vol.30 2006年9月〜10月
9月10日(日)号
自民党総裁選のニュースが溢れています。最大派閥は候補擁立すらできず、勝ち馬に乗ることに。国民としては、アベ・シンゾウに乗って良いのかが判りません。「美しい国」という言葉だけでは、意味不明。憲法改正、教育基本法の改正を政策課題のトップに据えているようですが、彼の著作での社会保障の記述は、きわめて粗い内容です。もっと、具体的に語ってほしいと願います。
医師不足解消のため定員増を認めることに
厚労省は、医師不足の深刻な県に限って、医学部の入学定員増を認める方針を示しました。通常国会での「医師は不足していない。増員の必要はない」との答弁を翻して、方針転換です。この際、すべての医学部の定員を元に戻せばと思います。
そもそも医学部入学定員の10%減は、医療費を抑えたい厚労省(医療費は医師数や病床数と正比例しており、医師数の増加は、医業を続けるために不必要な治療行為や投薬が行われ、医療費が増えるとの理屈)、また、医師間の競争激化や経営圧迫を避けたい日本医師会の思惑が一致して、行われてきました。日本の医療経済は、まったくの社会主義経済です。診療報酬や薬価は公定価格です。医師の養成数までもコントロールされているのです。
弁護士は、厳しい司法試験に合格しないと弁護士になれませんし、弁護士会に登録しないと開業できません。医師も、医師国家試験に合格しないと医師にはなれませんが、自由開業制です。患者に大きな被害を与え、社会を騒がせた某産婦人科医のように、生涯、医師を続けることもできます。医学部を卒業して医師免許を得たから、開業医や病院の勤務医にならなければならないこともないでしょう。
ここで発想を180度転換して、もっと医師の養成数を増やしてはどうでしょうか。
医学部における女子学生の割合の増加は、生涯医師として働く人の数の見直しを求めています。医療技術の高度化は、研修研鑽を積まないと、専門医と認められない状況を生み出しています。いい意味での競争を導入して、医師免許の更新性や専門医制度などを検討しても良いのではないでしょうか。
規制緩和や競争による活力アップを目指した小泉政権を継承するという安倍内閣なら、正面から検討する課題にしても良いと思います。
今週の「がんちゃん日誌」から
* 9月6日、民主党のがん議連と、患者会の皆さんとご一緒に、静岡県立がんセンターの視察に行きました。山口健総長のお話は、非常に参考になりました。
- 「人口120万人位にひとつ、がん専門病院が必要」と山口総長(静岡がんセンターは557床、医師186名=欠員20名。常勤は107名。看護婦472名)。120万人は民主党が主張する「健康圏」と同じ考え。この考えで行くと、拠点病院は100箇所で良いことになる。地域の広がりを考慮する必要もあるだろうが、250病院は多すぎるのかもしれない。
- 評判の「よろず相談」コーナーを訪ねる。奥の部屋で電話相談をしている職員を紹介しながら、「ここが、コールセンターです」。全国をカバーするコールセンターは必要ない。各拠点病院で電話相談を受ければ良い。いや、その方が良いことを確認。
- WEB版がんよろず相談は、今年度末までに作るとのこと。膨大な作業のため、スケジュールは遅れ気味。国立がんセンターからリンクするとのことだが、結局、国立がんセンターが行う作業を、静岡がんセンターが請け負っている形になっている。
- 陽子線治療施設では建設費の半額を国費負担しているが、年間400人の患者を受け入れないと採算ラインとならない。国費負担なしに建設すると、年間800人の患者の受け入れが必要。それは、24時間、365日、施設を稼動させることを意味する。国が計画的に設置場所を調整する必要があることを再確認。治療室の障子窓に感激。
- 医療費を投入し、がんの罹患・死亡等による生産性の低下・喪失を少なくすれば、結果として、投入した医療費よりも大きな生産性をもたらすはず。この検証と議論が必要。
- 「医学は科学。医療は物語」と河合隼雄さんが語られたそうだ。奥深い言葉だと思う。
9月24日(日)号
