vol.32 2007年1月〜2月

1月8日(月)号

 新年のご挨拶を申し上げます。

 早々に賀状をくださった皆様、ありがとうございました。子どもたちの健やかな成長や、お仕事や地域生活でのご活躍ぶりに心温まる思いがいたしました。

 また、お見舞いや激励の言葉をいただきありがとうございました。年末は治療に専念させていただき、何年振りかで賀状を失礼させていただきましたが、新年は無理のない範囲で、がん医療の水準向上を目指して、関係資料の読み込みなどをしております。ご安心ください。

 私も参議院議員となって6年が経過し、今年は改選期を迎えます。党本部には公認申請をしていますが、まだ決定をみていません。そんな状態ではありますが、先ずは残り半年の任期を全うし、初一念を貫きたいと思います。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

安倍総理、猪突猛進はやめてください

 安倍総理は、年頭の記者会見で、「たじろがず、まっすぐに、美しい国を目指す」と語り、「夏の参議院選挙では、憲法改正を争点にしたい」と意気込みました。教育基本法の改正や防衛省への昇格など、与党の数の力に任せて強引に推し進めてきましたが、今年が亥年だからといって、経済界や米国の言うままに、日本をあらぬ方向に引っ張っていくような猪突猛進は、やめてください。

 今月末から始まる通常国会での論戦や、春の統一地方選挙や夏の参議院選挙に向けてのマニフェスト作りを通じて、民主党は、世代間や地域間の格差問題、安心できる年金や医療制度の構築、日米安全保障同盟のあり方などについて広く国民に訴えていかなければいけません。

 民主党のテレビコマーシャルを見ました。荒海を進む船の舵を握る小沢船長、ロープを巻き上げる菅代表代行や鳩山幹事長が登場し、「生活維新」と訴えています。突風にあおられた小沢船長が吹き飛ばされ、両腕を菅さんと鳩山さんが支えるという絵柄ですが、小沢代表の力強いイメージに合っていないと思います。その上、「生活維新」ということばもよくわかりません。もっとストレートに、今の社会現象について民主党はこう取り組むというようなメッセージが伝わるようなCMのほうが良いと、私は思います。

今週の「なんでやねん?!」

 厚生労働省は、国民の健康づくりをすすめる「健康日本21」計画に喫煙率を下げる数値目標を盛り込むことが、またもできませんでした。日本たばこ産業や葉たばこ農家をかかえる自民党の強い反対があったからです。

 将来の医療費削減のために厚労省は、生活習慣病対策として「メタボリック症候群」という考え方を打ち出し、太った人を狙い撃ちにして、体重減少や食事などの生活習慣の改善を強く打ち出しています。私は、この方策が医療費削減にどの程度寄与するのか、不確かだと思っています。

 むしろ、たばこ対策が医療費の削減につながることは、アメリカなどで実証済みです。肝心のたばこ対策から逃げたまま医療費削減策を推し進めるのは、理屈に合っていません。

 たばこによる税収入の確保が、国民の健康よりも優先されている日本。これは「美しい国」でしょうか。

1月14日(日)号

  「政治家とカネ」の問題が報道されるたび、政治や政治家への信頼が失われていくことが残念です。「政治家など、はなから信用していない」という声が聞こえてきますが、それは、とても危険な状況です。そうした状況を、政治家自らが作り出していることを自戒すべきです。

 国会議員の収支報告がなされるたび、「何億円もお金を集めて、どのように使うのだろう?」と思います。そうした党のお偉方の場合は、関係議員への「もち代、氷代」、秘書への給与、関係者との飲食費などに使われているのでしょう。個々の国会議員の立場によって、どのように、また、どの程度の政治資金を使うかは異なりますから、一概に「使途がおかしい」とは言えないと思います。

 問題は、政治への国民の信頼を得るために国会議員自らが制定した「政治資金規正法」などの法律を、肝心の国会議員自身がよく理解していない、遵守していないということです。「事務所費」は、事務所の維持運営に要する費用のことです。事務所職員の「慰労」としての飲食代は、福利厚生の一環として含まれるかもしれませんが、支持団体や支持者との会食費用は、事務所費(経常経費)とはなりません。

