国民年金法等改正案など関連3法案の提案理由説明と質疑(質問内容)
参議院
2004年5月12日 参議院本会議で質問
参議院本会議が12日開かれ、国民年金法等改正案など関連3法案の提案理由説明と質疑が行われ、民主党・新緑風会の山本孝史議員が質問に立った。
国会議員の国民年金保険料未納問題が政治への信頼を失墜させたと山本議員は指弾し、未納を公表しないまま衆院本会議で政府案に賛成票を投じた与党議員を「政治家失格と指摘せざるを得ない」と批判。未納閣僚の更迭と自民党議員の納付状況公表を小泉首相に求めた。
小泉首相は「閣僚としての職責をまっとうすることでその責務を果たしてもらいたい」などと答弁、納付状況公表も「各党の判断により対応している。基本的には議員個人の判断によるべきもの」として、公表について後ろ向きな姿勢に終始した。また「未納期間中、公的年金控除は受けていなかったか」と質したのに対して谷垣財務相は「10数年以上前なので調べる手立てがない」などとするに留まった。
3党合意について山本議員は「(民主党が示した)一元化を含めた年金制度の抜本改革実現のため合意を決断した」と述べ、3党合意があっても政府案には断固反対であるとの民主党の立場を表明。その理由として、従来の年金制度を維持したまま、給付削減、負担増を求める政府案では数年で行き詰まることが明白だと指摘した。その上で、民主党が示した所得比例年金と最低保障年金を組み合わせた新しい年金制度創設の必要性を改めて強調し、各党議員、学識経験者などが公開で協議する与野党協議機関を法案の委員会採決までにスタートさせるよう小泉首相に要請した。
さらに山本議員は「給付水準の下限を、平均的な賃金で働いてきた被用者の専業主婦世帯の年金で見て50%に設定した」とした衆院本会議での小泉首相の答弁を虚偽ではないかと批判。その数字は受給開始時にすぎず、受給期間が長引くにつれて40%台に落ちこんでいく事実を明らかにした。
山本議員は最後に「年金改革は国のありようを決める大事業。この参議院で真摯に、真剣に、徹底的に議論しよう」と議場に呼びかけ、安心できる新しい年金制度を必ず構築するとの決意を力強く示した。
※写真と文は民主党ホームページより
質問内容
国民年金法等の一部改正法案等関連3法案 参議院本会議代表質問
民主党・新緑風会 山本 孝史
ただいま議題となりました国民年金法改正法案等について、民主党・新緑風会を代表して、総理ならびに関係大臣に質問します。
そもそも年金とは何か、公的年金の守備範囲をどこまでと考えるか、国民皆年金体制を維持するのか。いま公的年金には、その存在に関わる根源的な問いかけがなされています。
参議院は良識の府、理性の府と期待されています。衆議院の審議で明らかにならなかった事項は沢山あります。
本院においては、有識者や年金受給者、保険料支払者など、幅広く国民から意見聴取をするため、参考人質疑を数回は行ないながら、慎重かつ充実した審議を行い、「損得で語られる年金制度から、納得できる年金制度」に、「損得から納得の年金制度」に再構築する第一歩としたい。そうしなければならないとの民主党の決意をまず申し述べておきます。
納付状況の公表について(総理・経産大臣・財務大臣・総務大臣)
小泉内閣の7人の閣僚を初めとして、国民年金保険料を納めていなかった国会議員が続出し、年金制度への不信を深め、政治への信頼を失墜させたことは、誠に残念です。
衆議院の本会議採決に当たって、未納期間があったにも関わらず、公表せず、国民に謝罪もしないままに賛成票を投じられた与党議員がおられるとすれば、政治家失格と指摘せざるを得ません。
また、保険料納付の義務を果たしていたのかとの質問に、「個人情報だ」と言い逃れ、しかも国会審議を優先させるために、5日間も公表を遅らせた隠蔽体質そのものの福田官房長官が辞任されたのは当然ですが、約21年間も未納であった中川大臣などが、いまも大臣の職にあるのは、まったく理解できません。
小泉総理は、未納閣僚を今すぐ更迭すべきです。それが国民に保険料納付を求めた内閣や閣僚の責任の取り方ではないでしょうか。任命権者である小泉総理の明確な答弁を求めます。また、未納大臣の中川経済産業大臣、谷垣財務大臣、麻生総務大臣には、お辞めにはならないのか、このまま居座るおつもりか、お尋ねします。