メルマガの発行が隔週になりご心配をおかけしました。元気です。自民党総裁選の中継番組を見ましたが、結果がわかっているので面白みに欠けました。TVドラマ「小泉純一郎総理」は、役者の熱演は見ものでしたが、政界の裏話をドラマに仕立てれば、視聴者は「そうだったんだ」と思い、政治や政治家に対しての特定のイメージが刷り込まれる。とても危険だと思います。小泉政治が、格差を拡大させ、経営者の倫理は薄れ、社会をバラバラにしたことは既定の事実。どのようにして立て直すのか。臨時国会での安倍総理所信演説(9月29日)から論戦が始まります。
がんに関する全国的なコールセンターは税金の二重投資
9月23日の朝日新聞(東京本社版)は、がんに関する情報提供に関連して、「電話相談 地域拠点で受け付けへ」「がん情報 格差が心配」「全国センター 患者ら要望」と見出しを掲げて、「がんになったとき、正しい情報を得られる全国的なコールセンターが欲しい」との主張を展開しました。
がん医療に地域間格差、施設間格差があり、厚労省は「全国どこでも同水準の治療を受けられる体制」をめざして、がん診療地域連携拠点病院の指定を進めています。それらの病院には「がん患者相談支援センター」が開設され、患者や家族からの相談を、対面や電話によって対応することになります。記事は、この相談のレベルに「格差」が生じるので、全国からの相談を一元的に受け付けるコールセンターの設置が必要だとしています。
がん医療は日進月歩で進んでいます。新たな治療法などの情報は、中央で一元的に収集し、患者や家族にも理解できるように加工して提供する必要があります。その目的で、10月1日に国立がんセンターに「がん対策情報センター」が開設されます。
がん対策情報センターには、がん医療情報提供機能の他に、がん診療支援・臨床研究支援・がんサーベイランス・がん研究企画支援が付与されます。厚労省は、がん対策情報センターを米国国立がん研究所(NCI)のような組織にしたいようですが、人員や予算面で比較にもならない状況です。この点を解消しない限り、「正しい情報」を得ること(国が責任をもって提供すること)はできません。
ところで、NCIのホームページでは、冒頭に「重要」として次の注意書きがあります。「私たちは医療に関する特定の質問に答えたり、医療機関等を紹介したり、専門家による相談はできません」
「相談時間は、平日の午前9時から午後4時半までです」
このNCIの相談機能は、NCIのホームページを活用できない人、コンピューターを使えない人などを対象に、NCIのホームページに記載されている内容を電話で説明することにとどまっていて、記事が求めているような「コールセンター」の性格はありません。
個々の患者や家族が情報を入手するには、治療を受けている病院の主治医や相談室が窓口になるのがベストです。厚労省がめざす「患者家族相談支援センター」のモデルは、記事でも紹介された静岡県立がんセンターの「よろず相談」です。平成17年度には、対面相談4千件、電話相談6千件の実績を残しました。
以前のメルマガでも書きましたが、病院の相談窓口で受け付ける患者や家族の悩み、不安、疑問などが、当該病院でのがん医療の水準を向上させる手がかりになっています。この点を重要視すべきです。
地域事情は、中央のコールセンターでは把握できません。「地域のことは地域で。ただし、その情報は常に最新版を中央から届けます」というのが正解ではないでしょうか。
私は全国一本のコールセンター構想に、患者側から提供される貴重な情報が埋もれることになりかねないこと、中央と地方の二重投資になり税金の無駄遣いになること、当初は相談内容に格差があっても、その格差を埋める努力を各拠点病院が行わない限り、がん医療の水準も、情報も「格差」はなくならないなどの理由により、反対です。
なお、民主党の要求項目に含まれていると記事は指摘していますが、「ないより、あった方がよい」という姿勢に、私は同調しません。
交通事故問題を考える国会議員の会
飲酒運転やひき逃げ犯の増加を受けて、交通事故問題を考える国会議員の会の総会が、被害者団体も交えて開かれました(私、初代の事務局長でした)。出席者からは、次のような意見が出されました。
1)運転に影響する飲酒量には個人差があるため、0.15mg以下でも危険な運転になる人がいる。少しでも飲んでいれば飲酒運転に問われるようにすべきだ。
2)ひき逃げの場合、道交法の救護義務違反、通告義務違反にもなるが、現場からの離脱は問われない。現場から逃げることは「故意犯」であり、「ひき逃げ=現場から逃げること」と定義してほしい。
