vol.20 2005年1月〜2月
1月10日号
2005年がスタートしました。今年も「蝸牛のつぶやき」を、どうぞよろしくお願いします。
新年会の合間を縫って、文楽劇場へ。豊竹英太夫(なはぶさだゆう)のお話もお聞きしました。
「ととさんの名は十郎兵衛、かかさんはお弓と申します」と、英太夫の指導で、「大河の向こう岸に向かって」声を出して、“お稽古”の真似事も。
「義太夫は、声をつくるのに20年はかかる。70、80歳になって、ようやく本物です」。
芸の道は深いと、驚きました。
被災地支援も外交手段に
スマトラ沖地震とインド洋大津波の救援活動を巡って、大国の政治的思惑が交錯しました。
米国は、パウエル国務長官が4日にはタイに入り、被災地を視察。「米国中心の有志連合による支援活動体制を作る」との企ては断念しましたが、空母を含む1万3千人の軍隊を派遣し、救援物資の搬送などを行なっています。
世界的な救援体制が充実されることを望むとともに、災害救援活動も外交手段となることや、「私が中心」のアメリカ体質がまたまた露呈したことなど、政治の世界の奥深さに考えさせられました。
日本政府の支援は、ゆっくりとしたもので、もどかしさすら感じました。もし、その背景に、米国中心の支援体制が整備されるのを待っていたとしたら、重大です。
一方、支援金については「5億ドルを出す」と、小泉総理が早々と表明。その後、タイは「無償資金援助は必要ない」との返事をよこし、その資金はインドネシアなどに回されることになり、チグハグな印象が残りました。
支援金といっても、小泉総理のポケットマネーではなく、国民の税金を使うのです。急を要する拠出であっても、援助内容を詰めておくべきでした。被災国の意向を把握していない外交当局もお粗末でした。
アジア外交を一層強化する年にしよう
昨年の「韓流ブーム」に続いて、今年も、日本にとってはアジアに目を向ける年です。
日露講和条約(ポーツマス条約)締結100年、日韓保護条約100周年、そして、敗戦から60年。日韓国交正常化40周年、ベトナム戦争終結から30年。さらに言えば、「村山談話」から10年と、それぞれに節目の年を迎えます。
5月の憲法記念日にあわせて、衆参の憲法調査会が5年越しの議論の最終報告も行ないます。新年会でお会いした中山太郎・衆院憲法調査会会長は「これから最終報告書の内容を詰める」と話しましたが、すでに素案はあるのではないでしょうか。
世界平和を創造し、基本的人権を確立する。戦後60年の間に成し遂げられなかった、この二つの課題を達成できるような取り組みが必要です。結論を急ぐのではなく、じっくりと議論を重ねるべきです。
今週の「なんでやねん?!」
*「大丈夫 透かして見てる お年玉」。タクシーの運転手も神主も、子どもまでもが、1万円札を手にするたびに透かして見る。なんとも古い1万円札は使いにくい。世の中には、30兆円以上の旧1万円札が眠っているとか。隠匿資金の持ち主さん、どうします?
1月16日号
インド洋津波の被害に遭ったという日本人が、自身のメルマガで「NHKの国際放送は、危険性を知らせるニュースを流さなかった」と憤っていた。
気象庁などの日本の地震観測網は、インド洋大津波の危険性は予知できなかったのか。また、NHKの国際放送などによって危険性が伝達され、被害を少なくすることはできなかったのか。
スマトラ沖地震は、12月26日(以下、日本時間で表示)、午前9時59分に発生した。気象庁によれば、午前10時7分、同庁の精密地震観測所(長野市)で観測。午前10時16分には、太平洋津波警報センター(ハワイに設置され、米国大気海洋庁が運営)から、「震源の位置はスマトラ島西方沖、マグニチュードは8.0、太平洋での津波の恐れはない」との情報が気象庁に伝えられた。この情報は、米国地質調査所が整備・運用する全地球規模の地震観測網のデータに基づいており、太平洋津波警報組織構成する日本を含む太平洋沿岸26カ国に対して伝えられた。
気象庁は「過去の地震及び津波の発生事例に基づくデータの蓄積や、詳細な津波シミュレーションのデータベースの構築がないインド洋については、信頼に足る津波の予測を行なうことはできません」と説明する。
気象庁の言うとおり、「信頼に足る津波の予測」は困難であったとしても、「津波発生の危険性」について、まったく認識できなかったのだろうか。
NHKによれば、地震に関するニュースは、国内、国外ともに、当日の「正午のニュース」で初めて報道された。それまでには、「ニュース速報」は流されていない。
国際放送では、毎正時の衛星第1の「BSニュース」が同時に放送されており、正午のニュース以降、地震関連ニュースを報道したとNHKは回答した。その放送を私は見ていないが、報道内容は、「地震発生と、日本での津波の被害はない」程度ではなかったのか。被災地周辺国にいた邦人を念頭に置いた報道ではなかったと思われる。
