vol.34 2007年7月~10月
7月2日(月)号
国会は、与党による強行採決の連発と、野党の抵抗という形で、先週金曜日、事実上、閉会しました。
強行採決翌日の土曜日、こんな質問を受けました。「(会期末の7月5日まで)国会は何をしているのですか?」その方からすれば、いろいろな問題点が出てきているのに、国会は与党の強行採決と野党の抵抗で終わって、その後、時間があっても何もしない。そのような国会への痛烈な批判でした。
政治への信頼がどんどんと落ちていることを感じます。だからこそ、病を得た私が、いえ、病を得た私だからこそ「国会で活動を続けなければいけない」と思うのです。13年間、野党の国会議員として蓄積してきた知識をもって、官僚機構の無責任体制と戦い、安倍総理の暴走を、身を挺してでも阻止しなければならないと、固く決意しています。
経済界の言い分だけを聞いてきた小泉総理もどうかと思いましたが、官僚機構に依存し、「戦後レジュームからの脱却」と「美しい国」の言葉だけを繰り返す安倍総理も中味がありません。郵政解散で多数の議席を得た自民党の1年生議員の方々が、総理の言葉の中味を検証もせずに支持しているのはなぜでしょうか。せっかく座った国会議員の椅子を失いたくなくて、衆院の解散選挙を恐れているのですか。もっと持論を公言されないと、皆さんの存在は自民党の「頭数」にしか過ぎませんよ。
今週の「ちょっと、うれしいお話」
◎ 7月1日、大阪で私の後援会総会がありました。平成5年の7月、大阪旧4区(中選挙区制)で日本新党から立候補して初当選。それ以来の14年間、いつもそっと見守ってくださっている会員さんから、「出てきた時は、のっぽで格好は良くても、弱々しくて頼りなさそうと思っていたけど、よく仕事してきたよなぁ」と、お褒めをいただきました。みなさん、ありがとうございます。
◎ 6月12日に参院厚労委で社保庁問題に関して質問したことはお知らせしましたが、委員会室で、写真を撮ってくださっていた某新聞社の写真部の方から、先般、当日の写真を送っていただきました。
いつもは、立って質問している姿を正面から撮っていただくことがほとんどです。でも今回送っていただいた写真は、まるで連続写真のようで、いろいろな表情をとっていただいています。大臣の答弁を真剣に聞きながら、次の質問を考えている写真は、まるで獲物を狙うトラのようです。お見せできないのが残念ですが、私の宝物箱に大切に入れておきます。
もちろん写真も嬉しかったのですが、お手紙に「これまでも、委員会質問者の写真は撮ってきたけど、山本先生の質問は、実にわかりやすかった。こんな国会議員がいたのかと驚いて、おもわず、何枚も写真を撮っていました。これからも頑張ってください」と書かれていました。感激です!
皆さんから、両手に抱えきれないほどの宝物をいただきました。ありがとうございます。
ご案内: フォーラム「生きるということ」
7月6日(今週末の金曜日)、午後7時より、四谷の主婦会館で、「生きるということ」をテーマに、フォーラムを開催します。ぜひご参加ください。
俵萠子さん(エッセイスト)、山崎章郎さん(ホスピス運動の先駆けのお一人)、大熊由紀子さんの三人と、会場の皆さんで、いま一度、「いのち」について語りあっていただき、そこから、私たちが次の世代に手渡す社会の姿を導き出そうというのが、会合の趣旨です。ご参加をお待ちしています。
7月9日(月)号
七夕の7月7日は、私の58回目の誕生日でした。多くの方から、お祝いの言葉をいただき、ありがとうございました。これまでで一番にぎやかで、喜びにあふれる、生涯忘れえない誕生日となりました。
フォーラム「生きるということ」、大盛況でした
7月6日、フォーラム 「生きるということ」を開催。東京四谷の主婦会館集会室は、立ち見が出るほどの盛況でした。懐かしいお顔も拝見することができました。ありがとうございました。
俵萌子さん、山崎章郎さん、鈴木共子さん、大熊由紀子さんという豪華なゲストスピーカーに、「いのち」について語っていただきました。
俵萌子さんのお話し