政治への信頼を取り戻すために、各政党は所属議員について、年金保険料の納付状況をとりまとめて、本法案の委員会採決までに公表すべきです。一説には、自民党は150名を超える未納議員がおられるようですが、総理には、自民党総裁として、党所属議員の納付状況を、なぜ公表されないのか、お尋ねします。
財務大臣には、ご自身も未納期間があったとのことですが、その期間、まさか社会保険料控除は受けておられないでしょうね。念のためお尋ねします。あわせて、財務大臣の職責として、未納国会議員が社会保険料控除を受けていないか調査すべきと考えますが、答弁を求めます。
与野党協議機関のあり方について(総理)
次に、3党合意と、与野党協議機関についてお尋ねします。
先に申し上げますが、民主党は、政府案には断固反対であるとの態度は変わっておりません。このことは3党合意があっても変わりません。
なぜならば、政府案は、現在の年金制度の体系を維持したまま、「給付を下げ、保険料を上げる」という、これまでの手法を繰り返す内容にとどまっているからです。ここ数年以内に行き詰ることは確実です。誰が喜んで、穴の開いたバケツに水を入れるでしょうか。4割もの人から年金保険料の自主的な納付を期待することができない年金制度は、もはや破綻しているといって過言ではありません。部分的な手直しのみで現行制度を延命させようとすることは、ただ時間を浪費するだけです。
公的年金制度への不信を解消するためには、わかり易くてシンプルな、新たな年金制度を創設する以外に方策はありません。民主党は、そのような考えから、年金制度改革推進法案を衆議院で提出し、所得比例年金と最低保証年金を組み合わせた、新たな年金制度をスタートさせることを提案しました。そして、法案には、政治主導による年金改革を進めるため、衆参両院に年金改革調査会を設置することも盛り込みました。
年金問題は、本来、国会で徹底した審議を行なうべきです。ところが、自民、公明の両党は数に物を言わせて、5年前の前回改正に続いて、今回も強行採決の暴挙に出ました。これでは、国民から付託を受けた国会の責任が果たせません。参議院においては徹底審議が当然です。と同時に、年金改革は、1、2ヶ月の国会審議で成し遂げられるものでもありません。
我が党は、責任野党として、一元化を含めた年金制度の抜本改革を実現するために、今回の3党合意を決断しました。これは、超党派議員による年金改革に情熱を注がれた、故今井澄議員の遺言でもあると私は受けとめております。
しかしながら、この与野党協議が、密室での協議になったのでは国民不在となってしまいます。責任をもって、各党を代表する国会議員が参加し、学識経験者などに専門委員として参加を求めながら協議する。もちろん、協議は公開する。そして、政治主導で、新しい年金制度を創設する。我が党は、与野党協議機関を、そのように考えていますが、総理も同じ意見でしょうか。自民党総裁でもある総理には、与野党協議機関の構成や、その運営に関してのお考えをお聞かせください。
また、与党には、本法案の委員会採決までに、与野党協議をスタートさせることを求めます。総理の決意をお聞かせください。
一元化と自営業者の所得捕捉について(総理・財務大臣・厚労大臣)
国会議員に未納者が続出した背景には、議員の、公的年金に対する関心の薄さがありますが、年金制度が複雑になっていることも原因です。
一般に、会社員は厚生年金、公務員等は共済年金、自営業者は国民年金と、制度が就業形態によって「縦割り」になっていると理解されていますが、これは正確ではありません。
昭和61年の、基礎年金制度の創設に伴って、すべての国民が、いわゆる1階部分と呼ばれる国民年金に加入することになりました。この1階部分のうえに、会社員や公務員には2階部分として所得比例年金が乗っているというのが、年金制度の姿です。すなわち、年金制度は、「横割り」になっているのです。
しかしながら、この国民共通であるはずの国民年金において、自営業者等の1号被保険者、会社員や公務員の2号被保険者、会社員や公務員の妻、いわゆる専業主婦の3号被保険者と、被保険者は3タイプに区分され、就職や離職、転職の際には、被保険者各自の責任において変更の届出をしなければならないため、未納や未加入が多数発生するという構造的欠陥があります。すなわち、国民共通であるはずの国民年金が、就業形態によって、依然として制度が、縦に分かれたままに運営されているのです。