 通常国会でも、この問題は取り上げられると思います。その結果、重要な政治課題について議論する時間が少なくなるとすれば、その状態を喜ぶのは霞ヶ関の官僚です。実は、一番喜んでいるのは、安倍総理かもしれません。重要案件を巡って国会で追及される時間が少なくなるのですから。

今週の「なんでやねん?!」

* ブッシュ大統領は、イラクへの増派を打ち出しました。フセイン大統領を退けたことによる宗派間の「内戦」状況を、米軍の増派で治められるのでしょうか。安倍総理からは、ブッシュ大統領の決定に対する見解はまだ出ていません。イラクでは、航空自衛隊の輸送機が今も活動をしています。どのような活動をしているのか。何を運んでいるのか。機密を盾に政府は説明を拒んでいますが、防衛省昇格によってさらに重要性が増した「文民統制」の一番の担い手である国会への報告がない。それでは、「文民統制」など、絵に描いた餅ではないでしょうか。戦前への回帰は、予想以上に早いように感じます。

* 世界的な暖冬で、ニューヨークでは20℃を超したとか。日本近海で、普通は南の海に住んでいる魚がいっぱい獲れるとの報道もありました。経済的・地域的格差の是正、社会保障制度の長期にわたる安定的運営とともに、環境問題は参院選の重要な争点だと思うのですが、民主党内での取り組みもまだまだのようです。

1月22日(月)号

 1月11日付のウオール・ストリート・ジャーナルの、何と1面に、私の名前が載りました。昨年夏に、PETER LANDERS記者から受けた取材が掲載されたものです。タイトルは、

Japan’s ‘Cancer Refugees’ Demand More Options

Patients Decry System That’s Frugal, Universal But Restricts Choices

「日本の「がん難民」 多くの選択肢を求む

がん患者 医療費抑制のため選択を厳しく制限する国民皆保険制度を批判」

ついに、「がん難民」は英語になりました。

英語版はこちら

日本語訳はこちら

今週の「がんちゃん日誌」から

* 平成19年度の「がん対策予算」の概要 を、私のHPに掲載しました。よろしければ参考にしてください。

厳しい財政状況の下、前年度比3割増の予算案となっています。また、概算要求と予算案とが乖離した理由や、今後の課題も解説しています。

今週の「なんでやねん?!」

* 安倍総理は、一定の年収を超える準管理職にある者に対して残業代を支払わなくても良いとする、「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」法案の通常国会提出を見送ると表明。私などは、サービス残業が横行し、過労死も減らない労働現場や、すでに裁量労働制も導入されていることを考えると、WE制度がなぜ必要なのか判らない。サラリーマン経験のない安部総理は、深く考えることもなく、財界から言われるままにWE法案の提出を考えたのだろう。参院選挙への影響を避けるため引っ込めるという了見も気にくわない。庶民感覚のない政治家や財界寄りの官僚は、ご退場いただきたい。

1月28日(日)号

 通常国会が始まり、26日には安倍首相の施政方針演説がありました。

 施政方針演説といっても、予算案や国会提出予定法案を説明する形を取るために、総花的で、平板な印象の演説でした。ここはスタイルを思い切って変えて、重要政策に絞り込んで演説されれば、もっと楽しいのにと思います。でも、「わが省の法案に触れてください」と願う官僚が許してくれないのでしょう。

 参議院選挙前の施政方針演説は、国民向けの笑顔満載というのが愉快です。

 「頑張る地方応援プログラム」を4月からスタート、「イノベーション25」を5月までに策定、「21世紀環境立国戦略」を6月までに策定などと並んでいます。それらを、官邸でも、政治主導でもなく、官僚主導で作成し、参議院選挙マニフェストに盛り込むと言っているのです。どこまで、実現可能性がある政策なのか不明ですが、内容次第で、悪くはないと思います。選挙対策の政策でも、国民に利益のある事柄なら賛成です。