3)事件発生から時間が経過すると立件が困難になるため、事故発生までどのような状況にあったかを調べる「補充捜査」がずさんになる。捜査をしっかりしてほしい。
4)飲酒運転教唆・幇助行為を厳しく問うべきだ。
5)飲んでいればエンジンがかからない装置、ドライブレコーダーの装着義務化を行うべき。
私は、「交通安全対策基本法により、総理を長とする交通安全対策本部が設置されている。安倍内閣のスタート後、できるだけ早く会合を開き、各担当省庁から飲酒運転、ひき逃げ等に対する対策を提出させ、臨時国会内に抜本的な対策を取りまとめるべきだ」と提案。逢沢一郎会長、細川律夫事務局長に、政府に早急な対応を求めるようお願いしました。
今週の「がんちゃん日誌」から
* 9月12日、朝日新聞の告知欄を見て応募した「がんー医と心を考える」のセミナーに参加。講師が「がん患者は医師個人の成績を知りたがっている。患者会として医師の治療成績の公開を求めるべきだ」と言われたので、首を傾げる。がん治療はチーム医療だし、たとえ外科の名医がいても、希望者全員が手術を受けられるわけでもない。患者調査による要望事項を、そのままストレートにぶつけるのではなく、「なぜ、そのような要望になるのか」を分析し、政策として提言するのが、政治家や研究者の役割だと思う。
10月1日(日)号
安倍内閣が発足しました。政治家は、成したい事があって政界を目指すのですから、安倍代議士が、どのようなテーマに力を入れられるかはご本人次第です。しかし総理ともなれば、すべての政策課題に向き合い、対応できる内閣を組織して欲しいものです。「功名が辻」の論功行賞と、「仲良しチーム」で脇を固めた安倍内閣が力を入れるのは、拉致問題と教育基本法の改正。内政面では、格差の縮小とか、安全な社会の実現はすぐには達成できないので、外交に力を入れるのでしょう。来年の参院選前に北朝鮮を訪問することで参院選を勝利し、長期政権をめざす作戦と思います。その一方で、内政面は手薄になるのではないでしょうか。しっかり議論して、安倍総理の「美しい国」を明確にするのが野党の役割です。
こんなところにも内政軽視の姿勢が見える
内閣府には、官房長官のもとに、6人の「内閣府特命担当大臣」がいます。それぞれが内閣府の所管する法律に基づく業務を分担しています。
高市早苗大臣は大臣就任の記者会見で「あれも、これもやるのよ」とぼやいていました。確かに小泉内閣では、沖縄及び北方対策、科学技術政策、食品安全、少子化・男女共同参画は、3特命大臣が担っていましたが、今度は高市大臣が一人で担当します。そのうえ、イノベーションという、安倍内閣の看板政策も担うのですから、他人事ながら、ぼやくのもわかります。
さらに解説すれば、「少子化・男女共同参画」には、青少年問題・障害者・交通安全対策・高齢社会対策・少子化社会対策・犯罪被害者・食育・原発立地地域振興が含まれます。
ちなみに、最後の小泉内閣で「交通安全担当大臣」を務めたのは猪口邦子少子化担当大臣でした(ちょっと影が薄かったですね)。
これで、少子化や青少年問題、交通安全対策などは進展するのでしょうか。内閣補佐官に政治家を登用するのも良いかも知れませんが、こうした内政の重要課題に対応した布陣をして欲しいものです。
今週の「がんちゃん日誌」から
* 私のホームページをご覧になった方や、平岩正樹医師の「がんのWeb相談室」を通じて寄せられた質問への回答を、ホームページに掲載しました。質問は、(1)石綿被害者救済とアリムタの治療費について、(2)最良の治療を受けるための公的な相談窓口について、(3)抗癌剤治療はなぜ「無料」なのか?です。
* また、放射線治療施設の無秩序な整備計画の進展に関して、「“重粒子線大国”をめざすのは正しい選択か?」と題して、意見を私のホームページ「日本のがん医療、ここが問題」に掲載しました。
10月8日(日)号
安倍総理の衆参本会議での代表質問が終わり、衆院の予算委員会での質疑に移りました。「しっかり」を連発するのですが、何を為すのかが語られません。東アジア外交を「未来志向」で語りつつ、戦争について「歴史が決める。政治家は謙虚であるべきだ」と、自分の考えを述べません。戦後生まれの53歳を強調し、「占領下に押し付けられた憲法は変えたい」。そのことだけは明確に伝わってきました。