しかも、自営業者や厚生年金の適用されないパート、フリーターなどは、定額の13300円の国民年金保険料を毎月払いますが、低所得者には、過重な負担であるため、4割が未納という状態です。一方で、医師や弁護士など、 1000万円を超える高額所得者にとっては、13300円の軽い負担で済んでいます。
会社員は、13.58%の厚生年金保険料を所得に応じて、労使折半で負担していますが、申しあげたように、1階部分の国民年金と、2階部分の厚生年金の双方の制度に加入しているにも関わらず、保険料は一体のものとして、支払っています。そして、第3号被保険者は、自身では保険料を支払っていません。
基礎年金は、給付の仕組みは確かに一元化されましたが、負担の仕組みは依然としてバラバラなのです。この保険料の不公平な負担構造を是正して、国民年金保険料を、すべての国民が、所得に応じて、公平、公正に負担することこそが、いま求められている抜本的な年金制度改革につながるものであると確信します。だからこそ、わが党は年金制度一元化を提案したのであります。
自営業者の所得は正確に捕捉出来ないと答弁されますが、その様な答弁がまかり通ること自体が異常です。自営業者にも所得に応じて所得税や住民税を課税しながら、年金制度については、所得が捕捉できないということで良いのか。総理ならびに財務大臣、厚労大臣の見解を伺います。
給付水準50%について(総理・財務大臣・総務大臣)
政府案が成立すれば、年金保険料は毎年上がり、現在よりも3割の負担増となります。一方、給付は一律に15%カットされます。このような大改悪にもかかわらず、政府や与党は、国民に対して明確な説明を行なっていません。これは国民に対する背信行為です。
総理は衆院本会議で「公的年金としてのふさわしい給付水準の下限を、平均的な賃金で働いてきた被用者の専業主婦世帯の年金で見て50%と設定した」と答弁されておられますが、この答弁は虚偽ではありませんか。
給付水準50%は年金受給開始時の一時のことであって、その後は、年金受給期間が長くなるに伴って、40%台の給付水準に下がっていくのではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
なお、国家公務員共済や地方公務員共済には、所得代替率によって給付水準を設定するという発想がありません。また、保険料固定方式も導入されないのですが、これらはなぜですか。財務大臣ならびに総務大臣の答弁を求めます。
基礎年金の水準について(厚労大臣)
年金問題の本質は、給付率よりも給付の実額であり、とりわけ、基礎年金の給付額ではないでしょうか。政府案では、基礎年金にもマクロ経済スライドが適用される結果、15%カットされ、40年間保険料を払い続けた場合の給付額は、現在の67000円弱から、将来は57000円程度の価値しか持たなくなります。その時、高齢者の基礎的生活を賄う費用はいくら必要で、満額の基礎年金で、その何割ぐらいが賄えるのでしょうか。現状と比較してご答弁ください。
今後は、介護保険や医療保険、さらには税負担も増えると考えられますが、そのような非消費的支出の割合は、基礎年金の満額に対して、現在はどの程度であり、将来はどの程度になるのでしょうか。以上、厚労大臣の答弁を求めます。
国庫負担率の引き上げについて(厚労大臣・財務大臣)
基礎年金の国庫負担率の引き上げについてお尋ねします。財政審に提出された資料によれば、所得階級5000万円超の人では24.2%が、1000万円超の人では21.9%が公的年金の給付を受けています。このような高額所得者に対する基礎年金においても、税金の割合を増やすことは妥当でしょうか。厚労大臣ならびに財務大臣の答弁を求めます。
厚生年金保険料の上限について(総理)
厚生年金の保険料負担について、総理にお尋ねします。これ以上の保険料引き上げは、さらなる未納・未加入者問題を引き起こすと考えるのが妥当です。民主党は、国民年金にとどまらず、厚生年金においても空洞化が進展していることを深刻に受け止めています。厚生年金の保険料は15%が限度との主張が聞かれますが、総理の認識をうかがいます。
無年金障害者問題について(厚労大臣)
最後に、無年金障害者の救済策については、今国会の閉会までに結論を出していただきたい。厚労大臣の答弁を求めます。
結語
民主党は全力で参議院での法案審議に取り組むとともに、安心できる新しい年金制度を必ず構築するとの決意を再度申し述べて、私の質問を終わります。