長)
(2)伊藤由美子氏(兵庫県立がんセンター看護師長)
(3)椎葉茂樹氏(厚生労働省健康局、がん対策・健康増進課課長)
がん医療はこの10年で格段の進歩を遂げた。がん=死ではなく、がんは早期発見、早期治療で治るようになった。転移、再発をしても治療を続けながらがんと共に生きられる時代になったといえる。そうは言っても、ただ生きられればいいかというと、そう簡単なものではない。治療を続けながらがんと共に生きるということは強い精神力を必要とする。さらには生きているだけに生活の質の維持が問題になってくる。治療の進歩と共に、がん医療には別の側面が見えるようになってきた。
今年から国のがん対策推進計画が2期目に入った。第1期の5年計画が終了し、新たな5年計画がスタートしている。計画がめざす全体目標は大きく分けて3つある。
(1)がんによる死亡の減少、
(2)すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上
(3)がんになっても安心して暮らせる社会の構築
それを受けて大集会の今回のテーマは、
【1】すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上と、【2】がんになっても安心して暮らせる社会の構築を軸に設定された。
がん診療拠点病院は日本全国に300か所以上あるが、緩和病棟を抱える病院はまだまだ少ない。拠点病院でがんの治療を受けても治療が出来なくなった時、患者は地域連携の制度を利用して外部の連携病院に移らねばならない。あるいは家に帰り、在宅医に訪問看護してもらうかの2者択一を迫られる。がんになった時、患者はどこで治療を受けるかを考える。しかし治療がうまくいかなくなった時、どうするかを考える患者や家族は意外と少ないのが現状である。
また、痛みの治療をどうするか。患者・家族の心のケアをどうするか。経済的な問題。トータルペイン。この分野での国の医療体制はようやくはじまったばかり。
今回の講演を通じて、私たちはがんと言われた時から自分の将来をしっかり見据えて、最期をどう迎えるか、即ち「How to live/どう生ききるか」を考えていかなくてはいけない。さらには、がんになっても安心して暮らせる社会の構築の為に私達も出来るだけの支援をしていくべきである、と強く実感できた大会であった。
大会アピール
要望書 厚生労働省及び各都道府県へ
- がん患者が希望する最期の場所を選択できるように地域包括ケアシステムの積極的推進を希望します。
- 全国の医療・介護の均てん化を目指して、各県のがん診療連携拠点病院に緩和ケア支援センターの設置を希望します。
- 各都道府県で医師会と共同し、在宅診療と地域包括ケアシステムに関わる医療機関、事業所を示した手引書を作成し、その配布と啓発活動を希望します。
要望書 日本医師会へ
- 医師会主導の地域包括ケアシステムのネットワークづくりと早期推進を希望します。
- 地域連携システム、チーム医療体制、在宅主治医育成のための講演会、講習会の開催を希望します。
- 各都道府県と共同し、在宅診療と地域包括ケアシステムに関わる医療機関、事業所を示した手引書を作成し、その配布と啓発活動を希望します。
がん患者とその家族へ
- 納得がいく最期を迎えるために、がん患者も家族も元気な時からお互いに話し合い、勉強をしておきましょう。
- 最期をどのように迎えたいか自分の希望をはっきりさせ、エンディングノートに記録しておきましょう。
- 相互援助が出来るように、地域ネットワーク、友人ネットワーク、仲間ネットワークを作りましょう。
チラシPDF (大集会全容は Ustream で pcから見ることができます。)