山崎章郎さん、山本美和さんとお話しして
足掛け3年の取り組みが実り、「自殺対策基本法」が06年通常国会で成立。そして、自殺予防に向けての政府の総合的な対策を支援する「自殺予防総合対策センター」が、都下小平市の国立精神・神経センターに開設され、10月6日の開所式に招待されました。
その前日、「明日は小平だね」と秘書に語りかけた時、「小平? そうだ、桜町ホスピスに行ってみよう。山崎さんのケアタウン小平も行ってみたい」と強く思いました。こんな急な思い付きに、山崎章郎さん(ケアタウン小平クリニック院長)や山本美和さん(聖ヨハネホスピスケア研究所)らが応えてくださいました。ありがとうございました。(「考・動・人山本たかしです」に概略があります)
そして、昨日8日、日本死の臨床研究会から会誌が届きました。私も長年の会員ですが、なかなか大会等には参加できずにいます。
昨年の山口大会での柏木哲夫さんの特別講演「社会運動としてのホスピス」を読みました。『ホスピスは「死の医学化」へのアンチテーゼとして出発した』との言葉に、若いころに、死についての著作を読み、講演会に出かけたことを思い出しました。ミシガン州立大学でも「死の教育」の講座を受講し、もっと研鑽を深めようと思っていたところ、国会議員に転身して、中断したままになっています。
緩和医療、終末期医療が注目を浴びるなか、もう一度、「死は医学的出来事ではなく、社会的出来事である」ことへの理解を広めるための取り組みを行いたいと思います。
「国民医療費が巨額になる。尊厳死を法制化すべきだ」と声高に主張する国会議員がいます。尊厳死の法制化を求める前に、なぜ死の臨床で尊厳が守られないのか。その原因を究明することが先決だと思います。
今週の「なんでやねん?!」
* 福岡市での3児死亡飲酒追突事故のあと、取締りが強化されました。警察官による路上での飲酒・酒気帯び検査、飲酒店や同乗者に対する教唆・幇助罪の適用、保育園児の列にわき見運転で突っ込んだ死傷事故では、補充捜査も行われています。飲酒状態ではエンジンのかからない自動車の開発、道路構造の見直しなども。ようやく動き出した飲酒運転対策。これこそ「しっかり」やってください。私も、この流れをつかみたいと思います。
* 7日夜のETV特集「なぜ医師は立ち去るのか?地域医療“崩壊”の序曲」を見ました。市長や町長は、大きな病院を建てれば、医療は守れると思っています。
しかし、実際に必要なのは、身近なところで診療をしてくれる「かかりつけ医」「総合医」の存在です。「診察室が2つしかないから、医師は2人で十分だ。医師が辞めれば、また補充すれば良い。公立病院の人件費が経営を圧迫するから民間に売却する」。こうした行政担当者の発言からは、どんな地域医療を行っていこうとしているのかの理念がまったく感じられません。予防を重視するという厚労省が、地域での予防医療の担い手である医師の離脱を傍観している。大きな病院への集約を図る。
時代は、施設から地域ではなかったのでしょうか。ハードからソフトへ。行政担当者の意識改革と、住民に熱く語りかける情熱が欲しいものです。
今週の「がんちゃん日誌」から
* 「国会がん患者と家族の会」の世話人会が発足しました。自民・民主・公明・共産・社民の衆参5人ずつ、合計10名で世話人会を構成します。最初の仕事は、11月25日のパネルディスカッション「最善の抗がん剤治療を受けたい!」(東京ウイメンズプラザ。午後1時から4時半)になります。詳細が決まり次第、申し込み方法等をお知らせします。
* 10月1日、国立がんセンターに「がん対策情報センター」が発足。同センターのホームページも稼動し始めました。盛りだくさんの内容ですが、精査し、何が不足しているのか、どこをもっと判り易くするのかを指摘していくのも、がん患者の役割ですね。10月15日の埴岡健一さんの講演「がん情報センターの評価と改善」を楽しみにしています。
* 10月3日の筑紫哲也の「ニュース23」。IT社長の藤田憲一さんが、痩せてはいるが、元気に全国を駆け回っている姿を見せてくれました。緩和医療を受ければと思いましたが、それも彼の選択。あの気力は見習わないといけないと痛感。4日は40歳以下の「若年性乳がん患者」の悩み。これまで気づかなかったことをいっぱい教えてもらいました。
