在外被爆者への健康管理手当支給打切り訴訟、国は敗訴(議事録)
参議院
2007年2月15日 厚生労働委員会で質問
参議院厚生労働委員会で15日、民主党・新緑風会の山本孝史議員が質問に立ち、中国残留孤児への支援や被爆者支援のあり方、少子化社会への対応などについて、柳澤厚生労働大臣の見解を質した。
冒頭、山本議員は柳澤厚労相が中国残留孤児集団訴訟の原告団と9日に面談した件に関して、「謝罪したと聞くが何について謝罪されたのか」として、早期帰国を図る義務を怠ったことか、帰国後の自立支援策が不十分であったことか、それとも両者かを質問。それに対して厚労相は、「ご苦労に対してお詫びを申し上げた」などとし、帰国後の支援策で、特に語学の点等は想定と違い、苦労をかけたことに謝罪したことを明らかにした。
その答弁を受けて山本議員は十分でなかった支援策を今後どういう手順で改めていくか質したが、厚労相らは実情を聞き、取るべき方策について有識者から意見を聞くと答弁。その姿勢に山本議員は「いまから検討会をつくってやるというのんびりとした姿勢でいいのか」と批判。「早く決めてほしい」と強い口調で述べ、早急な支援策決定を強く求めた。
続いて、在外被爆者への健康管理手当て支給打ち切り訴訟の最高裁判決で、広島県が敗訴した問題に言及。この問題は広島で被爆した原告3人がブラジル移住後、日本に一時帰国して健康管理手当の受給が認められたが、再びブラジルに戻ると、在外被爆者には手当を支給しないとする旧厚生省「402号通達」によって支給を打ち切ったもの。最高裁判決は、通達自体と広島県の事務処理のいずれも「違法」とした。山本議員は「私も違法という立場で取り組んできた」と述べ、長年にわたって違法行政を行ってきたことについての見識を柳澤厚労相に質した。
しかし厚労相は「行政庁としては準拠すべき法令に照らして判断したもの」などと答弁。高齢で病弱な被爆者に対して最高裁まで争うという結果に至ったことへの憂慮の念は一切示されなかった。さらに被爆者対策の残る課題として「被爆者健康手帳申請には来日が条件である」点を改めるよう山本議員が求めたが、あくまでも現行法の範囲内で行うと答弁するだけで改善の意思は示されなかった。そうした姿勢に対し山本議員は、政治がリーダーシップを発揮しない限り問題は解決しないとして前向きな取り組みを重ねて要請した。
少子化社会への対応をめぐっては、「女性は産む機械」とした柳澤厚労相の最初の問題発言はじめ安倍首相も同調する「結婚して子どもは2人以上持ちたいという健全な状況」発言は、安倍内閣は多用な生き方を尊重しないと言っているに等しい価値観だと批判。同時に少子化対策とは保育対策だけでなく、働き方を変えるところから本来考えなるべきであると問題提起した。
※以上民主党ホームページより
議事録
山本孝史君
山本です。本題に入る前に、中国残留孤児と在外被爆者の問題について、厚生省にとっては大変重要な問題ですので、お尋ねをしたいと思います。
大臣は、二月の九日、中国残留孤児の皆さんと面会し、謝罪をされたと聞いております。
そこで、お尋ねをしますが、何について謝罪をされたのか。帰国を妨げた、早期帰国を図る義務を怠ったことを謝られたのか、あるいは帰国後の自立支援策が十分でなかったとして謝罪をされたのか、あるいはその双方で謝罪をされたのか、お答えをいただきたいと思います。
国務大臣(柳澤伯夫君)
私は、今、山本委員の御指摘にありましたとおり、去る二月の九日、中国残留邦人の方々とお会いをいたしました。その際、実は私が、この東京地裁での判決のあった日に総理官邸でその原告団の方々が総理にお会いになり、その流れで言わば私のところにお寄りになられて、そこでも私、お会いしたんですけれども、何しろ日程が詰まっていて十分な時間が取れなかったわけです。
この前お会いした残留邦人の方々というのは、実はその東京地裁原告団の方も若干名、二名かそこいらですけど……
山本孝史君
済みません、時間が押しているんですけれども。何を謝罪したのか。
国務大臣(柳澤伯夫君)
ごめんなさい。
その方々も入っておりましたが、ほかの方々が大半でございましたので、私は今回こうして皆さんにお会いするいきさつからお話を申し上げました。特に総理から指示のあった向きをお話し申し上げまして、この一連の政府側の動きというのは、法律理論であるとか、あるいは裁判の結果であるとかということとは全く離れて、別途のものとしてお会いをさせていただいていますということで、その辺りのことをすべて、総理からの御指示のいきさつ等を含めて私から申し上げました。
