質問主意書
質問第一六号
社会保険庁予算の開示の在り方に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
参議院議長 扇 千景 殿
社会保険庁予算の開示の在り方に関する質問主意書
社会保険庁による保険料の流用問題が大きく報道されている。
社会保険事務費は、本来的に、年金・健康保険の徴収・給付事務に要する費用として計上されているはずである。しかるに、社会保険庁長官の交際費、職員用ゴルフ練習場のクラブ・ボール購入費、職員宿舎の建設費、公用車の購入費、マッサージ器の購入費などへ支出していたことが次々と発覚した。
社会保険庁による社会保険料のずさんな運用・管理を許してきた背景の一つには、社会保険庁としての予算が外部に対して明瞭に開示されてこなかったことがあると思われる。一般会計の予算書を見ると、厚生労働省所管の組織の中に社会保険庁が挙げられていないのである。一般会計の予算書は、組織別事項別内訳として、「組織」「項」「事項」の順に分類され、それぞれの事項に予算額が計上されているが、社会保険庁については、一組織としての予算が明示されず、厚生労働省の予算の中に組み込まれ、表に出てこない仕組みになっている。同じ徴収官庁である国税庁を始め、文化庁、特別会計を有する林野庁などは、一般会計の予算書に一組織として掲載されている。他庁における予算開示の状況と比較すれば、これだけでも社会保険庁予算が透明性に欠けることは明らかであり、その「闇」の深さを感じさせる。
社会保険庁の運営・管理に関する情報を開示し、透明性を確保することは、組織を健全化させ、国民の信頼を回復する上での基本的な前提条件である。広く国民に批判を求めうる環境を整備することによって、職員の意識変革が促され、事業の効率化、質の向上につながっていくことが期待される。したがって、社会保険庁の予算を明らかにすることは、野放図な社会保険料の流用を防止し、社会保険庁の健全化に向けた取組を推進する上で、極めて重要な課題である。
このような観点から、以下質問する。
一、一般会計の予算書上、社会保険庁については、一組織としての予算が明示されていない。その理由は何か。
二、一般会計、特別会計及び各勘定間の繰入・受入など、社会保険庁予算の仕組みについて分かりやすく説明されたい。
三、平成十六年度予算において、厚生保険特別会計の業務勘定では、八百二十九億九千六百七十三万五千円を一般会計より受け入れ、業務取扱費財源に回しているが、業務取扱費の額としては、千五百二十九億九千六百万五千円を計上している。この差額は何を財源に埋めているのか。
同様に、国民年金特別会計の業務勘定では、七百十億二百三十二万八千円を一般会計より受け入れ、業務取扱費財源に回しているが、業務取扱費の額としては、千四百九億八千二百四十六万九千円を計上している。この差額は何を財源に埋めているのか。
四、平成十六年度予算における社会保険庁の人件費はいくらか。
五、平成十六年度予算における社会保険庁の事務費はいくらか。
六、平成十六年度予算における社会保険庁の施設整備費はいくらか。
七、人件費、事務費等の社会保険庁自体を運営するための経費は、厚生保険特別会計の業務勘定、国民年金特別会計の業務勘定及び船員保険特別会計の三つに計上された額を合算したものであるという理解でよいか。
八、社会保険庁自体を運営するための経費は、どのような積算根拠によって計上され、その内訳はどのようになっているのか。少なくとも人件費、事務費、施設整備費等経費のそれぞれについて、その積算根拠と支出内容が把握できるように、予算書の書き方を工夫すべきであると考えるが、どうか。
九、平成十六年度厚生労働省所管特別会計歳入歳出予定額各目明細書における厚生保険特別会計及び国民年金特別会計の業務勘定並びに船員保険特別会計に計上された歳出予算額について、「項」「事項」「目の区分」の分類ごとに、保険料を財源とするものと税金を財源とするものに分けて示されたい。
十、社会保険庁の事務費を一般会計で賄うことが検討されているが、そうなれば、なおさら一般会計に組織として明示する必要が出てくると思われる。この問題に対する政府の今後の対応を示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第一六号