10月15日(日)号
先週から衆院補選も始まり、がん対策関連の活動もあって、あっという間に時間が過ぎていきます。「頑張らない。でもしっかり仕事」なんて、矛盾していますよね。
国会がん患者と家族の会世話人会を開催
10月12日、「国会がん患者と家族の会」の世話人会を開催しました。
かねてからお願いをしていた各党世話人が出席してくださり、設立総会の開催(11月1日)、パネルディスカッション「最善の抗癌剤治療を受けたい!」の共催(11月25日、東京渋谷)の他、12月15日の国会閉会までに、もう一度、総会を開くこと、新年以降も、選挙などの政治日程、議員の集まりの困難さなどがあるが、勉強会を続けることなどが合意されました。また、代表世話人に尾辻秀久元厚労大臣の就任も内定しました。
がん医療の向上をめざして、さらに忙しくなりそうです。
がん対策情報センター運営評議会を傍聴して
10月11日、がん対策情報センター運営評議会の第1回会合が開催され、傍聴しました。
評議会の委員は10名。画像診断、地域医療、MSW、化学療法、自治体、ジャーナリスト、患者団体(2名)が一堂に会して議論をします。
専門家は、自分の守備範囲に関して、がん対策情報センターの機能強化について発言すれば良いのかも知れませんが、患者団体は、すべての機能について触れなければなりません。正直言って、患者側(団体)の力量が問われることになりました。
厚労省での「がん対策」の進展状況をウオッチしつつ(例えば、拠点病院の機能評価・公表、予防・検診の体制作りなど)、専門医の養成、画像診断、抗がん剤治療、病診連携体制の構築、在宅医療の問題など、各般の問題について、他の専門家委員に質問し、患者に有益な状況を生み出していくという役割が、患者団体に求められていると強く感じました。
そしてまた私も、そうした情報の提供に努めなければならないと再認識しました。長生きしなくては!
今週の「なんでやねん?!」
* 政府の経済財政諮問会議は、企業減税をさらに検討するとか。いろいろと理屈はあるのでしょうが、非正規社員の割合を増やし、偽装請負も横行。新日鉄では2日間に3人もの下請け社員が死亡する有様。銀行は相変わらず税金を払わない。さらなる企業減税をするというのであれば、企業が社会的責任を果たしてからではないでしょうか。企業や金持ち優遇の税制は改めるべきです。
今週の「がんちゃん日誌」から
* 2夜連続でのNHK「医者が足りない」を見ました。病院に勤務する女性外科医が紹介されていましたが、宿直明けで、休むまもなく外来診療にあたる。そして、抗がん剤治療を受ける患者さんの投薬量を計算する。これでは、彼女の力量とは関係なく、医療ミスが起きないのが不思議だし、がん医療の水準向上は望めないのではないかと強く感じました。日本医師会長は「女医さんにずっと働いていただく環境が必要」との前提ながら、「医師が足りない」ことを認めていました。厚労省は「団塊の世代」がいなくなった後、医師が過剰になることを恐れているのでしょうが、そんな将来のことより、いまの医療崩壊を食い止める方が先決ではないでしょうか。
10月22日(日)号
衆議院補欠選挙では民主党候補をご支援いただきありがとうございました。惜敗となりましたが、ご支援を糧に、さらに頑張ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
自殺対策基本法、10月28日の施行の方向へ
厚労省の人口動態統計月報によれば、自殺者は年3万人を下回る見込みとか。
一方で、いじめや借金が原因の自殺が報じられています。親殺しや虐待は、形を変えた「一家心中」のようにも思えます。火災の死亡率が急増したのも、「一人暮らしの無職の50代男性」の死亡が増えたからとか。逃げる気力をなくしているのではないかとの分析が紹介されていました。
警察も、自殺統計の取り方を細かくして、自殺の背景に迫る努力をするようです。
先の通常国会で成立した自殺対策基本法も、10月28日の施行が決まったようです。
内閣府に設置された「自殺対策推進準備室」の名称も、「準備」の二文字が取れて、本格的に活動を展開します。
自殺は社会問題であるとの認識を常に再確認しながら、各般の施策がとられることを期待しています。
教育再生会議で何を議論するのか?
