質問主意書
質問第一〇号
社会保険庁のホームページにおける「年金額簡易試算」の誤表示に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
参議院議長 扇 千景 殿
社会保険庁のホームページにおける「年金額簡易試算」の誤表示に関する質問主意書
先般、社会保険庁のホームページにおいて、あってはならない重大なミスが発覚した。ホームページの「年金見込額試算」コーナーのうち「年金額簡易試算」において、年金を受給できないにもかかわらず相当な額の年金が受給できる、本来受給できる額の倍以上もの多額の年金が受給できるなどといった誤った年金見込額の試算が表示されていたのである。同庁は指摘を受けて、ホームページ上で謝罪し、訂正を行ったという。
この「年金額簡易試算」は、厚生労働省が、だれでも利用できることをうたい文句に、国民向けのサービスとして導入したものである。しかしながら、当該ミスにより間違った試算結果が提示されたため、老後の生活設計に役立てようとしている利用者に重大な結果をもたらしているものと思われる。
単純なプログラム・ミスが原因とも言われているが、影響は誠に深刻である。
そもそも、社会保険庁による年金支給額の計算は、受給者本人による検証が容易ではない。今回、社会保険庁の「年金額簡易試算」に単純なプログラム・ミスがあったことで、全国で約三千万人の公的年金受給者に実際に支払われている年金額が正しい額かどうか、疑念が生じている。今後、同様の事態が繰り返されることのないよう、問題が発生した経緯を明らかにする必要がある。
このような観点から、以下質問する。
一、ホームページ上の「年金見込額試算」コーナー及び「年金額簡易試算」について、責任を有する部署はどこか。
二、ホームページに「年金見込額試算」コーナー及び「年金額簡易試算」を掲載した経緯を明らかにされたい。
三、「年金額簡易試算」のプログラム(以下「当該プログラム」という。)について、その作成手順を明らかにされたい。
四、当該プログラムは内部で作成したのか、それとも外部の業者に発注したのか。業者に発注したのであれば、業者の選定はどのように行われたのか。また、当該業者の受注実績とプログラム作成に要した日数及び費用について回答されたい。
五、当該プログラムは、導入されてから数年にわたって、欠陥に気付かないままホームページ上で公開され続け、外部からの指摘によって初めて誤表示が発覚したといわれている。
当該プログラムは、いつからホームページの利用者に供されているのか。訂正されるまでの期間と、その間の利用者数も併せて明らかにされたい。
六、当該プログラムに対する社会保険庁内部での検証作業は、どのようなものだったのか。また、なぜ、外部からの指摘を受けるまで、気が付かなかったのか、その原因を明らかにされたい。
七、当該プログラムを業者に発注したものである場合、当該業者に対し他に発注したプログラムはあるのか。その場合、プログラムの検証は徹底的に行われているのか。
八、老後の生活設計において、公的年金は極めて重要な収入源である。社会保険庁のホームページにある「年金額簡易試算」サービスを利用して、老後の生活設計を立てていた者にとって、誤った年金見込額が表示されていたことは、老後の生活設計を揺るがしかねない危険性がある。
この問題に対する政府の認識と対応を示されたい。
九、「年金額簡易試算」のプログラム・ミスに関し、社会保険庁は、ホームページ上で誤りを明らかにして謝罪を行っている。しかしながら、この「誤りに対するお詫び」は「年金見込額試算」コーナーのページとは異なり、社会保険庁のトップページからのみリンクされているため、これまでの利用者が「年金見込額試算」コーナーのページにブックマークを付したりリンクを張っていたりすると、年金額の表示に誤りがあったことに気が付かない可能性が高い。
これまでの利用者に対する注意を喚起するのであれば、「年金見込額試算」コーナーのページにこそ掲載されてしかるべきではないかと考えるが、社会保険庁の対応を示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第一〇号
内閣参質一六〇第一〇号
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員山本孝史君提出社会保険庁のホームページにおける「年金額簡易試算」の誤表示に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員山本孝史君提出社会保険庁のホームページにおける「年金額簡易試算」の誤表示に関する質問に対する答弁書