プーケットに津波が到達したのは、地震発生から1時間後の正午ごろ。インド洋上のモルジブを津波が襲うのは、発生から2時間半後の、午後1時30分ごろだった。
NHKは、午後2時14分、「ニュース速報」を流し、タイやスリランカで津波による被害が発生していることを伝えた。被害が発生したことを伝えることはもちろん大切だが、津波発生の可能性が高いことを伝えることの方が、はるかに重要であることは言うまでもない。
NHKについては、04年3月、衆参両院の総務委員会でNHK予算案が審議された際、参議院総務委員会では次のような附帯決議が付されたことを思い起こしてほしい。「7.流動化する国際情勢にかんがみ、海外在留日本人への情報提供を充実させるため、映像を含む国際放送をさらに拡充すること。8.協会は、非常災害時等の緊急報道体制の強化を図り、国民の安全に資する情報の的確で迅速な提供に努めること」。
NHKは国際放送を通じて、在外邦人や海外旅行者に対しても、的確で迅速な情報の提供をするよう国会から求められているのである。
今週の「感動!」
* 新年会の合間を縫って、国立文楽劇場へ(国会が始まると、劇場へ足を運ぶ時間は残念ながらありませんので)。「伊賀越道中双六 沼津の段」。吉田玉男、吉田蓑助の遣う人形の細かな動き、父子の情に溢れる物語、80歳の竹本住大夫が80分を一人で語る熱演。辺りかまわず涙。すごいものを観ました。
1月23日(日)号
通常国会が始まりました。小泉総理の「施政方針演説」、町村外相の「外交演説」、谷垣財務相の「財政演説」、竹中経済財政政策担当大臣の「経済演説」と続きましたが、与党席からの拍手は、各演説の最初と最後だけ。演説途中で、賛意を表す拍手は一度も起きませんでした。
総理は「郵政改革」に時間を費やし、竹中大臣の演説(内閣府の官僚が書いた?)が、総理の演説のような内容だったことが、極めて印象的でした。
スマトラ沖大地震・大津波被災者救援活動
民主党本部で開かれた両院議員総会でのことです。
午後の衆参本会議で「スマトラ沖大地震・大津波被害に際し国際的支援活動において我が国が果たすべき役割に関する決議」を行なうことが知らされ、案文が配布されました。また、議員歳費から1万円を天引きして支援金に充てることも報告されました。
アジアの一員として、我が国が率先して被災者の救援、復興支援を行なうべきことに異論はありません。
しかし、「我が国が果たすべき役割」に関する国会決議を行なうことで、小泉総理の一存で、まるでセリのように5億ドルまで一気に引き上げられた拠出金が、何らの計画性もないままにさらに増額されることや、自衛隊が事前の計画の発表もなく増強される。そんな「単独行動」の根拠にされるであろうことに、いささか違和感を持ちました。
民主党としても、「義捐金を集めれば、それで良し」ではなく、被災国へのODAのあり方、NGOと連携しての持続的な支援など、政策的にも、外交的にも、また、民主党の政治姿勢からも、長期的視点に立って取り組むべき課題です。
そんな想いから発言したら、「山本さんも、しっかり募金活動をして、お金を集めてください」と混ぜ返されてしまいました。そして、決議が行なわれた本会議場。「外国に出すお金があれば、国内で使え」との声が聞こえました。
今週の「なんでやねん?!」
* 「手術台 患者が医師の脈を取り」。医療事故で大きな批判を受けた大学病院が、事故減少のために、手術中の執刀医の脈を計り、危険を回避するシステムを構築したとか。手術をビデオで記録する。どの程度に拡がっているのでしょうか。
2月1日(火)号
先週月曜日の1月24日、通常国会が始まりました。
岡田代表の再質問に、小泉総理は「明確に答弁している」と、実質的には「答弁拒否」。怒りの民主党議員が本会議場から退席するという大荒れの幕開けとなりました。
岡田代表の質問内容は、原稿全文が前日までに総理側に渡されており(国会での取り決めです)、官僚が答弁を書き、それを総理が読むのだから、いわゆる「答弁漏れ」はあり得ません。
しかしながら、本会議での質疑であっても、また、同じ内容を再答弁することになっても、やはり答弁し、国民の理解をより深めるよう努めるのが総理の役目です。もっとも9問は多すぎるとは思いますが。
25日午後の本会議場。演壇に立った野田佳彦代議士が、小泉総理が用いた浜口雄幸の逸話を巡って、「浜口雄幸は、暴漢に襲われた後も、命がけで国会答弁した。逃げて、ぼかして、隠して開き直る、あなたとは違う」と、小泉総理をたしなめました。
私は国会内テレビで見ていたのですが、原稿に眼を落とすことなく、すごい迫力。演説のうまさでは党内トップを争う野田さん、なかなかです!