「日本のがん医療は、いのちが助かった後のQOL(生活の質)を考えることがなかった。1・2・3で温泉に入る会(通称、ドボンの会)をつくった。みんなで温泉に行って、一緒に湯船に入るという嗜好だ。当初会員400名が、今では350名になっている。皆さんの死を見つめていると、自分は、生きているというより、生かされているという思いだ。先に逝った彼女たちの“仇を討ちたい”というのが今の心境だ。がん対策推進基本法の中味を充実させることが私の仕事だと思っている」。
山崎章郎さんのお話し
「治ることが難しい患者さんを、家族とともに支援している。生きることは、身体だけを支えていれば良いのではない。人間、どんな時に生きる希望をなくすのか。自分の身体に奇跡が起きるかも知れないと思いつつ、自分の身の回りのことができなくなるときがくる。その時、つらさを分かち合える人がいれば大丈夫。人は、お互いの関係性のなかで生きている」。
鈴木共子さんのお話し
鈴木さんのひとり息子、さんは、早稲田大学に入学して1週間後に、無車検・無保険の車にはねられ友人もろとも即死された。加害者の男は免許失効中でありながら、泥酔状態。しかも3度目の事故なのに、「業務上過失致死傷罪」とされ、刑期は当時最高の5年だった。あまりの理不尽さに憤り、署名活動を展開して、「危険運転致死傷罪」の創設につながっていく。この間の経緯は、映画「ゼロからの風」となった。いのちのメッセージ展を日本各地で開催している鈴木さんは、NYの世界貿易センタービル跡地での、「いのちのメッセージ展 IN ニューヨーク」の開催をめざしている。
コーディネーターの大熊由紀子さんの進行で、とても素晴らしい集会になりました。進行がん患者として、私も治療を頑張りつつ、「最期まで人間の尊厳を失わず、ふつうの暮らしができる社会」を創りたいと、改めて決意しました。
突如沸き起こった「ハッピー・バースデー」の大合唱(あしなが学生へ自分史を語る)
翌日7日には、代々木のオリンピックセンターで、全国から集まった、あしなが運動の大学生リーダーに私の「自分史」を語りました。
山本孝史の話し
わずか7歳で、交通事故により奪われた兄のいのち。あまりに理不尽だと思いつつけてきた。それから35年が経つが、いまも葬儀などの情景を覚えている。
生きたいのに生きられなかった人がいる。私も兄の分まで、人生を2倍生きなければならないと思った。
みんなは、人の痛みが分かる。どうか各地域や職域で、リーダー役を買ってでて欲しい。期待している。
話し終わって演壇を降りようとしたとき、突然、「ハッピー・バースデー」の大合唱。嬉しかった!
七夕の笹飾りといい、大合唱といい、生涯忘れられない最高の誕生日になりました。
みなさん、ありがとうございました。
7月11日(水)号
7月12日から参議院選挙が始まりますので、開票翌日の7月30日まで、メルマガの発信を控えます。今回のメルマガが、選挙前最後の「蝸牛のつぶやき」です。ご理解ご了承のほどお願いいたします。
初当選以来の懸案、一定の解決策に到達
7月8日、中国残留孤児の皆さんが国の新たな支援策を受諾されました。国は、中国残留孤児に対する責任を認めたうえで、その支援策を充実します。
私が初当選した直後の平成5年9月、成田空港に12人の残留婦人が「強行帰国」されました。早速、所沢の帰国促進センターを訪れて面会して以来、ずっと取り組んできた問題です。議事録を繰ってみると、13年間の国会活動で、中国残留邦人・孤児について9回、質問をしています。
昨年12月の参院決算委員会では安倍総理に、「祖父の岸元首相は満州国の副首相を務め、戦後は岸内閣として中国を敵視し、孤児らの帰国を遅らせた。1959年には未帰還者に関する特別措置法を制定。約1万3千人の残留邦人がいることを知りながら戦時死亡宣告を行い、ようやく日本に帰ってきて、自分の墓に対面した残留孤児らも少なくない。岸元首相に続いて、お孫さんである安倍首相にも残留孤児はまた見捨てられるのか」と質問。「参議院選挙までに解決しなければ、安倍総理の嘘つきと言うぞ」とにおわせて、期限を切りました。まだまだ課題は残っているとはいえ、一定の合意点に到達したことを心から嬉しく思います。
思い返せば、成田強行帰国があって、中国にご縁の深い田中真紀子さんが「中国残留邦人帰国促進自立支援法」を議員立法で提案され、成立しました。