その間、私も本当に皆さん方の御苦労に対していわゆるおわびを申し上げましたが、今あえて山本委員の方から、どちらであったか、あるいはそのいずれでもあったのかというお問い掛けがございましたので、あえて申しますと、私は、帰国後の支援策、細かくやったけれども、一番語学の点等について私どもの想定と違ってしまって、それがゆえに皆さんに大変な御苦労を掛けた、本当に申し訳なかったと、こういう趣旨での謝罪というか、陳謝をいたしたと、こういうことでございます。謝罪はちょっと取り消させてください。
山本孝史君
帰国後の自立支援策が十分でないことについて謝ったんだと。ここは裁判でいろいろと言われているところですから、また、それはいいんですけど、何を謝られたのかなというふうに思ったんですが。
そうすると、支援策はいつまでにまとまるのか、手順として、厚生省と残留邦人の皆さんがお会いになって決まるのか、あるいは検討会のようなものを設けて決めるのか、これはどうでしょうか。
国務大臣(柳澤伯夫君)
私どもといたしましては、これは、まず何といっても中国の残留邦人の方々のお話を、あるいは実情を聞かせていただくということ、これをやらせていただいております。同時に、私ども、総理からの御指示の一か所でもあったわけですが、一部分でもあったわけですけれども、第三者である有識者の意見もよく聞きなさいということも言われたのでございます。
そういうようなことで、率直に申して、与党にもPTなどもございますので、それとのすり合わせも事実上必要になろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、この中国残留邦人の皆さん方の実情をお聞きするということ、それから有識者を中心に取るべき方策についていろいろな御意見をお聞きするというようなことがメーンの手続になろうかと思います。
山本孝史君
これから考えるということですね。これまでいろいろ言われてきたのにというふうに思いますけれども。
与党PTの案は白紙に戻ったというふうに聞いております。残留邦人の皆さんが帰国されて生活保護を受けなきゃいけないのは尊厳を傷付けられたと、こういうふうにおっしゃる気持ちは私はよく分かるんですね。しかしながら、生活保護制度の利用は日本国民に与えられた権利でございますし、もしそこに制度運用上の問題があるとすれば、それは解消しなければいけないだろうと思います。
しかし、与党PTの案、今白紙だと言いつつも、もし厚労省が生活保護制度に代わる特別給付金制度を設けるということになりますと、生活保護制度を自ら否定するようなことになってしまうのではないかと今私は危惧をしているのですが、ここは皆さん方の御要求の部分もありますので、どんなふうに受け止めておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
政府参考人(中村秀一君)
生活保護制度との関係でございます。これからの対応案につきましては、大臣から御答弁申し上げましたように、有識者の方の御意見も賜りながら中国残留邦人の方々の実情をよくお聞きした上で、また与党ともよく御相談してという手順になるかと思います。
先生から御指摘いただきましたように、生活保護制度、年金等の社会保障給付などを活用してもなお生活に困窮する場合に最低限度の生活を保障するものであり、すべての国民の権利として保障されている最後のセーフティーネットでありますので、正に安心の基盤でなければならないと考えております。
私も、大臣が中国残留邦人の方々にお会いいただきました際に残留邦人の方々の実情を聞かしていただいたときに、特に生活保護を受けておられる方が残留邦人の六割ないし原告団の七割とお聞きしておりますが、大変やはり運用、受ける上では誇りを傷付けられたとか大変制約があるというようなことはお伺いいたしておりますので、どういう問題が更にあるのか、生活保護の立場からも中国残留邦人の置かれている特別な御事情ということをよく踏まえて、改めるべき点があれば改めていく必要があると、こういうふうに考えております。
所得保障制度としては、年金等生活保護制度ございますので、給付金というようなお考えも各方面からいただいておりますが、所得保障制度の体系としてはなかなか一般制度として、老後についていえば老後を中心として年金があり、それでセーフティーネットとして不十分な場合に生活保護があるという所得保障制度の体系からいいますと、給付金制度、いろいろ根拠はあるのかも、御主張の根拠はあるのかもしれませんが、社会保障制度の体系についてかなり大きな問題があるのではないかというふうに考えており、よくその辺については有識者の方々の御意見も承りながら今後の対応策について検討を進めさせていただきたいと思っております。