 安倍演説から、ここでは二点だけ触れます。

新薬開発より未承認薬の早期承認を

「イノベーション25」では、「がんや認知症に劇的な効果を持つ医薬品の開発などの実現に向けた戦略的な支援を行なう」と演説で表明しました。

日本発の新薬開発に反対ではありませんが、その可能性はどの位あるのでしょうか。新薬の開発は10年単位の話です。それよりも、がん患者としては、欧米で使用されていて日本では使用できない医薬品の数を、早急に減らして欲しいと願います。

最低賃金制度の見直し

安倍首相は、「最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するよう、必要な見直しを行なう」とも述べました。現在の地域別最低賃金は全国平均で時給673円です。求人情報誌では、日勤では時給1000円前後、夜勤では1200円程度となっていますし、生活保護の水準と併せるならば、相当の引き上げが必要です。

そんなことは経済界が許さないでしょうから、金額的な見直しはできないのでしょう。そうすると、時給700円弱が「セーフティーネット」の水準ということになります。1日8時間、22日労働なら、月額12万3千円、年額150万円余りです。こんな数字を、安倍総理は想像したことがあるのでしょうか。余談ですが、自動車企業の春闘で、一時金を250万円要求するとの記事を見て、この金額が年収の若者も少なくないだろうなと思ったものでした。

本当に「最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能する」見直しなら賛成ですが、反対に、生活保護水準が引き下げられるのでは困ります。

与党は、生活保護水準が高いという「証拠」に、生活保護を受けていない一般家庭や母子家庭、高齢者世帯の収入を引き合いに出しますが、「生活保護を受けずに、生活保護水準以下のレベルで生活している人たち」も含まれていて、統計上は低い金額となっていることを忘れています。統計数字のマジックに惑わされているのです。

この理屈で、児童扶養手当や生保の母子加算などを減額・廃止にしました。一方で、児童手当の乳幼児加算を創設し、母子家庭よりも裕福な家庭にも現金給付が行なわれます。本当に困っている家庭を経済的に支援すべきです。

今週の「がんちゃん日誌」から

* ある患者会からの情報をもとに調べたところ、抗がん剤投与の際に、吐き気対策としてステロイドを同時に投与することは、標準治療になっていることが判りました。ところが、地方の中核的な病院で、「使うのはまだ早い。習慣性がある」と言って、患者の願いを聞いてくれない医師がおられるそうです。制吐療法のガイドラインが作成され、全国的に普及させることが必要です。吐き気が抑えられれば、闘病意欲を維持できます。

2月4日(日)号

柳澤発言を契機に、子育て支援策の徹底議論を

 柳澤厚労大臣の「産む機械」発言で、野党は補正予算審議を拒否。「週末にある愛知県知事選等の形勢を良くするためか」と与党は批判するが、柳澤大臣のもとで「少子化対策」を議論することがいかに滑稽か。私は、辞任とか更迭とかではなく、厚労大臣の交代を求めている。

 本間税調会長のときも、安倍総理は最初本間氏をかばっていたが、世論に押されて辞任となった。今回の柳澤発言でも、「発言を訂正されたことですし」と、ことの重大さには気づいていなかった。それが、大事になって、またまた辞任では、安倍総理の面子が立たない。だから、何があっても辞任させないだろう。

 それならば、国会で、柳澤大臣に対して「少子化対策」なるものの説明を求め、今後どのような効果的な施策を展開するのか、大いに議論しようではないか。参院選挙まで柳澤大臣を閣内に留めておいた方が、野党には有利だと思う。

 そもそも、「少子化対策」なる言葉自体が不適切なのではないか。少子化対策と言ってしまうと、人口減少が社会保障制度や経済活動に悪影響だとなって、どれだけ産んでもらうかという発言にもつながる。

 日本社会にとって必要なことは、家庭と仕事の両立支援、子育て環境の整備、多様な生き方の支援などだが、これまでの「少子化対策」は、出産一時金の増額や児童手当の増額・乳幼児加算の創設など、金銭的な給付が多い。

 金銭給付は、もらう側からすると「助かります。嬉しいです」となるし、与党からすると、目に見える施策になるので評価を得やすい。しかし、根本に横たわっている「働き方の問題」は、経済界の取り組みがなければ達成できない。

 安倍内閣は経済界の要請を受けて、雇用の規制緩和をさらに進めようとしている。「効率」を追い求める経済界に同調していたのでは、「仕事と家庭の両立」など到底達成できない。この壁をどのようにして乗り越えるのか。

 そして、児童扶養手当や生活保護の母子加算を削減・廃止することは、子育て支援策と逆行するのではないか。

 柳澤大臣を軸にして、国会で大いに論戦したい。

中国残留孤児問題で、政治判断ができるか?

