永田町の風「命を守るのが政治家の役割」〔大阪日日新聞〕
大阪日日新聞 2006年10月8日掲載
安倍新総理は九月二十九日、衆参両院の本会議で就任後初の所信表明演説を行った。「カントリー・アイデンティティー」「ライブ・トーク官邸」とカタカナ連発。「美しい日本語ができないのに、外国の言葉をやってもダメ」という伊吹文科相の発言を思い出して苦笑い。自分の思いを、具体的な政策と手順を、国民の心に届く言葉で語ることが不可欠ではないか。誰にとってどのように「美しい国」なのか、まったく分からない。
内閣人事と国民生活
政治家は自らが成したい政策を掲げて政界を目指す。しかし、当選後は、それまで以上に過去の経緯を学び、未来に思いをはせ、かつ、老若男女、都市と地方、国内外の関係、財源等に目配りをしながら、現在の政策のあるべき姿を考えて行動しなければならなくなる。一般の議員ならまだしも、こと総理となると、自分の得意分野だけに力を注ぐ、あるいは自分の信念だけで力ずくで行動するわけにはいかない。国民はすべての政策課題に向き合い、対応できる内閣を願っている。
安倍総理は今回、首相補佐官の下に拉致問題対策本部と教育再生会議を設置し、官邸主導でこの二つの課題に取り組もうとしている。一方で「沖縄・北方対策、科学技術政策、イノベーション、少子化・男女共同参画、食品安全」に加えて「青少年健全育成、食育推進、障害者施策、犯罪被害者等施策、個人情報保護、市民活動促進、消費者政策、高齢者施策、交通安全等の施策の推進」を初入閣の高市早苗大臣が一人で担当することになった。
拉致問題の重要性を否定するものではない。しかし、これほど国民生活に密着した多様な政策課題を一人の大臣に任せるのは、安倍総理が内政を軽視していると思わざるを得ない。格差の縮小や安全な社会の実現はすぐに達成できないので、参院選勝利のために外交政策でポイントを稼ぐことが最優先。そのためには内政は二の次でも構わないというのが本音だ。
再び厚生労働委ヘ
今度の臨時国会から再び厚生労働委員会に所属することになった。五月二十二日の参院本会議で、自らもがん患者だと公表して以降、医療、年金、福祉、格差社会の拡大など、社会保障に関する切実な声が今まで以上に届く。先の国会では「がん対策基本法」と「自殺対策基本法」を与野党に働きかけ成立させることができたが、一方で病気になって初めて見えた政策の不備もある。
これからも「いのちを守ることが政治家の役割」を政治信条に、安全で安心して暮らせる社会の実現に向け全力で取り組みたい。それがわたしに与えられた「天命」だと受け止めている。(参議院議員)