中国残留邦人の継子に係わる強制退去問題の再発防止、子どものうつ症状への対応 等(質問要約)

参議院

2005年3月17日 予算委員会で質問

参院予算委での平成17年度予算案審議で質問に立ちました。

中国残留邦人の継子に係わる強制退去問題では、尾辻厚労相が身元引受人になって法務大臣に掛け合うことを求めました。子どものうつ症状や警察や消防職員の心的ストレス対策に関連して、専門家の養成が急務であり、谷垣財務相に財政面での配慮を求めました。

その後、尾辻厚労相に基礎年金の性格の明確化などの年金改革の論点を質し、竹中経済財政担当大臣を交えて、今後の経済動向の予測と、社会保障財源確保策への影響について議論をしました。以下要約です。

中国残留邦人の継子入国問題

山本孝史

中国残留孤児の連れ子を強制退去処分とした問題で、福岡高裁は「国は間違っている」と判決。法務大臣は、どのような考え方に基づいて上告を断念したのか。

南野知惠子法務大臣

原告の方々が中国残留邦人の実子以上の存在であったことなど、それを指摘した判決の趣旨を踏まえた本件においての特段の事情を総合的に考慮して判断した。

山本孝史

判決は「本件の遠因には日本国自身の過去の施策があり、またそれについての救済措置の遅れが結果的に日本国への入国を困難にしているなどの諸事情が特有の事情として考慮されなければならない」とも言っている。実子同然の者は、日本に来られるようにしてあげるべきだ。

尾辻秀久厚生労働大臣

中国残留邦人自立支援法の帰国援護の対象は、原則として中国在留邦人及びその配偶者、未成年の実子等だが、本人に同行帰国する場合には、成年の子一世帯に限り帰国援護の対象としている。この場合は、成年の子については、実子、継子、養子を問わない。同行して帰国するかどうかは家族の中で十分に相談していただく。同行帰国しない場合は、そのことを文書で確認した上で帰国援護をしている。ただ、今後この裁判結果などを踏まえて検討していく課題だと認識している。

山本孝史

中国残留邦人の継子が遅れて帰国しても、家族同然の者は日本で生活できるようにするべきだ。厚労省は家族歴とか生活歴を知っているのだから、尾辻さんが身元引受人になって法務大臣に、大丈夫、この人入れてやってくれと言うぐらいのことをしてもいいのではないか。

尾辻秀久厚生労働大臣

私どもが持っている情報もあり、それを法務省とよく突き合わせながら相談して、いろいろ対応していくべきだということについてはそのとおりだ。やらせていただく。

山本孝史

在留特別許可は非常に広い裁量を持ってやっておられる。中国残留邦人という立場にかんがみれば、もっと日本政府は温かくていいはずだ。

子どものうつ症状について

山本孝史

2月24日、参院厚労委で自殺予防の専門家3人から意見を伺った。国を挙げて自殺予防対策に取り組むべきであるという認識で一致した。うつ症状を呈している子がかなり多いのではないか。

中山文科相)うつ症の判断というのは医学的な専門知識が必要だ。学校に一体どれほどのうつ症を持った児童生徒がいるか、正確に把握するのは困難で、実態は把握していない。

山本孝史

調査によれば、小学生で8%、中学生で23%という数字もある。文部省として全国的に調べてみる気持ちはないか。

中山成彬文部科学大臣

医学的な専門知識があって判断するということで、学校ではなかなか把握できない。特にプライバシーにかかわる問題であり、慎重に対処すべきと考えている。しかし、学校現場でうつ症状を始め児童生徒の心の健康の問題に適切に対応していこうと考え、教師用の参考資料を作成配付している。先生方にうつ症状はどういうものかを理解していただくことが第一だ。また養護教諭等を対象とした各種研修会を開催し、心の健康問題に関する正しい知識の普及啓発に努めるとともに、中学校を中心としてスクールカウンセラーを配置するなどして、学校において心の健康問題を抱えた児童生徒が早期に適切な対処が受けられるように支援をしている。

