締めくくり質疑(質疑要約)

参議院

2005年2月1日 参院予算委員会で質問

2月1日、参院予算委で平成16年度補正予算の「締めくくり審議」が総理以下全大臣出席のもとで行なわれ、山本孝史は民主党を代表して、小泉改革や地震共済制度などについて、「提案」を交えて質問しました。以下要約です。

総理が強く指示した混合診療解禁について

山本孝史

混合診療の全面解禁問題で、未承認薬の使用と先進医療技術についての最終決着内容は?

尾辻秀久厚生労働大臣

基本的に二つのことを考えた。一つは反省点で、患者の切実な要望に迅速かつ的確に対応すべきだが、これに欠けていた。もう一つは、医療だから、安全性に十分に配慮しなければいけない。この二つの視点でもって改善策を求めた。具体的には、まず保険導入のための強化を行う「保険導入検討医療」と、差額ベッドなど、そもそも保険導入はあり得ない、前提としない「患者選択同意医療」の二つに大きく分けた。薬については、国内未承認薬について確実な治験の実施につなげることを決めた。先進技術については、医療技術ごとに医療機関に求められる一定水準の要件を事前に設定し、該当する医療機関は届出により実施可能な仕組みを新たに設けることにした。ここのところは随分議論があった。医療機関をぱっと定めたらすべていいようにしようという意見もあったが、私どもは、どういう大きな病院であっても、どういう技術の優れた病院であっても、やはり医療技術ごとに判断をすべきである、だからこの病院のこの医療技術はというように決めさせていただいた。

山本孝史

総理の評価は?

小泉純一郎総理大臣

約二千ぐらいの医療機関で百種類の医療技術等がこの混合診療解禁で可能になったと、大きな前進だ。

山本孝史

衆参の厚生労働委員会で決議をした。混合診療の解禁に伴って、金持ちしか良い医療が受けられなくなってしまうと困るし、高度先進医療という名の下で、実験的な医療が広く行われることによる被害拡大への懸念を持って決議をしたが、このような懸念を総理は持っての結論か?

小泉純一郎総理大臣

国民皆保険制度は維持する前提で行われた。

山本孝史

提案だが、先進医療技術や未承認薬を使うことに伴う有効性や安全性について、患者や家族に、文書で説明することを義務付けるべきだ。

小泉純一郎総理大臣

安全性、有効性、一番大事なことだから、患者さんに対しても家族に対しても十分説明する必要がある。どういう方法が一番いいかということは、よく厚労省なり医院、医師、病院等で考えるべきことだと思っている。

山本孝史

「保険導入検討医療」の普遍性、有効性、安全性が承認された時点で速やかに保険に適用するというルールを作らないと、いつまでも金持ちでないとその医療が受けられないということになる。したがって、ルールを作り、公表することを総理としても指導されたい。

小泉純一郎総理大臣

できるだけ速やかにその安全性、有効性が確認されたら、患者が利用できるように十分な対策が必要だ。

国民年金・厚生年金空洞化の悪化問題について

山本孝史

社会保険庁作成の年金保険料の月別収入状況を見ると、予測と実績が大きく乖離している。

村瀬清司社会保険庁長官

厚生年金と国民年金の月別状況には、おっしゃるとおり、予定額と実績額に大幅な乖離がある。理由は、営業日数とか、月末が休日になる場合、それから、厚生年金は80%、国民年金は35%が口座振替で、口座振替の引き落とし日が翌月にずれるような場合に大幅な乖離が出る。議員のおっしゃるとおり、目安とは言いながら、月別の乖離については今後極力避ける形でしっかりしなければならないと思っている。一方、社会保険庁が国民年金等の収納をどう見ているかという観点でお話し申し上げると、この資料だけではなくて、別途きめ細かな資料に基づき進捗管理をしており、収納管理等はそちらの方でしっかりやっているとお考えいただきたい。

山本孝史

月末が休日になるかどうかは、カレンダーはもう決まっている。年間収入で考えているというのは、それは「どんぶり」だ。

村瀬清司社会保険庁長官

この資料は国庫の方へ収められるという感じで管理しており、これとは別に、社会保険庁は収入管理をしっかりやっている。

山本孝史

私たちはこういう資料を持っているけれども、あなたにはこういう資料を渡したんだという答弁は認められない。僕の問題意識は、国民年金、厚生年金の空洞化がどう進んでいるか、特に年金改正で、去年の十月から厚生年金保険料を上げたことで、世の中どうなっているのかということを見るために、月別で当然把握してなきゃ話が始まらないと申し上げて、その資料を下さいと言って出てきた資料がこれだから、こんな予算管理しているのか、ずさんだと申し上げている。

村瀬清司社会保険庁長官

今日お手元にお配りした資料は、財務省との間で財政状況を月別に管理をするという観点で月別に数字を配分したもので、月別の状況という観点だと、先ほど申したように、月末が休日になる等によって相当大幅にずれがある。したがって、この表ではなかなか管理はし切れないということで、別途管理をさせていただいていると、こういう形でお話を申し上げた。

山本孝史

だから、別途管理している資料を出してくださるようにお願いしているのだ。
今年の国民年金保険料の収入予定額と、これから先、二月、三月の間で入ってくる金額と、その収納率は幾らになるか?

