一日一生、一日一善、一日一仕事〔朝日新聞「窓」論説委員室から〕

朝日新聞「窓」論説委員室から 2006年7月26日

朝日新聞「窓」論説委員室から 2006年7月26日掲載

  「朝、目覚めるとき、また、一日分の命を与えてもらったと思うようになった」

  民主党参院議員の山本孝史さん(57)は、災害や病気で親を亡くした子どもたちを支援する「あしなが育英会」の機関紙にコラムの連載を始めた。この育英会は山本さんの活動母体である。

  山本さんは昨年末、胸部にがんが見つかった。5月の参院本会議で医療制度改革法案の質問に立ち、自らがん患者であることを明らかにして反響を呼んだ。

  さきの国会ではがん対策基本法や自殺対策基本法の成立に尽力した。議員立法は簡単ではないが、山本さんの熱意が各党を動かした。

  がんと宣告されて感じたこと、分かったことを遺言のつもりで子どもたちに伝えておこう。山本さんが寄稿を引き受けたのはそんな思いからだ。

  七夕に生まれたのにちなんで「銀の河」と題したコラムの初回の見出しは「一日一生、一日一善、一日一仕事」。

  「どんな小さなことでもいいから、ひとつでいいから、良かったと思えることをしたい」とつづられている。

  国会は終わったが、週1回、抗がん剤の投与があるため、この夏も東京にとどまる。がん対策基本法の成立を受け、政府がどう取り組むのか、患者団体とも連絡を取り合いながら見守っている。

  コラムはとりあえず10回を予定しているが、がん治療は格段に進歩した。いつまでも続けてもらいたい。

〈梶本章〉