官僚作成の原稿を棒読みする小泉さんとの資質の差は、歴然。民主党の若手は、ホント凄いですよ。そして小沢一郎副代表が主宰する「政治塾」出身者が続々と衆院選に立候補します。
来年秋の小泉総理の任期満了から、2007年の総決戦へ(春の統一地方選挙、夏の参議院選挙、秋には衆議院が任期満了)。各政党の派閥活動も活発化して、春を待たずに、政局は蠢いています。
今週の「なんでやねん?!」
* エビ・ジョンイルこと海老沢NHK会長辞任の翌日に、顧問に就任。「院政宣言だ!」と思ったら、翌日には辞任。NHKには茨城出身者が多い、それは橋本登美三郎郵政大臣以来の派閥とか。「政治家に、事前に番組内容を説明する」と平然と言う体質、そして海老沢院政への企て。これで受信料を払ってもらえるのだろうか。
2月6日(日)号
2月1日、参議院予算委員会で、小泉総理ら全大臣出席のもとに、平成16年度補正予算案等の「締めくくり質疑」が行なわれ、民主党を代表して質問に立ちました。要旨は、国会での質問に掲載しました。全文は、参議院ホームページの「会議録情報」でご覧いただけます。
郵政民営化と公的年金制度の一元化
郵政民営化内閣というが、その具体的な設計図は、「これから与党と協議」と小泉さん。
郵貯や簡保で集まった資金を、民間企業に回すというのだが、誰が国債を買うことになるのか? それに、郵政公社は貸付業務などしたことがないから、金融機関としては素人。どうも郵政民営化の意義と、その全容が見えてきません。
「郵政職員は、なぜ公務員でなければならないのか」と、小泉総理は絶叫。
では、「民営化後の社員は、国家公務員共済年金制度から、民間人と同じように厚生年金制度に移るのか?」と、2月1日の参院予算委で訊ねました。
小泉首相は「未だ決めていない」と言うだけ。それが翌日の衆院予算委では、与党議員からの同じ質問に、竹中郵政相は「徐々に厚生年金に移る」と表明。小泉首相は野党議員にはまともに返答しない方針のようです。
国立大学の教職員や特殊法人の職員は、独立行政法人化に伴って、その身分は「非公務員」となりましたが、年金は、国家公務員共済制度に引き続き加入しています。郵政職員も同様の扱いになるようです。
郵政民営化を公的年金制度の一元化(厚生年金と共済年金の一体化)実現への一歩とするのかと期待したのですが、小泉総理には、その気はまったくありません。結局、小泉総理の「年金制度の一元化」は、口だけのことでしかないのです。
被災者自立支援をめぐって
神戸みどり病院の額田医師が来所。額田さんは、震災で街が壊滅した神戸市長田区に診療所を開設し、被災地から遠く離れた復興住宅での「孤独死」の実態も訴えておられます。大阪市を直下型の地震が襲うと、大阪市生野区などでは、神戸市長田区と同じ光景が展開されるだろうと、両地域の酷似性をもとに解説。都市防災や減災への住民の意識向上が急がれます。
と同時に、阿倍野地区の「再開発」に長田区での「復興」の姿と重ね合わせると、阿倍野再開発は明らかに失敗だったと納得しました。住民を立ち退かせるのではなく、住民が元の場所で再起するために戻ってきて初めて、「真の復興や再開発」があるのです。
被災者の住宅再建に税金を使うことは、納税者が行政に委託した住民サービスのひとつだと思います。兵庫県の住宅再建共済制度創設の取り組みを受けて、住宅所有者全員が加入する共済制度の全国展開を検討することは意義あることです。2日の参院予算委で村田防災担当大臣に、住宅再建共済制度の全国展開に伴う問題点の整理をお願いしました。
今週の「なんでやねん?!」
* 尾辻厚労大臣が「痴呆症は、認知症と呼ぶようになりまして」と答弁すると、後ろの席にいた小泉総理は、隣席の谷垣財務相に、「そうなの?」と小声で訊ねる。総理は、余りに忙しすぎて、新聞も読む暇がないようだ。
* 衆議院の職員が収賄容疑で逮捕された。衆議院職員の雇用主は衆議院、すなわち国会。だから院職員の非行は、国会の代表者である衆参の議長や、院の運営を担当する「議院運営委員会」の委員長が謝罪し、事件の背景を調査し、再発を防止しなければならない。だが、その動きは見られない。直ぐにも取り組むべきだと、参議院民主党幹部に伝えた。
* 私事で恐縮だが、2月2日は、交通事故で夭折した兄、亘彦(のぶひこ)の命日だった。あの日から、50年の年月が流れた。だが、昨日のことのように思える。
2月13日(日)号
衆議院時代に皆さんから募集した「なんでやねん」の、怒り・驚き・疑問などを読み返していると、解決に向かっている課題もあるが、多くは未解決のままで、非力を恥じつつ、思わず「なんでやねん!?」。今週も、新たな「なんでやねん」に出会いました。
学校の南側に高層ビル! その時、教委は?