村瀬清司社会保険庁長官

本年度末の状況は、まず12月末の状況から推定すると、極めて厳しい状況になると考えている。現段階の推定値では、国民年金は前年度並みの1兆9千6百億、厚生年金は、16年の10月からの値上げ効果はあるが、平均報酬月額がやはり相当低下をしており、ほぼ前年並みか若しくは若干上回る程度の19兆3千億から19兆4千億になる見込みだと考えている。予算額では、厚生年金が19兆9295億で、5千億程度マイナス、国民年金は、2兆2千2百億を予定しており、大幅減という形になろうかと思う。

山本孝史

予定したものが入ってこないということで、年金制度の将来像、非常に心配な部分がやっぱり出てくる。私どもは、基礎年金をしっかり安定させようと申し上げている。

郵政民営化と公的年金制度の一元化

山本孝史

郵政公社が民営化されたときに、職員の身分はどうなるのか。年金制度はどうなるのか。

小泉純一郎総理大臣

民営化されれば当然、今の公務員が非公務員になる。年金にも関係してくるが、現時点でこうだと、まだ詰まっていない。

山本孝史

郵政公社職員は大変大きなボリュームで、これが国共済から抜けるかどうかは、年金一元化の問題と絡んでくる。したがって、早く決めていただかないと年金一元化の議論ができない。

社会保険庁改革について

山本孝史

厚生労働大臣も総理も、社会保険庁は解体することを前提にお話ししておられるようだが、そういう方向と理解して良いのか。

小泉純一郎総理大臣

余り現行の組織形態にとらわれず議論していこうということだ。私は今の組織にこだわっていない。今後議論を進めて、いい結論が出ればそれを採用したいと思っている。

社保庁改革における政管健保の地域分割

山本孝史

社保庁業務には、政管健保の部分と年金の部分とあるが、これは別々になるのか。

尾辻秀久厚生労働大臣

今おっしゃったような議論が非常に強くあることは事実だ。

山本孝史

小泉厚相は、医療制度改革でサラリーマンの自己負担三割に上げ、医療制度は抜本的に改革すると言った。その中の柱の一つが医療保険制度をどうするかだったが、閣議決定で都道府県を単位とする財政単位に再編すると決めた。社保庁解体の議論がその後に出てきたわけだが、社保庁の業務が分離される中で政管健保の業務は都道府県単位に分けていくと考えるのが、流れなのかなと思っているが、そういう方向でお考えか。

小泉純一郎総理大臣

そのような議論もなされている。また、医療保険改革の問題が議論されたときに、私は、それは一つの考え方だなと、都道府県単位でという考えも申し上げたことがある。この問題についても、その問題が具体的に取り上げられたときにも賛否両論、かんかんがくがくだった。そういう点も含めて、今、政管健保とこの年金の問題、こういう質が違う問題を扱っているところであり、当然難しい問題だが、それに対する一つの整合的な考え方も出てこなきゃこの改革成り立たないので、今後よく議論をしていただかなきゃならないと思っている。

山本孝史

議論とおっしゃるが、医療保険制度に関する基本方針が15年3月8日に閣議決定されて、その中で、次期医療保険制度改革においては都道府県単位を軸として保険者の再編統合を進めていくということが、内閣の方針として決まっている。それが決まっている後に社保庁の問題が出てきてが、政管健保は都道府県単位に平成20年をめどに分割していくということに受け止めるのが自然の流れだと申し上げている。だから、閣議決定の方針は変更がないのか、その方向に向かって今度の社会保険庁改革も考えていくのだという姿勢を確認させていただきたい。

尾辻秀久厚生労働大臣

今お話しのとおりで、政管健保をどうするかということだが、一昨年3月に閣議決定をされて基本方針が述べられているが、財政運営については、効率性等を考慮しつつ、基本的に都道府県を単位とすることとされている。したがって、大きくその方向であることだけはもう間違いのないところだ。この具体化に当たっては、社会保障審議会医療保険部会において今検討が進められている。今お話しのように、社会保険庁をどうするかということがもう一方から出てまいりましたから、これをどう組み合わすかというのは今後の議論の中でお決めをいただきたい、こう思っている。