 今週、安倍総理が読み違えたもうひとつの政策課題は、中国残留孤児への支援策だ。

 1月30日の中国残留孤児訴訟東京地裁判決は、国の主張を全面的に取り入れたものだった。これまでの大阪地裁、神戸地裁判決は残留孤児らの心情を汲み取ったものだったが、東京地裁判決は「支援策も十分でないなか、一度に大量に帰国されると混乱する恐れもあった」とまで述べて、「一日も早く祖国、日本に帰りたい」と願ってきた孤児たちの気持ちを踏みにじった。官邸や霞ヶ関に近い東京地裁の裁判官は、政治的な判断を取り込んで判決を書くのだろうか。

 翌31日、総理は官邸で残留孤児らと面会した。「厚労大臣に特別の支援策の検討を指示した」とのことだが、謝罪したとは聞かない。厚労省からは「現行の支援策以外に、特別に金銭給付を行なうことは、他の戦争被害者への支援策との均衡から、極めて困難」と念を押されていたなかで、あえて総理自らが面会する。孤児たちは、「総理が会ってくださったのだから」と期待を高めるが、裏切らないでほしい。

 総理や与党は、小泉総理がハンセン病訴訟で和解して全面解決に導いたと同じ構図で、低迷する内閣支持率の上昇を狙ったのだろうが、成田空港に残留婦人が「強行帰国」された時以来13年間、この問題に関心をもってかかわってきた私から見れば、中国残留孤児訴訟では、もっと大きな「政治判断」を要する。

 国会で柳澤大臣が「厚労省に検討会を置いて、夏の概算要求までに(すなわち8月末までに)支援策をまとめる」と答弁したのを、総理は「もっと早く」と指示したそうだ。これまた夏の参院選挙をにらんでの発言だろうが、厚労省に検討会を置けば、厚労省寄りの結論しか出ないことは明白だし、時間の無駄になる。また、いかなる支援策であれ、「来年の予算から対応します」では、高齢者の多い残留孤児らとの間で、和解に至らないのではないか。

 安倍総理に「政治判断」ができるのか。注目したい。

2月12日(日)号

 2月15日(木)に、参院厚生労働委員会で質問に立ちます。時間は40分間です。柳沢大臣の問題発言を受けての集中審議ですが、「辞めろ・辞めない」の議論はしません。

 先週のメルマガでも書いたように、柳沢発言は「夫婦と子ども二人」を模範家庭とする価値観を押し付けるものです。家庭の価値の再評価を所信表明で打ち上げた安倍総理のもと、どんな「少子化対策」が打ち出されるのか、注目しています。

 政策を総花的に並べるのではなく、限られた予算を特定の政策に集中させるべきです。

 少子化社会への対応とは、住みやすい町、住んでみたいと思う町を作ることだと思います。その一番の課題は、地域における雇用の創出で、それは医療や介護、福祉サービスが担っていると考えます。

 同時に、少子化社会の到来を前提として、社会保障制度などを改革することが求められていることを指摘します。

 少子化の問題とあわせて、中国残留孤児訴訟、在外被爆者訴訟についても、質問します。

 中国残留孤児への支援策は、総理も約束しています。どんな内容になるのか明らかにすることを求めます。

 在外被爆者訴訟については、国は最高裁で敗訴しました。長年、違法な通達によって被爆者の利益を奪ってきたことについて、国は謝罪していません。官僚機構に対する政治の優位を叫ぶならば、自分に都合の良いように法律を解釈して、制度運用をしてきた官僚機構の問題点を洗い出さなければなりません。法治国家とは、官僚が法律を勝手に解釈、運用しないことだと理解しています。

