質問主意書
質問第四六号
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
参議院議長 倉田 寛之 殿
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する質問主意書
長年の懸案であったポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に向けては、平成十三年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が成立し、端緒に付いた。しかし、最終的解決に向けてはまだまだ課題が多い。そこで、以下質問する。
一、平成十二年十一月二十八日に、「業務用・施設用蛍光灯等のPCB使用安定器の事故に関する対策について」(以下「対策について」という。)が閣議了解された。以下の点につき明らかにされたい。
1 どのような認識に基づいて「対策について」閣議了解がなされたか、明らかにされたい。
2 本対策においては、使用中の業務用・施設用蛍光灯等のPCB使用安定器については原則として平成十三年度末までにその交換を終える等の対策を講じるとされているが、各省庁ごとに、所管範囲における(1)PCB使用安定器を使用していると把握している施設数と使用台数、(2)平成十三年度末までに交換等の措置を行った施設数と台数、につきそれぞれ明らかにされたい。
3 「対策について」閣議了解に至った認識、並びに前項の結果を受けて、今後どのような措置を新たに講じ、対応を周知徹底させ、対策を終了させる考えか、具体的に明らかにされたい。
二、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」第六条においては、環境大臣は「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」を定めなければならないとしている。同法第十条においては、「事業者は、(中略)政令で定める期間内に、そのポリ塩化ビフェニル廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならない」とし、政令においてその期間を「法の施行の日(平成十三年七月十五日)から起算して十五年」以内と定めた。しかし、事業者の処分期限を先に定めておきながら、前提となるはずの国の基本計画が、いまだに作成されていない。一刻も早い計画作成が必要と思われるが、なぜいまだに作成されていないのか、その理由を明らかにされたい。また、基本計画で定めるとされている事項についての現在の進捗状況について明らかにするとともに、いつまでに基本計画を策定する用意があるか明らかにされたい。
三、厚生省(当時)の「PCB廃棄物等保管等状況調査結果」(平成十年度)によると、高圧トランス・コンデンサーについては、平成十年においては二一万九三二七台が保管されているが、その中には「未報告」や「紛失・不明」とされるものも一割ほど見られ、その当時使用中のものについても、「未確認」が九万四〇五一台あると報告されている。PCB廃棄物の適正処理に向けては、それまでの保管管理が大前提となるが、これほど多くのPCB製品、廃棄物の行方が把握できていない状況についてどのように考えているか。今後の保管・使用状況の把握の徹底、適正保管の徹底に向けた方針と併せて、明らかにされたい。
四、PCB廃棄物処理においては、高圧トランスやコンデンサーの処理には一台当たりおおむね一〇〇万円が必要であると言われている。そのため、中小企業においては大きな負担であることから、PCB廃棄物処理基金にて、早期処理を促進するための助成を行うとしている。処理負担逃れのためにPCBが不法廃棄されないためにも、相応の助成が必要と思われるが、処理費用におけるどれ程の負担率を想定しているか、明らかにされたい。
五、PCBの廃棄処理までの間は、事業者はPCB廃棄物を各事業者責任で保管していなければならない。PCB廃棄物処理施設設置に向けた動きは徐々に進んできているが、一番早いと見られる施設でも平成十六年度からの稼働である。保管期間が長くなるほどPCB廃棄物の紛失は増加しており、各事業者の負担も非常に重く、管理徹底にも限界がある。廃棄処理までの間、各事業者が個別に管理するのではなく、各事業者からPCB廃棄物を集積し、貯蔵しておく施設が確実な保管には必要との指摘もあるがどのように考えるか、見解を明らかにされたい。
六、PCB以外でも、製造中止となっている残留性有機汚染物質にDDTやアルドリン等があり、平成十三年十二月に行った埋設農薬の実態調査においては、三六八〇トンが地中に埋められたままになっていたことが明らかになった。これらの物質についても、適切な無害化処理をすべく、厳正な保管管理、処理技術の確立、処理設備の整備が不可欠であるが、どのような計画、見通しを持っているのか、具体的に明らかにされたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第四六号
内閣参質一五四第四六号
参議院議長 倉田 寛之 殿
参議院議員山本孝史君提出ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員山本孝史君提出ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する質問に対する答弁書
一の1について
業務用・施設用蛍光灯等に用いられているポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)が使用されている安定器(以下「PCB使用安定器」という。)については、昭和四十七年に製造が中止されたが、一部の施設において耐用年数を超えて使用が続けられている実態がある中で、平成十二年十月四日、八王子市内の小学校で耐用年数を超えたPCB使用安定器が破裂し、PCBを含有する絶縁油(以下「PCB絶縁油」という。)が児童の身体に付着するという事件が発生したこと等を受け、政府としては、このような事件が、国民の健康を保持するのみならず、環境汚染を防止する上で見過ごすことのできない事態であるとの認識に基づき、平成十二年十一月二十八日、「業務用・施設用蛍光灯等のPCB使用安定器の事故に関する対策について」を閣議了解したものである。
一の2について
各府省庁が管理する施設、事務所及び事業所(以下「施設等」という。)並びに各府省庁が補助金の交付等を行っている団体(地方公共団体を除く。)が管理する施設等(以下「所管施設等」という。)に関し、各府省庁ごとの平成十二年十一月二十八日時点においてPCB使用安定器を使用していた施設等数及びそのうち平成十四年三月三十一日までにすべてのPCB使用安定器の交換又は撤去(以下「交換等」という。)の措置を講じた施設等数並びに平成十二年十一月二十八日時点において使用していたPCB使用安定器数及びそのうち平成十四年三月三十一日までに交換等の措置を講じたPCB使用安定器数は、別表のとおりである。