東京都心の小学校の南側に、細身の高層マンションが建設され、細い影が、まるで日時計のように校舎や校庭に覆いかぶさる。
PTAの役員が、区の教育委員会に共闘を申し入れたが、「建築基準法をクリアしているから」と、ダンマリを決め込んだ。その姿勢に怒った保護者が、国会事務所に来られた。文部科学省や国土交通省の専門官を交えて、善後策を協議。
ビルの背を低くすると、同じ床面積を確保するには幅広のビルとなり、ビル北側での日照を確保できなくなる。都市計画で、地域ごとに容積や高さも制限されてはいるが、のっぽビルの規制には効き目は薄い。
「学校は、子どもを育てる畑。そこに日が当たらなくて良いのか」「教育委員会は、機能していないのではないか」。抑えた怒りが拡がる。
都心における高層ビルの建設ラッシュを考えると、これからも、教育施設の周辺で同様の事案が出てくるだろう。教育環境を守るために、どんな対応策があるのか。協議を続けることになった。
集まらへん それにはちゃんと 訳がある
30万人以上が犠牲となったインド洋大津波被災地への募金活動が低調だという。そこで、NGOへの寄付金増を図るため、災害救援活動への寄付金優遇税制を求めて、関連法案を提出する動きもある。
長年、交通遺児育英募金に関わってきた経験からすると、募金額を伸ばすには、寄付金の送り先や使途が明確であること、寄付をした成果が判ることが重要な要素だが、今回の大災害の被害状況や、救援活動の内容については、そうした広報が十分でない。日本政府からの5億ドルの支援金も、どのように使われるのか。説明不足が募金低調の決定的原因だ。
大津波に襲われたタイ・プーケット島を、1月7日に訪問した自民党・国井議員の話。
「水辺の葦が折り重なってできた水溜りが腐敗したような状態。そこに、魚や動物などの死骸が押し寄せられていて、異臭がすごい。火葬場が足りず、タイヤを並べた上で火葬していて、あちらこちらから黒い煙が立ち上がっている」
それから、1か月以上が経過しているが、今後、復興支援は、どのようになされるのか。
現地に派遣された自衛隊も、今後、どのような活動を続けるのか、混乱しているそうだ。
日本政府や国民は、どのような係わり方ができるのか。政府やNGOは、援助の方針・内容を明確にし、国民の支援を呼びかけるべきだ。呼びかけて欲しい。
夜中でも 胸チラだけは 見せません
審判の胸に「朝日新聞」の文字があるからと、NHKは、12日の昼間に生放送の予定だったラグビー日本選手権の模様を、13日深夜の午前2時からの録画での放送に、突然切替えたと、朝日新聞が報道。
試合の共催者であったNHKに、事前に、協会の年間スポンサーである朝日新聞の名前が、審判の胸に書かれているとの連絡がなかったからというのが理由だそうだ。他の新聞社名だったら構わなかったのかと聞くほど野暮ではないが、主催や共催に要する費用も、元はといえば受信料。あまり偉そうに言える立場でもないと思いますよ、NHKさん。
この調子だと、夏の高校野球は、NHKでは中継放送されないことになるのかな。
(ここまでは、12日の朝に書いた。その後、生中継を望むファンからの電話が殺到し、当初の予定通りに生中継されることになった。恥の上塗り。白熱した試合の場面も、胸チラだからとカットする。NHKの感覚は、ずれっ放しだ。)
生煮えの 食育法は ごめんです
牛丼150万食完売。堺では客の車が店に突っ込んでけが人もでる騒ぎ。新聞に載った48歳の会社員のコメント。「学生時代から食べている懐かしの味。普段はマクドナルドの方が多い子供も連れて来ました」。食育基本法の制定に熱心な自民・公明両党の皆さんは、この騒動やコメントをどのように受け止めているのか? 食育基本法も、ファーストフードではなく、ゆっくり噛みしめて議論すべきだ。そして「日本人はこれから、何を食べていくのか?」との問いかけに、答えを出して欲しい。
2月20日(日)号
2月16日、少子高齢社会に関する調査会が開かれ、参考人からの意見を聴取しました。印象に残った発言を紹介します。