山本孝史

都道府県単位に再編したとき、医療費の地域差があるので、当然保険料も差が1%以上出てくる、北海道と長野とかの間には。そこをどう調整するとか、いろんな議論が出てくると思う。だから、方向性を決めていただいて、その中でどうしていくか。でないと、一から議論していたのでは、何ぼ時間があっても足りない。

社保庁改革における政管健保の地域分割

山本孝史

私は、社会保険庁は共済年金のデータを持っていないので、給付にかかわるデータを集めて、共済年金も厚生年金も国民年金も全部含めて給付をするところの年金庁というものを一つ考える。徴収部分は、やっぱり国税と、所得税や法人税のデータを共有しながら徴収をして、労働保険も労災保険も、それから税も徴収をしていくと。そうするとデータがお互いに活用できるので、そういう形が一つじゃないかなと思っている。総理の御意見をお伺いします。

小泉純一郎総理大臣

問題点、よく指摘されておられるので、そういう問題点、当然今会議の中で検討されており、これは今後の年金の議論にも大きく影響してくる問題なので、よく検討する必要があると思っている。

山本孝史

今はやっぱり国税データを使えない。やっぱり一つの組織にならないと使えないということがあり、社保庁は今度、社会保険を適用している事業所をホームページで公表して、適用していないところをどうする云々という話があるが、今コンピューター化されている中で、データをうまく活用すれば、どこが適用漏れしているかというのは分かってくる。今度、社会保険庁を再編するときには、できるだけ効率良く、コストの掛からないシステムを作るということを念頭に是非考えていただきたい。

尾辻秀久厚生労働大臣

まさしく一番大事なことを御指摘いただいた。そういう視点で今後のことを進めていきたい。

住宅所有者全員加入の地震共済制度創設

山本孝史

私も阪神大震災のとき大阪におり、地震被害後の生活再建、住宅再建という問題は大変大きな課題だと思っている。住宅再建への税金投入は、税金を払っている側からすれば、当然だと思っているが、なかなかこの壁が越えられないというのであれば、実は兵庫県が今県独自の住宅再建共済制度を作ろうとしている。県独自で作るということでいろんな問題ができてくると思うが、国民全体が入る住宅再建共済制度のようなものを作れないのだろうか。それは、今、例えば農協共済とか全労済とかいろんな共済制度の中でそういうこともやっておられるが、全員が入ればもっと掛金安くなるし、うまく回っていく。
  したがって、私が申し上げたいのは、自助だというのと公助だというのといろいろあるが、共助というものを公助が後押しをしてあげる形で広めていけば、みんなが入っているんだから、防災意識がもっと高まると思う。防災担当大臣、国交大臣、それから共済制度なので財務大臣から、兵庫県が県独自の共済制度を作ろうとしていることについての認識と評価、今私が申し上げたような国の共済制度というものは作れないのかということについて御答弁をいただきたい。

村田吉隆防災担当大臣

自助の部分で、耐震化を進めるとか地震保険に入ってもらう。地震保険についても、民間だけでは大きな地震が起きたときにとてもカバーできないので、政府が再保険を受けている。こういう形になっている。それで、共済の問題に入る前に、地震保険の話をさせてもらいたいのだが、全国で見ると、損保会社とJA共済などの共済の地震保険について、カバー率が大体三割ぐらいだ。私は、前の臨時国会の議論でも、せっかくローンを借りて建てた家がつぶれてダブルローンになって苦しんでどうするかという、そういう御意見もあって、それも非常に苦しみはよく分かるが、新築の家を建てたときに地震保険付きの火災保険を入っていればそういう問題は取りあえずないというか、軽減される。
  ところが、昭和53年までは住宅ローンを借りるときに、火災保険付きのときには必ず地震保険付きだった。ところが、53年から、大蔵委員会等の当時の附帯決議もあって、負担が大きいから分けろといって、自由選択になってしまったので、現在では、住宅ローンを借りたときに強制的に付けられる火災保険に地震保険を付けていないのがあるということで、結果として今三割ぐらいの付保になっている。
 中越地震について、地震保険は138億円の支払がある。新潟はJA共済の掛け率が高いが、475億円の支払が見込まれている。これは12月の途中の段階だが、自助でそうやって住宅再建に臨んでいる方もおられるということを、まず前提で御理解をいただきたい。
 その上で、兵庫県が共済について構想を持っておられる、私も存じている。この件は、かつて平成7年も、この住宅、被災者再建支援法を作るときも議論があり、結局は難しいなということで見送られた経緯がある。どういう難しさがあるかと、改めてこの現時点で考えてみると、兵庫は地震が起こったから、もう何年か何百年か知りませんが大丈夫かなというところがあるかもしれない。だけれども、それじゃ切迫している東海地震等の地帯はどうするのかという問題もあると思う。だから、強制的に全国で付けていただくのが一番そのリスクが分散されるということはいいのだと思うが、そういう意味では果たして全国の皆さん方が入ってくれるのかなというのが第一点。
 それから、当然のこととして、大災害、首都直下のようなケースはどういうふうになるのか。この場合には相当な金額に、十兆とかなるというふうに考えた場合に、それをどう考えるのか。それから、あとは強制、徴収事務をどこが負担するかという問題等々あり、そういう問題を乗り越えていかなきゃいけない。だから、兵庫県がお考えになっていることは、地方が独自でそういう発想をされて計画をされているということは、私どもは、地方のそれぞれのイニシアチブで考えられることだから、私どもは結構なことだと考えている。