その時、国会ではちょうど年金改革関連法案が審議されていて、田中さんの原案に、帰国者は国民年金保険料を納めることができない立場にあったので、保険料免除期間として基礎年金の国庫負担分(約2万2千円)を受け取れるようにする条項を、国民年金法に入れ込みました。実は同法の目玉は、この年金支給の根拠を設ける糸口になったことです。官僚の智恵は素晴らしいと思ったことを鮮明に覚えています。
新支援策関連法案は秋の国会で審議されるそうですが、今度は、国民年金(基礎年金)の満額を受け取れるよう、保険料を国が払ったことにする規定を設けるようです。
私は年金改革に関連して、年金制度への税金投入は、給付時にその給付総額の3分の1を投入するという現行システムを、保険料が払えない人には、国が保険料を立替払いするシステムに変えれば、国民全員に国民年金(基礎年金)の満額を受ける権利が生じると主張してきました。今回の中国残留孤児への支援策と同じ方策です。
北朝鮮拉致被害者への支援策を超えることが合意の条件だったそうです。制度や法律の、わずかなところでも変更を加えれば、他の法律や制度に良くも悪くも影響が生じる。この良い影響を「根拠」にして、制度の前進につなげたいものです。
中国残留邦人・孤児問題は、議員立法の仕方、お金の引っ張り方、入管の高飛車な姿勢にみる「共生社会」創造への壁など、国会議員として必要なことをたくさん学びました。
それにしても、当事者が裁判に訴えないと解決に至らないということは、もうこの辺で終わりしたいですね。そのためにも、政治の指導力や、官僚の柔軟な姿勢が必須条件です。そんな議員や官僚が増えることを望みます。
今週の「がんちゃん日誌」から
◎ 国の「がん対策推進基本計画」の策定を受けて、次は、各都道府県が「都道府県がん対策推進計画」を策定する番です。
私が提唱して設置された国の「がん対策推進協議会」は、18名の委員中4名が、がん患者・家族・遺族側委員でした。ところが、地方レベルでは、東京が22委員中3名、大阪は2名、高知は3名(大阪、高知は委員の総数が判りません)とのこと。やはり、身近なところで「監視」していないと、患者側が思うような委員構成にはなりません。また、協議の内容も、がん検診に偏っているそうです。
各地での患者会の役割が強く期待されています。がん医療の水準を向上できる絶好の機会です。当事者である患者や家族代表の委員を増やしていただいて、積極的に発言をしてくださるようお願いします。
なお、厚労省がん対策推進室では、本日11日、全国担当者会議を開催します。また、都道府県における計画策定の進捗状況等を、7月中に取りまとめて公表するとのことでした。
8月9日(木)号
(参議院選挙が終わりましたので、メルマガの配信を再開します。)
選挙後、はじめて国会議事堂に入りました
8月7日、参院選挙後に開会すると定められている臨時国会(期間4日間のみ)が開会され、私も、選挙後はじめて国会議事堂の建物内に入りました。
通い慣れている通路を通り、いつもどおりに、階段を上がって2階の参議院議長の部屋の前に立ったとき、何か「いつもと違う、新鮮な感覚」に体が包まれました。何だろうと考えているのですが、「また、仕事ができる」という喜びだったように思います。根っからの「仕事人間」ですので、「無理をしないように」と周りからは注意をされています。
議長選挙が記名投票のため、演壇に置かれた投票箱に入れるため議場内を歩きます。いわゆる「堂々巡り」です。川田龍平さんや糸数慶子さんと顔があって、良かったねと小さく手を振った瞬間、その周辺の自民党、公明党議員の皆さんから拍手が起こりました。ちょっとビックリ。ありがとうございます。
ところで、初登院日の7日の毎日新聞夕刊で、「新人議員」の一人として、虎退治の姫井由美子さん、川田龍平さんらと一緒に紹介していただきました。これには驚きましたが、議場で感じた「新人の気持ち」で頑張ります。
仕事を始めています
参議院で第1党になったことで、参院民主党の責任が格段に重くなりました。これまでのように、野党的体質で攻撃を続けることよりも、提示した政策の妥当性、予算的裏付け、他の政策との整合性など、いろいろな目配りが必要です。
社保庁の年金保険料問題などが攻撃第1弾となるようですが、参院で所属議員が増えたといっても、新人議員は国会の仕組みについて戸惑うことが多いでしょう。私も、しっかりと資料等を整理して、同僚議員が的外れの方向に弾を撃たないよう、後方支援に努めたいと思います。