一について
社会保険庁のホームページに掲載している「年金見込額試算」のコーナー及び「年金額簡易試算」の内容について、責任を有する部署は、社会保険庁社会保険業務センター中央年金相談室である。
二について
公的年金制度に対する理解の促進と年金相談サービスの向上を図ることを目的として、平成十四年四月三十日から「年金額簡易試算」を社会保険庁のホームページに掲載し、平成十六年一月十三日から「年金見込額試算申込」を掲載し、双方を合わせて「年金見込額試算」のコーナーとしたものである。
三について
「年金額簡易試算」のプログラムの作成については、社会保険庁のホームページの運営を委託している事業者(以下「委託事業者」という。)にその作成を委託し、社会保険庁の指示に基づき、当該委託事業者が仕様及びプログラムの作成並びにプログラムを検証するための試験を行い、納品後においてプログラムの内容が指示どおりであるかどうかを社会保険庁において検証したものである。
四について
「年金額簡易試算」のプログラムの作成は、三についてで述べたとおり、委託事業者に委託したものである。「年金額簡易試算」をインターネット上に開設するに当たっては、既に開設されていた社会保険庁のホームページを拡張する方法を用いることが効率的であったところ、当該委託事業者は、社会保険庁のホームページの前身である年金ホームページの企画及び作成を行った実績もあることから、作成を短期間で行うことができ、かつ内容の正確性の確保の観点からも十分信頼できる業者として選定したものである。また、当該委託事業者の社会保険庁からの受注実績については、「雇用保険法等の改正に伴う経過措置にかかる対応について等のシステム設計業務」、「農林年金の厚生年金統合にかかる追加開発等のシステム設計業務」等の受注実績を有している。また、「年金額簡易試算」のプログラムの作成に要した日数は、百六十二日であり、費用は五百二十五万円である。
五について
「年金額簡易試算」は、平成十四年四月三十日から社会保険庁のホームページに掲載しているところである。これを訂正するまでの期間は、「年金額簡易試算」の掲載を開始した平成十四年四月三十日から平成十六年七月七日までの間である。この間の利用者数(「年金額簡易試算」へのアクセス件数)は、二百五十六万七千三十四件である。
六について
「年金額簡易試算」のプログラムの検証作業については、テストデータの入力に基づき試算結果及び動作状況について確認を行い、試算結果に誤りがないことを確認していたが、作業の途上で、社会保険庁において「年金額簡易試算」の入力画面における国民年金の加入期間に係る入力指示内容の記述に誤った修正を行ってしまったにもかかわらず、修正後の入力指示内容の記述と当該プログラムとの突合及び確認を怠り、国民年金の保険料免除期間がある方の年金額簡易試算に誤りが生じることとなったが、これを改善する機会を逸した結果、外部から指摘されるまで対応が遅れたものである。
七について
「年金額簡易試算」のプログラムは、三についてで述べたとおり、委託事業者へ発注して作成したものである。
また、当該プログラム以外にも「雇用保険法等の改正に伴う経過措置にかかる対応について等のシステム設計業務」、「農林年金の厚生年金統合にかかる追加開発等のシステム設計業務」等を当該委託事業者に発注しているところであり、これらのプログラムについても、納品後において内容が社会保険庁が作成した基本計画書の内容どおりであるかどうかについて社会保険庁において適切に検証を行っている。
八について
公的年金制度は高齢期の生活の基本的な部分を支えるものであることから、誤った試算結果を表示したことは誠に遺憾であると考えており、社会保険庁においては、外部から指摘のあった当日に入力指示内容の記述を訂正するとともに、おわびを社会保険庁のホームページに掲載したところである。今後とも、関係職員に対し、職務の遂行に際し遺漏のないよう徹底していくことにより、再発防止に努めるとともに適正な事業運営に努めてまいりたい。
九について
「誤りに対するお詫び」は、社会保険庁のホームページのトップページのトピックスに掲載することが、最も広く周知できる方法であると判断したものであるが、御指摘の方法も含めて、更に利用しやすいホームページの作成に努めてまいりたい。