北側一雄国土交通大臣

兵庫県の被災者住宅再建共済制度だが、県の方が努力をされて知恵を出されてこのような制度をまとめられたことに、まず敬意を表したい。その上で、今も防災担当大臣が申し上げたような問題点、課題はあるかと思うが、しかしこの住宅再建ということを考えたときに、このようなやり方、広く住民の方々から、世帯から保険料を徴収をして、そして基金にして、そこから万が一のときに被災者住宅の再建の支援をしていく。当然、一定の要件とか一定の限度は当然あると思うが、それは、一つのやはりこれは検討し得る課題だと私は思う。是非これは勉強させていただきたい。また、地震保険をもっとより多くの方々が加入していただけるようにするためにはどうしたらいいのか。これまでもいろんな努力しているが、更にこれも検討をさせていただきたい。少し観点は違うかもしれないが、一方で、住宅の耐震化をしっかり進めていくことも並行して大事な課題であると思っている。

谷垣禎一財務大臣

私も、兵庫県がああいう災害の体験を基にこういう制度を作られたと、これは地域の実情をお考えになってのことだろうと思う。他方、今先生が自助と公助だけじゃなしに共助も考えろと。その発想はよく分かるわけだが、先ほど村田さんのおっしゃった、昔は火災保険、必ずこれ地震に入れというのがうまくいかなかったということを振り返ってみると、結局個人財産のところに返ってくると思うが、全員加盟というのを義務付けられるかどうかという村田さんがさっき指摘された問題がどう乗り越えられるかというのがやっぱり一番大きいんじゃないか。今地震保険があるので、今国土交通大臣がおっしゃったように、これはやはり国の再保険という信用力を背景に作っているので、これをもう少し利用していただくためにはどうしたらいいかということをまず考えるべきではないかと思う。

山本孝史

強制加入をさせるというところのいろんな問題点もあると思うが、私はやっぱり防災意識を高めるという意味においても、こういう制度を作る。民間もあるが、やはり保険料が高い。コストを少なくしてみんなが入るということでいくと、やはり農林共済とか見ていると安くて保障がいいという感じもする。ただ、大災害が起きたときに再保険しなきゃいけないから、国がかかわりをしながら全員が加盟する。住宅所有者一人一人が加入するか、あるいは自治体単位で加入するということも考えられると思う。是非共済制度として、いろんな災害を受けたときに、国もそこに応分の上乗せができるような土台を作るということを政治家として発想していきたいと思っている。是非政府の中でも論点を整理していただきたい。

在外被爆者援護のための被爆者援護法改正

山本孝史

今年は被爆60年。在外被爆者が手当の支給を求めて提訴した裁判で、国は相次いで敗訴している。被爆者援護法を改正して、在外被爆者にも支給できるようにすべきだ。

尾辻秀久厚生労働大臣

平成15年3月に制度改正を行い、いったん国内で被爆者援護法に基づく医療の手当等の申請をして受給が認められた場合には、出国後も支給することにした。法律としては、したがって、余り問題はないと実は思っている。ただし、ここは私も問題点だと思っているのは、手当の申請をするときに一遍日本に来てくださいと言っている。実務に携わっている人たちの話を聞くと、今のところ基本的な考え方や実務上の問題から、かなり難しいなとは思っているが、今後も検討させていただきたい。

山本孝史

在外被爆者にも手当が出るようにすべきというのが、裁判所の判断でもある。議員の皆さんには、法改正について是非御協力いただきたい。

ホームレス自立支援への就労機会の提供

山本孝史

国交省所管団体からの仕事に、ホームレスの皆さんも就けるようにしていただきたい。

北側一雄国土交通大臣

国土交通省所管の公共事業とか公共施設の管理で仕事を提供できないかという御質問。現在、国土交通省では、これらについて民間事業者と契約を締結して事業を行っている。当然、契約に当たっては、当然、入札ということになるわけで、建設業界もリストラ等のスリム化を図っている状況なので、その中にあってホームレスの方々に限っての優遇が果たしてできるかどうかという課題がある。御質問については、雇用政策全般の在り方、官公需政策の在り方等について、政府全体の議論として、関係省庁と連携しながら対応をしていく必要がある。