今週になって、社会保険庁の年金記録問題、C型肝炎訴訟などの党内の会合に出席しました。メルマガの発行がかなりずれていますが、こちらの方も徐々に追いつきたいと思います。少々、お待ちください。
8月20日(木)号
選挙が終わっても、テレビ局からの取材依頼がある。でも私は、「いまは一人の国会議員ですから、特別に見ないでください」と、お断りしている。がんと共存しながらの国会活動には、身体的にも時間的にも制約がある。それに、私の姿を見て、励まされる人がおられる一方、「病身を見せるのは、やめてくれ。そこまでしなくても」と思う人もおられるからだ。どうぞ、マスコミの皆様、ご理解ください。
官邸、夏の怪談話
* 小池防衛大臣と守屋事務次官の攻防戦。総理の休戦案に従って、守屋次官は退任。「私達の仕事は、国の防衛です。自己防衛ではありません」と語っていた小池防衛大臣は、「事務次官の在任期間が長い」と交代理由を述べた。その大臣在任期間が、これまた記録的な短期で終わるのか。アメリカ政府高官は、「誰と話せば良いのか?」と戸惑うことだろう。
* 首相の面前で、公然と退陣を求める自民党代議士。総理の権威も地に落ちた。でも、退陣要求派の顔ぶれを見ていると、平成5年の総選挙で自民党が下野した際に、自民党を離党した人が多い。野党の国対委員長だった人が、自民党に戻って、今度は与党の国対委員長を務める。そんな時代だから、何でもありだが、結局、自民党の政治家の原動力は、「与党議員でいること」であって、政策実現ではない。再認識した。
参院の新議員宿舎問題
老朽化した参院の清水谷議員宿舎の建替え問題。宿舎建設予定地に隣接するマンション住民から、建設反対運動が起こっている。
目の前の豊かな緑を満喫でき、日当たりも良い住環境にいる人からすれば、反対は当然だろう。一方、バッシングを恐れる国会議員は、誰も発言をしない。これでは議論が進まない。そこで、あえて一石を投じる。
私からすると、「都心に残る緑を残せ」と住民は言う。でも、その緑を楽しんでいるのは、マンション住民だけではないのか。道路から奥まった問題の緑地に入っていく人を、私はみたことがない。現在の宿舎の隣は、清水谷公園だ。かつてはデモ隊の解散地点だったが、今では綺麗に整備されて、みんなが訪れている。「都心に緑を」であれば、現計画を進めて、宿舎跡地を清水谷公園と一体となった緑地公園に整備する方が、より多くの人が、都心の緑を楽しめると思う。
また、現宿舎は耐震強化のために、建物両端の部屋のなかを鉄骨が通っている状態だ。有名な女性議員が大浴場で亡くなったのは、なぜか。風呂がなくシャワーしか付いていない部屋もあるからだという。建設反対の人も「議員には、東京での宿舎が提供されるべき」との意見に異論はないが、「自分で、マンションを借りれば良いではないか」と言われる。しかし、当選早々の仕事が住居探しというのも、時間的にも大変だ。それに、議員会館に近い場所にいないと、毎日朝8時前からの会合に出席するのは大変で、そんなに遠くには住めない。社宅は嫌われるようだが、議員が一緒に住んでいることは利点も多い。
では私ならどうするか? 現在、清水谷と麹町の2ケ所に分かれている参院議員宿舎を統合し、高層の宿舎を現在の計画地に建てる。そして、いまの二つの宿舎を、土地・建物ともども一般競争入札で売却し、新館建設費に充てる。いかがでしょうか。
9月10日(月)号
9月10日、臨時国会が開会されました。残念ながら私は、治療のためテレビで安倍首相の所信表明演説を聞きました。
居並ぶ閣僚の顔ぶれを見ていると、いつもの顔が目立って、舛添厚生労働大臣ぐらいが新鮮味を与えていました。その舛添大臣も、彼の就任直後の「新閣僚に聞く」での質疑を読んでいると、官僚の答弁を代読しているだけで、何かしてくれるんではないかという期待を感じさせません。
また、改造内閣での新農林水産大臣は早くも顔が代わっています。安倍内閣の危機管理能力の欠如を如実に現しており、この内閣の不安定さを象徴していました。
安倍内閣の今国会での最大の政治課題は、テロ特措法に基づくインド洋での海上自衛隊による給油活動の継続です。それならば、安倍首相は所信表明演説の大半を使ってでも、国民に対して、その継続の必要性をわかりやすく丁寧に説明し、理解を求めるべきだったと思います。にもかかわらず、いつもの国会の所信表明のように、各省庁から上がってきた政策テーマを取り上げて、総花的な演説となっており、「職を賭して」という首相の言葉は、非常に軽く聞こえ、国民の心には響きません。