いじめで自殺した生徒の遺書を紛失していた教育委員会の姿勢には、こどもを守ろうという姿勢が見えません。教員免許更新制の導入、学校評価制度と、教育現場を締め付けて、期待しているような成果が生まれるのでしょうか。学校選択制も、勝ち組の視点ではないでしょうか。
いま、子どもたちが学校で、どのような状態に置かれているのかを知ることの方が先決です。目立たないように、手を挙げない、運動会でも速く走らない。いじめられている子に、手を差し伸べない。いずれも異常な状態です。
親の世代は、勝ち組が誉められ、「他人のことより、わが身が大切」。リストラの後は、非正規社員で埋めていく企業姿勢。どれも誉められるものではありません。
世のため、人のため。恩返し。情けは人のためならず。困った時はお互い様。そんな日本人の徳が廃れてしまっている。それはなぜですか。そのことがとても重要な視点だと思うのです。
今週の「なんでやねん?!」
* 安倍総理と北朝鮮との疑惑を報じた週刊誌記事に触れた質問に、安倍総理は感情が昂り、質問議員への懲罰動議も出る始末。「まだ読んでいません」とかで肩透かししておけば良いのに。安全保障に関わる問題で、簡単に感情が昂る。こんな総理に日本の安全保障を任せていて良いわけがない。総理失格。
* 中川政調会長が「日本も核保有」と発言。原発から回収したプルサーマルを溜め込み、国産ロケットの技術のある日本なのに、そんな不用意な発言をするとは。歯止めなしですね。
* 今年8月、奈良県の町立病院で出産中の妊婦が重体に。18病院が受け入れを拒否して、大阪北部の病院に運ばれたが死亡。奈良県の産婦人科拠点病院も受け入れを拒否していた。拠点病院の名が泣くではないか。徹底解明を!
* 小泉総理のご子息二人が国会議員を目指すとか。再チャレンジとは、そういうことだったのですね。
* ソニーの電池回収。ブランドイメージのダウンは必至。私のVAIOが熱くなるのは、酷使のためではなかったのですね。確か、岡部冬彦の漫画から生まれたソニーのキャラクター坊やは「あっちゃん」だったよね。あっち~!
今週の「がんちゃん日誌」から
* 静岡県立がんセンターの訪問記を、ホームページに掲載しました。山口総長のお話が、とても示唆に富んでいました。
10月29日(日)号
お知らせです。11月25日(土)、午後1時から、東京ウイメンズプラザ(渋谷)で、パネルディスカッション「最善の抗がん剤治療を受けたい!」を開催します。
第1部では私が体験を踏まえて、「なぜ標準的な治療が受けられないのか」「なぜ、治療法がまだあるのに、もう治療法はありませんと言われるのか?」など、患者が抱いている疑問を、パネリストの医師、薬学教育者、臨床研究担当者らにぶつけます。第2部ではパネリストが熱い討論を展開します。
ご来場をお待ちしています。
高校では、日本史も世界史も必修科目に
高校では、平成6年入学者から世界史が必修だと知って、文科省に、その理由を尋ねた。
以下、文科省の回答:
(1)国際化の進展に対応して、他国の文化や世界の歴史についての学習内容を充実させることの必要性が高い。
(2)小学校及び中学校の歴史の学習においては、我が国の歴史の学習が中心であり、世界の歴史については、その背景として取り扱われている程度。
(3)そこで、高校では、ある程度系統的にまとまった形で世界の歴史を学ばせるため、世界史を必修とする。
世界史Aは「近現代史」で2単位。世界史Bは「通史」で4単位。うち1科目が必修とされている。
日本史をもっと勉強させよ、必修にせよとの声もあるが、同感だ。世界史の中枢は、民主主義、人権・平等を獲得する過程を学ぶことである。世界と日本の歴史を学び、彼我の格差を知ること、日本を内と外から見つめることが、歴史教育の一番大切なことだと思う。高校では、日本史と世界史の両方とも勉強すべきだ。
