文枝さん、さようなら
文枝さんと初めてお会いしたのは2003年7月の熟塾のイベント「文枝師匠・我が落語人生を語る」に参加したときでした。
たった60名ほどの小さな集まりなのに、「落語ではなく話をしてくれと言われ、そういうことには慣れていないのであがっている。夕べ遅くまでかかって原稿を書いた」と、とことん真面目な師匠でした。お話の後、参加者と一緒に高津神社まで歩いてくださったり、2次会にも付きあってくださり、本当に気さくな親しみやすいお方でした。
「師匠は、悠然と翼を広げている親鳥。 その翼に抱かれるようにして、三枝さんや文珍さんなど多くの個性的な弟子が育った」と熟塾代表の原田彰子さん。
昨年9月に聴いた師匠の創作落語『熊野詣』が、わたしにとって文枝さんの最後の落語でした。熊野の世界遺産登録を記念したもので、ご自分でヘリコプターに乗って取材、研究もされたと知り、 その気力、エネルギーに感嘆したものでした。
新聞では「はんなり」ということばを使っていますが、もう一度、師匠のあのやわらかい口調の落語が聞きたいです。
つれあいが、大勢のファンとともに、大阪市阿倍野区の「やすらぎ天空館」で執り行われたお別れ会に参列しました。ご冥福をお祈りするばかりです。