日本がインド洋で給油を続けることが、国際的な評価を受けているというのであれば、その実績を国民に具体的に示すべきだと思います。首相は、給油活動の継続は、「対外公約であり、世界的に評価されている」と言っていますが、その事実関係なども明確に示すべきです。
今国会で、日米の軍事的な関係や自衛隊の海外における支援策について、議論が深められねばならないと思います。
9月24日(月)号
安倍総理が、自分に政権担当能力がないとして、参院選後に開かれた国会の総理所信表明演説を行なった直後に辞任を表明しました。
どうせ辞めるのなら、7月29日の参院選の歴史的敗北が決まった直後でもよかったのではないでしょうか。この2ヶ月あまり時間が浪費されたことになります。なぜ、今になったのか、残念ながら説明がありませんでした。ただ、きょうの入院先の病院での会見における安倍総理の顔色を見ていますと、体調不良は明らかです。
結局、この2ヶ月間は、自民党のコップの中での人事の争いではなかったのでしょうか。誰もが、役職につくことを考えているだけで、どのようにこの国を立て直していくかについての方策が語られることが少なかったと思います。
こうした点から見ても、安倍総理や自民党、そして連立を組んでいる公明党も含めて、日本の政権運営について、無責任だったと後世に語り継がれることだと思います。
総裁選の福田候補は、格差の是正も必要だと訴えていましたが、どのようにして是正するのか、是正のための財源をどこから持ってくるのか、全く触れておられなかったように思います。明後日には、福田新内閣が衆議院自民党の多数をもって誕生することになりますが、参議院側は別の意思を示すことになるでしょう。
従って、一刻も早く、衆議院の解散総選挙を行うことが必要だと思います。日本の外交や安全保障、自衛隊の国際貢献について、また、社会保障の建て直しのための財源確保など、各党がしっかりと国民に政策を示して、民意に沿った安定した実行力のある政権を誕生させるべきだと思います。
10月2日(火)号
高齢化時代の到来とともに高齢者医療費や看取り、独居高齢者の介護や生活介助が問題となっています。そんな中、9月27日のNHKの番組「にっぽんの現場」で、孤独に生きる高齢者に寄り添う山中修医師の活動が紹介されていました。
山中医師は、2年半前に横浜市寿地区に診療所を開設し、以来、高齢者の孤独死を食い止めようと奮闘されています。先生は、簡易宿泊所に往診に行き、そこで人間関係を結べないまま一人で暮らす高齢者たちのそれまでの人生に耳を傾け、残された人生をどう生きたいのか相談にのっています。
山中医師は、「この地域の人たちにとっては死ぬことは簡単だ。問題は死ぬことにあるのではなくて、その人のそれまでの生とこれから迎える死を、きちんと結び付けてやること」と言っておられました。まさにその通りだと思いました。
政府が展開する高齢者政策は、年金も医療も介護保険も、利用者側の負担を上げ、サービスの質は下げるというものです。一人の人間の人生を最後まで豊かにしてあげるような、尊厳を重く考える政策にはなっていません。
がん対策基本法の基本計画で、二大目標の一つとして‘緩和医療‘の充実が明確に打ち出されました。終末期医療に大きな役割を担う緩和医療がどのように展開されていくのか、厚労省は、早急に国民にヴィジョンを示すべきだと思います。
10月21日(日)号
舛添厚生労働大臣は、就任後の記者会見で、厚生労働省が抱える問題について語りましたが、大臣の対処方針は厚労省と全く変わるところがなく残念に思っていました。
C型肝炎の問題についても、対象者に、「あなたには血液製剤のフィブリノゲンが止血剤として使われた可能性があります。早く検査をしてください」と通知すべきところを、徹底できておりませんでした。
これまで、製薬企業に製剤の販売先を調べさせ、医療機関に使用履歴を調べることを命じたものの十分ではありませんでした。更に、今回は、厚労省内にも投与者の確定にいたる資料が保管されていたことが判明しました。これではまるで薬害エイズ事件と同じ構造ではないかと思います。
