難波利三氏「大阪大空襲を語る ~大阪希望館に託した思い」
小泉首相の靖国参拝問題が中国や韓国との外交問題に発展していますが、「戦後60年を考える」市民グループの催し「難波利三氏「大阪大空襲を語る」を覗いてみました。約60名が参加。大阪から文化や情報を発信する文化グループ「熟塾」の主催。
ピース大阪所蔵の大阪大空襲についてのビデオ「焼きつくされた大阪の街」を観たあと、直木賞作家・難波利三氏の講演があり、続いて、あんがいおまる一座のミュージカル「大阪希望館」の紹介がありました。8年前から上演されている「大阪希望館」は今年が最後の公演となるそうです。(7月1日、2日 大阪市港区・石炭倉庫 7月10日 大阪難波・ワッハホールにて)
難波氏は、終戦直前の大阪大空襲で、家族や家を失った人たちを一時収容した大阪一時保護所を舞台とした小説「大阪希望館」を昭和52年に発表しました。当時はあまり注目されなかったのですが、「大阪希望館」というタイトルに惹かれてミュージカル化を試みたあんがいおまるこ女史によって、この本は蘇ったといいます。氏にとっては、直木賞を受賞した「てんのじ村」よりも思入れの強い作品ということでした。
島根県で生まれた難波氏は、終戦を迎えた年は小学3年生。当時の思い出や体験を織り交ぜながら、「大阪希望館」を執筆するに至った経緯やエピソードを披露しました。そして、現在の飽食時代にあって、一人ひとりが「食べ物がなく死んでいった子どもたちがいたことへ思いを馳せ、「大阪希望館」を通して、平和への思いを深めていただきたい」と参加者に訴えました。
「あの格好が、お決まりのスタイルや。見てみィ、皆、空罐と箸を持っているやろ。あれを、連中は、ザイサン(財産)と呼んどるんやで」
北村は柱のかげにたむろしている浮浪児達を指差した。彼の言葉どおり、いずれも罐詰の空罐を腰にぶら下げ、刀の要領で箸をさしていた。」 「大阪希望館」より