松尾宣武・国立生育医療センター名誉総長の話から
「小児科医は不足していない。いっぱいいるが、散らばっている。集中させることが重要」
「1500グラム以下の未熟児が、以前は全出産児の0.3%程度だったが、いまは0.7%を超えている。新生児の集中治療室が満杯で、医療施設が足りない」
「生殖補助医療の無秩序の拡大は、通常の産科医療や新生児医療を窮地に陥れる可能性が高い。デンマークは生殖医療を保険適用にしたら、3倍に増えた。金が儲かる産業で、アメリカは悩んでいる」
「出産費用の微妙な設定次第で、患者数が大きく変わるという経験をした。保険適用範囲を決めるのは難しいだろうが、出産も健康保険が使えるようにして欲しい。”快適なお産”への要求は、際限ないと思う。」
山田昌弘・東京学芸大学教授の話から
「結婚産業研究会(経産省が設置)に参加しているが、結婚斡旋業者は、男性が集まらないこと、女性の高望みを諦めさせること、男性を教育・訓練することに悩んでいる」。
「親の年金がなくなると、パラサイト・シングルは暮らせなくなることを心配する。
今週の「なんでやねん?!」
国会審議内容の国会議員への迅速な提供
予算委員会で審議が続いています。予算委員以外の国会議員にとって、その審議内容を知るには、委員会室で傍聴する、院内テレビで見るといった方法のほかに、速記者が記録した議事録を読むという手立てがあります。
以前は、数日経たないと速記録を入手できませんでしたが、IT化が進んで、参議院の場合は、早ければ翌日の午後には速記録(正式に公表される前の原稿で、「未定稿」と呼んでいます)を入手することができます。参議院の場合はと言ったのは、衆参で速記録の扱いが異なるからです。
参議院の担当者は、「前の質問や答弁を読んで、審議を深く掘り下げることが出来ると、非常に好評です。今まで、トラブルはありません」と、ちょっと自慢気です。
ところが、衆議院では「未定稿」は出していません。その理由はと尋ねたところ、「以前、了解を得られなかったことがあるから」との返事。
どうやら、大臣答弁などが政局に絡まりやすい衆議院では、「問題発言などがすぐに公表されてはまずい」と言うのが本音のようです。
2月27日(日)号
自殺予防の国家的取り組みを求めて
2月24日、参議院厚生労働委員会で「自殺予防」について、参考人をお呼びして意見を伺う「参考人質疑」を行ないました。
参議院での予算案審議以前の段階で、参考人といえども委員会が開催されることは、これまであまり例がありません。しかし、予算案が3月末に可決されると、その後は、政府提出法案の審議が優先されるため、自殺や生殖医療などのように、国会として対応を求められている事案であっても、委員会等で議論することは、時間的にも政治的にも困難です。そこで、武見敬三・自民党筆頭理事と協議し、民主党の参議院国対の了承もいただいて、今回、開催にこぎつけました。
自殺は、決して個人的な問題ではありません。社会的な問題です。防ぎうる死です。
自殺に関する研究の第一人者である高橋祥友・防衛医科大学校教授から、現状と予防への取り組み方をお聞きし、中村純・産業医科大学教授からは、職場での実態と取り組み方を、最後に、本橋豊・秋田大学教授から、秋田県での自殺予防での先駆的な取り組みをご紹介いただきました。
自殺予防への国を挙げての取り組みを求めて、国会での議論を深めて行きたいと思います。お二人の参考人が期せずして、フィンランドの自殺問題への国家的取り組みを紹介されました。興味深い内容でした。直接に見聞するため、今年の夏、フィンランドに行ってみたいと思います。
ODAに関する決算審議で質問
2月22日、決算委員会が開催され、日本のODA(政府開発援助)についての質疑が行なわれました。昨夏に、参議院が派遣した初のODA海外視察に参加した私に、決算委の松井孝治理事から、質問に立つようにとの要請がありました。