2月18日(日)号

 2月15日(木)、参院厚生労働委員会で、柳沢厚労相と質疑を交わしました。

 国会での質問となると、質問前日の午後、質問に関連する各省庁から多くの職員が私の国会事務所に押しかけ、「先生、ご質問のご趣旨は?」と根掘り葉掘り聞いてきます。当方、体調もあって、質問の全文を48時間前までに厚労省に伝えました。したがって柳沢厚労相には、私が何を聞きたいのかを理解したうえで答弁して欲しかったのですが、残念ながら答弁内容は、官僚が用意した作文そのものでした。

 中国残留孤児への支援策については、「2月6日にお会いしたのは、孤児だけではなく、残留邦人もおられた。おわびしたと言うが、陳謝したのであって、謝罪したのではない。支援策は、検討会を設置して、その後にまとめる」という内容でした。安倍総理は残留孤児の皆さんを官邸に招き、支援策を約束。残留孤児は「春風が吹いてきたようでした」と喜んでいましたが、柳沢大臣の答弁からは、「安倍総理は嘘つきだった」と言われるだろうと感じました。

 在外被爆者への健康管理手当の支給打ち切り問題で、国は最高裁まで争って敗訴した件でも、「違法行政だったと言われるが、厚生官僚は正しいと思って事務を進めてきた。三権分立なのだから、国の行政に不服があれば、裁判所に訴えて欲しい」との趣旨の答弁でした。

 私が柳沢大臣に申し上げたかったことは、

1)国民が国や行政を相手に裁判するのは、国等の決定に不服があるからだけれども、最高裁まで争って国が負けたときは、国として謙虚に反省する姿勢が求められるのではないか。

2)「国に不服があるときは訴訟を」では、長い争いになってしまう。そもそも、大臣は行政官庁のトップではあるが、国会議員でもあるのだから、早い時点で政治的解決を目指すべきではないのか。それが、政治主導といわれることではないのか。の2点です。

答弁全体を通じて、柳沢大臣には政治家としてのリーダーシップが感じられませんでした。社会保障制度の充実についても、財政削減しか考えておられませんでした。どちらも、大蔵官僚出身の経歴が反映していると思います。

「産む機械」や「健全」発言によって、72歳だという柳沢厚労相が、社会がどれほど多様化しているかをご存知ないことは判りました。そのうえ、官僚任せで、社会保障費の削減ばかり考えているのでは、少子化社会に向けての効果的な施策はまったく期待できません。やはり、厚労大臣にはふさわしくありません。

今週の「がんちゃん日誌」から

◎ ムコ多糖症Ⅱ型の治療薬について

 18日、朝のテレビ番組で「ムコ多糖症Ⅱ型(ハンター症候群)」の小児への医薬品提供について、早期承認を求める母親と支援者の声が報道された。この病気は、特定の酵素の先天的欠損によって、細胞や臓器に障害を起こすもので、日本国内での患者数は100~150名と推定されている。米国での治験に4名の日本人患者も参加し(渡米し、長期に滞在した)、そのデータをもって米国で承認された。

 昨年10月末に開催された厚労省の第10回未承認薬使用問題検討会議で取り上げられ、次のような「検討結果」が報告された。

検討結果

 本剤は、これまで有効な治療法の無かったムコ多糖症Ⅱ型の諸症状を改善し、さらにその進行も抑制すると考えられる唯一の治療法である。重篤な過敏反応に対する注意を払う必要があるものの、造血幹細胞移植に比してはるかに安全性の高い治療法といえる。また、今回米国で承認された治験データには、日本人患者4名が含まれており、同薬剤の開発に貢献していることも特記すべきことである。日本人患者を含む欧米での臨床試験データをもって承認申請を認め、承認後は長期にわたる製造販売後調査などで可能な限り国内情報を収集することが望ましいと考える。疾患は重篤であるだけでなく、早期の治療開始が予後を大きく左右する可能性があるので、迅速な審査による早期の承認を期待する。

 また、製薬企業に対しては、人道的倫理的見地から、審査期間中であっても、治験や学会等の研究組織による治療研究を通じて、国内患者に対する本剤の供給を希望するとともに、研究・治療にあたる医師においては、本剤の治療経過(とくに安全性面)を科学的に分析し学術誌等に報告することが望ましいと考える。