一の3について
別表に示すとおり、所管施設等において平成十二年十一月二十八日時点で使用されていたPCB使用安定器については、平成十四年三月三十一日までに約八割について交換等の措置を講じたところであり、また、本年度末までには、おおむね交換等が終了する予定である。なお、施設の建替計画等との調整から早急な交換が困難な場合等については、脱落防止のための固定等の必要な措置を講ずることとしている。
二について
環境大臣は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成十三年法律第六十五号。以下「PCB特措法」という。)第六条の規定に基づき、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならないこととされ、基本計画には、PCB特措法第二条第一項に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の発生量、保管量及び処分量の見込み、PCB廃棄物の処理施設の整備その他PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するために必要な体制に関する事項並びにこれらの事項のほかPCB廃棄物の確実かつ適正な処理の推進に関し必要な事項を定めることとされている。
これらの事項のうち、PCB廃棄物の発生量、保管量及び処分量の見込みについては、PCB特措法第八条に基づき届け出されたPCB廃棄物の保管及び処分の状況から、推計がほぼ終了したところである。
しかし、PCB廃棄物の処理施設の整備その他PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するために必要な体制に関する事項については、現在、北九州市において環境事業団によるPCB廃棄物の処理施設の設置を進めているほか、東京都及び愛知県において関係地方公共団体から環境事業団によるPCB廃棄物の処理施設の設置の同意を得たところであるが、いまだ関係地方公共団体との調整を進めている状況にあるPCB廃棄物の処理施設もあることから、基本計画の策定には至っていない。
今後、PCB廃棄物の処理施設の整備に関する進ちょく状況等を踏まえつつ、できる限り早期に基本計画を策定してまいりたい。
三について
PCB廃棄物の保管については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第十二条の二第一項及び第二項の規定に基づき、これまでもPCB廃棄物を保管する事業者に対し適正な保管を義務付けるとともに、廃棄物処理法第十八条及び第十九条の規定等に基づき、都道府県及び保健所を設置する市(以下「都道府県等」という。)がその状況を把握してきたところであるが、御指摘のような状況があったことを踏まえ、より体系的に保管の状況を把握し、管理の徹底を図ることができるよう、PCB特措法第八条により、PCB廃棄物を保管する事業者に対し、毎年度、そのPCB廃棄物の保管及び処分の状況について届け出ることを義務付けたところである。
また、PCB絶縁油が用いられた電気工作物のうち一部については、現在も使用が続けられていることから、平成十三年十月十五日、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第百六条に基づく電気関係報告規則(昭和四十年通商産業省令第五十四号)を改正し、現在使用が続けられているPCB絶縁油が用いられた変圧器、電力用コンデンサー等の設置状況について経済産業局長への報告を義務付けたところである。
これらの制度に基づき、PCBの保管、処分及び使用の状況について体系的に把握し、その適正な管理を確保するとともに、紛失等の不適正な保管が明らかになった場合には、都道府県等において廃棄物処理法に基づく改善命令その他の必要な措置が行われるよう適切に対処してまいりたい。
四について
産業廃棄物であるPCB廃棄物については、そのPCB廃棄物を排出した事業者の責任により適正に処理されるべきものであるから、当該事業者が自ら処理するか、又は処理業者に委託して処理することが原則である。
しかしながら、PCB絶縁油が用いられた高圧トランス及び高圧コンデンサーの処理には御指摘のように多額の費用を要することから、費用負担能力の低い一部の中小企業者が、不適正な処理を行うことにより、環境中に放出されたPCBが新たな環境汚染を引き起こすことが強く懸念される。
このため、環境事業団によるPCB廃棄物の処理施設の整備に対する補助を通じて中小企業者が保管するPCB廃棄物の処理料金を引き下げさせるとともに、中小企業者が保管するPCB廃棄物の処理費用の一部に充てるために環境事業団法(昭和四十年法律第九十五号)第三十五条に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基金を設置するなどの措置を講じているところである。
これらの措置により、中小企業者の負担を軽減することとしているが、中小企業者が実際にどの程度の処理費用を負担することになるかについては、処理費用の算定に必要な全国のPCB廃棄物の処理施設の整備の費用や、環境事業団が処理を行うこととなるPCB廃棄物の量の見込み等について精査する必要があると考えている。
五について
PCB廃棄物の長期保管に伴う紛失等及び事業者の負担の増大を防止するためには、まずは、PCB廃棄物を処理できる体制を早急に整備することが必要であると考えており、このため、環境事業団によりPCB廃棄物の処理施設の整備を進める等処理体制の構築に取り組んでいるところである。なお、処理が行われるまでのPCB廃棄物については、三についてで述べたとおり、PCB特措法に基づく届出により保管状況を把握し、その適正な管理を確保することとしているところである。
なお、御指摘のPCB廃棄物を蓄積し、貯蔵するための施設の設置については、PCB廃棄物の処理施設と同様に、地域住民の理解を得なければならないことから、実現には困難が伴うことが予想されるが、特に事業者の倒産等により紛失等のおそれのあるPCB廃棄物を都道府県が中心となって地域ごとに当該施設を設置することは、望ましいものであると考えている。
六について
過去に埋設処理された残留性有機塩素系農薬については、平成十三年度及び平成十四年度において、都道府県、市町村、農業協同組合等に対し、当該農薬の埋設地点における環境の汚染状況等を調査し、当該調査の結果、環境の汚染が懸念される場合には、当該農薬を掘り出し、適切に保管するよう指導しているところである。
また、平成十二年度から残留性有機塩素系農薬を安全に処理するための有機化合物の分解に係る技術開発を進めているところであり、今後、開発された技術を基に適切に処理してまいりたい。
別表