山本孝史

どういう状況にあるかという認識をしないままにどうやって、そういうハンドブックを作り、何とかしなさいということがやれるのか。

中山成彬文部科学大臣

専門の医学的な知識が必要だということだ。教室で最近の子供は、無気力というか、そういった子供もおり、最近の調査では、7割が居眠りをしているとか、夜中の12時過ぎまで起きている子が5割もいるとかで、朝学校に来ても、居眠りしたり眠そうにしている、だるそうにしている。この子がうつ症なのかどうなのかはなかなか一般の教員に分からぬわけだ。しかし、何かおかしいなということが分かるようにはしなきゃいけないということで、教師用にそういった研修用のいろんな資料等を配付している。

山本孝史

不登校、引きこもり、いじめ、他傷行為とか自傷行為とうつとは非常に関連していると言われている。どういう状態になっているのかという認識を文部科学大臣が持たれなければ、そこから先、物事は進まない。その認識をあなたは持とうとしないのか。

中山成彬文部科学大臣

ですから、そういう状況を教師が分かるということがまず大事だということで、まず教師用の資料を作成配付して、先生方がしっかりと子供たちの状況を把握できるように努めている。平成17年度までに1万校にスクールカウンセラーを配置して、心の相談とかも含めて対応しようと考えている。

山本孝史

大人の世界はどうなっているか。

尾辻秀久厚生労働大臣

平成14年度厚生労働科学特別研究では、一生涯のうちにうつ病にかかる割合は6.5から7.5%、これは約15人に一人という計算になる。大人のうつ患者が増加していることに加えて、子供がうつ症状を訴えている状況も憂慮をすべき重要な課題と認識している。そこで、子供の心の発達を把握しながら、年齢や心身の発育、発達の段階に応じて適切な支援を行う観点から、児童虐待や発達障害などを始め、子供の心の問題に関する診療を行うことのできる専門家養成の具体的方法について検討を進めることにしている。

性や死の教育の専門家養成と派遣

山本孝史

行き過ぎた性教育と指摘されたが、親も先生も実は性教育できないようだ。性教育の専門家、あるいは命、死というものについて子供たちに教えられる専門家を学校に派遣してはどうか。

中山成彬文部科学大臣

専門家の力もかりるべきじゃないか。正にそのとおりだ。命の大切さについては、中学校の生徒が産婦人科の病院を訪問して医師や看護婦に話を聞いたり、あるいは新生児に触れたりする体験活動を行うようなプログラムを実施している学校も見られる。また、子供の発達段階に応じた一般的な性教育以外に、学校の要請で産婦人科医とか精神科医などの専門医の派遣を行うなどして、学校と地域保健機関が連携しながら児童生徒の心身の健康相談とかあるいは健康教育を行うため、学校地域保健連携推進事業を実施している。

警察や消防署員の心的ストレス対策

山本孝史

事故やあるいは事件の現場に行かれた署員が非常に強い心的ストレスを受けておられると思う。対策の現状と、課題は。

村田吉隆国家公安委員長

警察職員も大変凄惨な殺人の現場とか交通事故死などの現場に行くので、非常にストレスがたまり、職務の執行上あるいは私生活においてもメンタルケアが必要だという状態になっている。
対策として、内部にカウンセラーを置いたり、外部の医療機関に相談に行ったりというような措置も講じているが、職場において幹部を始め、そうしたメンタルケアの必要性についてすべてが認識をするということが一番大切で、臨床心理士とか専門家、精神科医等に来ていただいて、そうした啓発活動、講義を受けるというようなことも実施している。

東尾消防庁次長

火災や救急現場において強いストレスを持つケースが多く、我々は惨事ストレスと呼んでいる。しかしながら、すべての消防本部にはこの分野の専門家がいないので、私どもでは平成13年に発生した新宿歌舞伎町ビル火災において多数の消防職員がこの惨事ストレスを負ったことから、精神医学や心理学の専門家を国が消防本部に派遣するメンタルサポートチームを創設して、これを地方に派遣しており、既に6件の事案について専門家を派遣し、幸い大きなその後の後遺症はない。今後、各消防本部において同様の体制が取れるよう、関係医療機関などとも連携を取りながら体制の充実を指導している。

山本孝史

財務大臣、お聞きのように専門家が非常に少ない。養成をそれぞれのところでやっていくが、是非財政的な援助もいただきたい。