大臣には、厚労省のこのような体質を良く踏まえて、役人の説明をまに受けることなく、当事者側の意見に十分耳を傾けるところから、新しい行政をスタートさせてほしいと思います。
私は、被爆者援護法の改正について、高齢で病弱な在外被爆者にも日本に来て手続きを取るようにと定めている条項の撤廃を求めてきました。
裁判所は「被爆者はどこにいても被爆者」と判決で示しているのに、厚労省は、未だに、それに従おうとしていません。この状態を解消するために、参議院での与野党逆転という絶好の機会が訪れました。しかし、残念なことに、民主党内で、裁判の内容や被爆者の実態、あるいは被爆者認定問題について理解する人が少ないために足踏みしています。また、与党側、とくに自民党内でも理解する議員が少ないという同じ状況があります。
厚労省が、他省(外務省)と調整しなければならない案件にかかわることを敬遠したり、議員のなかには、一時は日本人であっても法的には外国人となっている人たちに、厚生予算から多額の資金をひねり出すことに反対や躊躇する声が大きいことも、問題の解決を阻む要素となっています。
大臣がリーダーシップを発揮するとともに、法案成立に積極的でない政党を動かす力が必要だということを痛感しました。
10月28日(日)号
生活保護行政を巡っていろいろな問題が起きています。北九州市では、生活保護を返上させられた男性が餓死するという事件がありました。
生活保護とは、国が国民に保障する最低限度の生活を営む生活費でなければなりません。高齢者、特に病弱の高齢者が増えていく中で、生活保護費はおのずと増えていくのは仕方のないことですが、国は減額する方向です。国が保障する最低限度の額とはいくらなのか、明確にする必要があります。
ここ数年に行なわれた母子加算や老齢加算の撤廃は、特に、生活保護世帯には厳しい結果を生み出しています。母子加算の場合は、国が、母親に就労する場を提供することを前提に、加算の廃止や減額が決められたわけですが、この約束も全く果たされないまま、とにかく国は減額することだけに力を入れています。
二人の児童を抱え、3つのパート労働をすることで何とか生活をしのいでいる母子家庭や、光熱費や食費まで削って生活をしている高齢者の姿は厚労省の職員には見えていません。
国民年金や国民健康保険の保険料において、すでに行なわれている年金からの天引き方式を、今後は学校の給食費、公営住宅の家賃などにも拡大しようとしています。
収納率の低下を防ぐために生活実態を無視したまま、取りやすい方法で取ってしまう、いわば先取りしてしまうわけですが、あまりにも事務的なやり方ではないでしょうか。加入者や利用者が、自発的に納入することが本来の姿ですが、生活苦からどうしても後回しにしてしまっている家庭の実情も考慮しなければなりません。
確かに、不正受給が少なくないという現状もありますが、国や市町村は、生活保護受給者が、人間らしく生きられる方向で制度を整備し、一人ひとりの受給者の相談にのって、生活支援や自立支援にもっと決め細やかにかかわらねばなりません。そのために、国は、ケースワーカーの増員や必要な生活保護費の財源を確保すべきです。
生活保護費の問題は国会のなかでの議論が極めて低調であり、積極的に議論を喚起しなければならないと思っています。
今週の「なんでやねん?!」格差
私のホームページの応援メッセージに、日本の社会は「何でこんなに格差があるのか」というのがありました。私は、学生時代から、交通遺児の母子家庭の生活支援にかかわってきましたが、なぜ、これほど母子家庭の母親に負担がいくような施策を国は展開するのだろうかと思い続けていました。人生の中で本人の責任ではない事故にあったり、災害にあったり、病気になったりして格差が拡大することは、できる限り国はふせがなければならないし、元の生活に戻れるよう施策を講じなければなりません。それこそ政治の役割だと思っています。
昨今は経済的な富が一部の人に集まって、仕事がない、住む所もない、夢をもてないといった状況に追い込まれている人たちが増えてきています。これも政治の責任です。しかし、政治家や役人のモラルが問われる事件が相次ぎ、政治行政が本来の機能を果たしていません。人の痛みの分かる政治を、真面目に努力している人が報われる社会にしていかねばと思っています。