安倍総理や与党幹部の発言は不穏当だ
北側一雄公明党幹事長「生徒には何の責任もない。負担をできるだけ軽減していく努力をしていただきたい」(27日)。
本当に生徒に責任はないのか。「教科書は買ったが授業がないのはおかしいと思った」「受けてもいない科目に、成績が記入されていておかしいと思った」と、生徒は言っている。「おかしい」と言った生徒もいる。それを先生に「受験のため仕方ない」と押し返され、沈黙した。厳しいようだが、勉強をする側である生徒が、受身の姿勢になっているのは残念だ。
森元首相「追試や授業をやる必要はない。世界史の本でも読んで、論文でも出してもらえばよい」(27日)。
それは、大学で単位不足の学生が教授に頼み込む時の気持ちで、高校に適用することではない。
この論法が通ると、「実用的でないことを教える授業を、なぜ受けなければいけないのか」との質問に答えられなくなる。さらに、受験に関係しない授業の打ち切りを認めることにもなる。
ルールを無視した学校の生徒は、受験科目に集中して勉強してきたアドバンティジがある。きちんと履修している生徒は、大学受験を平等な立場で受けられないことになる。フェアでない。「公平・公正」という価値観を、安倍総理らの発言は軽視している。さらに、彼らの発言は、「効率優先社会」を是認する。そこでは、非効率なもの、生産性の低いものは邪魔者として切り捨てられる。日本社会は、とても危険な道を進んでいると感じる。
私の提案:
1)特定科目で学力を測るセンター試験を廃止し、学習指導要領の範囲内で、総合的な学力をみる試験に一本化する。各大学は、その試験結果と、独自の学力試験、論文、面接などで合格者を決める。日経の社説(10月27日)が主張するように「大学入試に学習指導要領をあわせる」のではなく、入試制度の方を改革すべきだ。
2)大学全入が妥当か、総合的な観点から議論する。短大が4年制に移行したので、親の負担は大変。子どもは、目的もなく「先ず進学」だから、4年間を無駄に過ごす人も少なくない。問題の根幹は、高校が予備校化していることだ。大学がすべてではないし、人生の選択をすることの厳しさ、いろいろな人生があることの楽しさなどを示すことが、教育基本法の改正などより、とても重要に思える。
3)高校では、卒業に要する単位や科目、学校が提供できる授業科目を入学時に生徒に文書で示す。高校教育の多様化に伴い、いろいろな授業が行われている。高校生の側にも、授業科目選択権を与えても良いのではないか。
今週の「なんでやねん?!」
* 福岡での、いじめによる自殺事件に関連して、東京から次々に事情聴取に来る。そのたびに、父親は同じ話の繰り返しを強いられる。官邸のパフォーマンスも、ほどほどにすべきだ。教育委員会が機能をしていないことや、教師に問題があることを否定はしないが、いますべきは、責任の追及ではなく、子どもたちが置かれている環境を、子どもたちの声を通じて、社会全体が知ることだ。あわせて、心ならずも教師とともにいじめる側にいた生徒たちへの、フォローをしっかりしてほしい。
* 米国ロサンゼルスの病院が、患者を路上に捨てているとの報道(朝日新聞、10月25日夕刊)。もっと驚いたのは、カリフォルニア州議会が「ホームレス遺棄禁止法」を可決したということだ。何でも米国追随の日本だが、そんな国になるのだろうか。
* 大阪府が250億円出すと言っても、武田薬品は研究所を湘南に移す。クスリの街、大阪のシンボルがひとつ消える。看護師さんも、東京志向が強いとか。何でも中央に引っ張られ、地方は金も人もないまま。東京栄えて、国滅びる。