 さて、「本剤は唯一の治療法である」「日本人患者4名も治験に参加した」との報告があっても、日本国内での承認まで1年以上もかかるのだろうか。また、製薬企業に錠剤の供給を「希望する」ことで、患者に錠剤が行き渡るのだろうか。

 承認に先立って、錠剤を保険適用にして、患者や医師の手元に届けられる仕組みが必要なのではないか。

◎ 万波医師による病気の腎臓移植について

 腎臓を提供した(摘出された)患者に不利益が生じたとすれば、その行為は許されない。一方、病気の腎臓を移植された患者が、将来受けるかも知れない不利益について説明を受けていなかったとすれば、その行為も問題視されて当然だろう。記録の有無などの手続き上の問題もあるが、問題の核心は、患者が利益・不利益を理解したうえで特定の医療行為を選択した場合、それが「人体実験」になるのかという点にある。

 人工透析を受けている患者らが厚労省あてに3万人の署名を集めて、万波医師を支持したそうだ。

 医学の進歩は、これまで考えてもみなかったような新たな問題を私たちに投げかけてくる。

2月25日(日)号

今週一番面白かったニュースは、安倍内閣の「学級崩壊」映像でした。

 安倍総理が部屋に入ってきても起立して迎えない、総理よりも先に座ってしまう、閣僚間での私語が続いて安倍総理が話しの輪に入れない。そんなことで良いのかと中川幹事長が暴露しました。閣議前の控え室でのことではありますが、小泉前総理が入室した時の映像との比較放映は、秀逸でした。

 若年だが上役なのだから、安倍総理に対しては、それなりの敬意を払う。また、話の中心になるように配慮をしてあげる。そうした気配り、心配りが生まれないのは、「お友達内閣」だからでしょう。

 なんとも締りのない内閣です。

今週の「なんでやねん?!」

●【年長フリーター?】
 安倍総理は「年長フリーターの再チャレンジを支援するため、国家公務員の中途採用を行なう」と答弁。30代の「年長さん」に限らずに、年齢不問で優秀な人材を国家公務員に迎えられる制度を作ると言えば最高でした。中途採用者の給料は幾らぐらいになるのか、年齢や経験は加味されるのかなどと、早速考えを巡らしていますが、なぜ「年少フリーター」は対象にならないのでしょうか。

●【スキーバス衝突で添乗員死亡】
 規制緩和で新規参入業者が増え、貸し切りバスの料金が安くなったのは良いけれど、安全が後回しにされています。「安全運行は事業者の責任」と言われればそれまでですが、運転手らに無理をさせる構図を作り出した責任はないのでしょうか。行き過ぎた規制緩和を見直す時期ではないですか。

●【鹿児島の選挙違反事件で全員無罪】
 無罪は当然。「あいつは自白したぞ」とか、アリバイを巡ってのやり取りは、まるでテレビ番組のようでした。「踏み絵」には驚きました。何年も被疑者扱いし、自殺未遂者まで出した警察や検察、調書を証拠採用した裁判所の責任は、どうなるのでしょうか。安倍総理、はっきりさせるべきではありませんか。

●【独立行政法人医薬品医療機器総合機構の増員について】
 行政改革の一環として政府関係機関の独立行政法人化が進められました。ところが不可解なことに、独立行政法人として「民営化」されても、政府全体が推し進める「5%の人件費カット」や「定員法」の対象となっています。税金が投入されていないにも係わらず、人件費の合理化を求められ、定員増も独自の判断ではできません。

 完全に民営化してしまうと、官僚の天下り先でなくなる恐れがあるので、コントロールできる立場をキープしておきたいということでしょうか。それとも、本省職員の給料が伸びないのに、先に退職した者の給料が伸びたのでは、退職希望者が増えてしまうとでも言うのでしょうか。

 ところで、今回、独立行政法人医薬品医療機器総合機構について、職員の大幅増員が認められ、今後3年間(19~21年度)に240名の新たなスタッフが加わるそうです。日本での新薬等の審査が欧米各国に比べて遅いのは、審査体制が手薄だからと言われてきましたが、増員によって審査期間を半分にすることができると機構では話しています。もっとも、人員の確保が大変だろうなと思います。