がんを公表した民主党参院議員 山本孝史さん〔朝日新聞「ひと」〕
朝日新聞「ひと」 2006年6月9日掲載
会期末が迫る国会で、がん対策を進める法案が成立に向けて動き出した。与野党対決のあおりで埋もれていた法案だが、「山本議員の熱意にこたえる」が合言葉になった。
医療制度改革関連法案の趣旨説明があった参院本会議。小泉首相に対する質問の冒頭で、自らががん患者であることを公表した。
昨年末に胸部のがんが判明、月1回の抗がん剤治療を受ける。政治家が病気を告白するのはタブーだが、「がん患者自身が当事者としてがん対策の充実を訴えてきた。国会議員の私が当事者として引き継ぐのは当然」と決断。本会議で、がん対策基本法の早期成立を呼びかけると、与党席からも拍手が起こった。
93年の衆院選で初当選して以来、社会保障政策ひと筋。01年に参院議員に転じたが、医療や年金問題などを追及する姿勢は、与党や官僚からも一目を置かれる存在だ。
兄を交通事故で失い、政治家になる前は交通遺児を支える活動に身を投じてきた。「いのちを守ることが政治家の仕事」として立法化に取り組んだ自殺対策基本法も、今国会中に成立する。がんと闘いながら国会で質問を続けた元民主党参院議員の故今井澄さんの姿に自らを重ね、この6日にも質問に立った。
「社会保障の将来像を考える上で、今、すごく仕事ができる場面に来ている。できるだけ長く仕事がしたいなあ」
文 矢部丈彦