ODAはさまざまな問題を抱えていますが、改革に向けての一番の課題は、評価制度の確立です。予算は適正に使用されたか、予測されていた効果を生み出しているのか、どのような事案が採用されるべきかなど、いずれも、しっかりとした評価を加えなければ、改善には繋がりません。執行する予算を削っても、評価のための予算は確保すべきです。
次いで、「スマトラ沖地震での緊急無償援助は、まちがいなく被災者のために使われるのかをモニターすべきだ。被災地が紛争地でもあることから、政府と対立する部族等にも行き渡るように」と注文をつけました。
イラクへの支援では、出席された二人の参考人の間で、「自衛隊は軍隊であり、復興支援活動には不向き」という意見と、「自衛隊こそ、国際復興支援活動に積極的に参加すべき」という意見に分かれました。
夜のニュース番組で、ドイツの民間人がインドネシアの被災地で活動している様子が紹介されました。彼らは、ドイツ国内で援助活動の訓練を受け、必要な物資は現地で購入、活動は現地人と一緒に行っていました。これこそ「顔の見える援助」だと思いました。
今週の「なんでやねん?!」
聞きたいがこちらも言わない「ありがとう」
決算委員会でのODA審議でのこと。与党の質問者が「日本の援助は顔が見えない」「現地に、日本の援助でできたことを示す感謝のプレートがない」と糾弾調で質問するのを聞いて、ひとこと。
「タイのバンコクの地下鉄の入り口には、日本からの資金援助でできたことを示す金属板が埋め込まれている。ところが、人身事故があったり、運行に問題があったりして、地下鉄の利用客は低迷している」と、現状を報告。
実は、トンネルを掘ったのは日本だが、車輌や運行システムを納入したのはドイツ。したがって、タイの人の不信は、ドイツに向かうべきなのだが、「プレートで、日本の援助で出来たことを知ったタイの人は、日本の技術に対する不信を高めるのではないか」。
タイと同様に日本も、世界銀行から借金して、東海道新幹線や黒部ダム発電所、東名高速道路などを建設した。すべての返済が終わったのは、90年のこと。どこかの新幹線の駅や高速道路のサービスエリアに、世銀からの援助に対する「感謝の碑文」はあるのだろうか。
20年後の厚労委OB会が楽しみ
年金の与野党間協議を巡って、依然として角を突き合わせたままだが、政府の側には、本気で協議しようなどという気持ちは毛頭ない。経済財政諮問会議に尾辻厚労相が提出した資料には、「年金は給付抑制策が盛り込まれたので、高齢社会への対応はすでに済んでいる」と記されている。
そもそも、「年金は100年安心」と豪語する与党の皆さんは、与野党間で何を協議するつもりなのか。岡田代表は、なんとか年金制度を立て直したいと思って質問しているのに、参院での強行採決に対する一片の反省もないうえに、衆院での古証文を持ち出して、協議をと言い張るだけ。一元化に向けた最低限の枠組み合意がなければ、協議をしても平行線をたどるだけだ。
与党はすでに年金問題は終わったと思っていて(前述の尾辻厚労相が経済財政諮問会議に提出した資料で証明済み)、関心は医療に移っている。年金は、利害団体が絡まないが、医療は、そうはいかない。サラリーマンの医療費自己負担を3割にあげて、「必ず医療制度の抜本改革をする」といったのは、小泉厚生大臣だったが、医療改革はまったく進展していない。それなのに、医療でも「負担増と給付減」では、国民の怒りはおさまるまい。与党が民主党に「協議を」という真の狙いは、医療改革での国民の風圧を避けたいからに間違いない。
このごろ思うのだが、2020年か25年ごろに、厚労委員会のOB会を、ぜひとも開催したい。そして、与党の先生だった人に向かって入れ歯をガタガタさせながら、「しぇんせい~、20年前には、年金は絶対安心やと言うたはりましたなぁ。せやけで、どないだ? この無年金者の多いこと。みんな生活保護ですよ~」と言ってやるのだ。
そんな悪夢が、正夢にならないように頑張るのは当然だけれど。