内閣参質一六〇第一六号
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員山本孝史君提出社会保険庁予算の開示の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員山本孝史君提出社会保険庁予算の開示の在り方に関する質問に対する答弁書
一について
財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十三条第二項においては、「国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。」とされており、社会保険庁における歳入・歳出予算はすべて、厚生年金保険等の特定の事業を行うためのものであり、厚生保険特別会計(ただし児童手当勘定を除く。以下同じ。)、国民年金特別会計及び船員保険特別会計に区分して計上されているため、一般会計予算書には一組織としての予算が記載されていない。
二について
社会保険庁の事業のうち、政府管掌健康保険事業及び厚生年金保険事業等に係る予算は厚生保険特別会計に、国民年金事業に係る予算は国民年金特別会計に、船員保険事業に係る予算は船員保険特別会計に、それぞれ計上されているところであり、各特別会計の各勘定間の繰入れ・受入れなどについては、別表第一のとおりである。
三について
平成十六年度予算において、厚生保険特別会計業務勘定(項)業務取扱費に充てている財源のうち一般会計からの受入額以外のお尋ねの財源については、政府管掌健康保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、前年度剰余金等である。
また、平成十六年度予算において、国民年金特別会計業務勘定(項)業務取扱費に充てている財源のうち一般会計からの受入額以外のお尋ねの財源については、国民年金保険料、前年度剰余金等である。
四から六までについて
お尋ねの「平成十六年度予算における社会保険庁の人件費」とは、平成十六年度特別会計予算書の「コード番号について」の「(ハ)使途別分類」で「1 人件費」に分類されている厚生保険特別会計業務勘定(項)業務取扱費の(目)職員基本給、(目)職員諸手当、(目)超過勤務手当、(目)休職者給与、(目)公務災害補償費、(目)退職手当、(目)児童手当及び国民年金特別会計業務勘定(項)業務取扱費の(目)職員基本給、(目)職員諸手当、(目)超過勤務手当、(目)非常勤職員手当、(目)休職者給与、(目)公務災害補償費、(目)退職手当、(目)児童手当並びに船員保険特別会計(項)業務取扱費の(目)職員基本給、(目)職員諸手当、(目)超過勤務手当、(目)退職手当、(目)児童手当を指すものと考えるが、これらの予算額の合計額は、千二百八十五億二千百八十九万八千円である。
お尋ねの「平成十六年度予算における社会保険庁の施設整備費」とは、厚生保険特別会計業務勘定(項)施設整備費及び国民年金特別会計業務勘定(項)施設整備費を指すものと考えるが、これらの予算額の合計は、四十二億七千四百二十四万円である。なお、この他に施設整備費には、厚生保険特別会計業務勘定(項)福祉施設事業費の(目)健康保険医療施設等整備費、(目)厚生年金病院施設整備費、(目)厚生年金会館等施設整備費及び(目)年金相談施設整備費、国民年金特別会計業務勘定(項)福祉施設費の(目)福祉施設整備費及び(目)年金相談施設整備費並びに船員保険特別会計(項)福祉事業費の(目)福祉施設整備費があり、その平成十六年度予算額の合計は、二百四十三億五千九百九十九万七千円である。
お尋ねの「平成十六年度予算における社会保険庁の事務費」とは、厚生保険特別会計業務勘定(項)業務取扱費及び(項)施設整備費、国民年金特別会計業務勘定(項)業務取扱費及び(項)施設整備費並びに船員保険特別会計(項)業務取扱費を指すものと考えるが、これらの予算額の合計は、右に述べた社会保険庁の人件費千二百八十五億二千百八十九万八千円及び社会保険庁の施設整備費四十二億七千四百二十四万円を含め、三千三億千五百六万六千円である。
七について
お尋ねの「社会保険庁自体を運営するための経費」とは、社会保険庁が所掌する厚生年金保険事業、健康保険事業、国民年金事業及び船員保険事業等の事務の執行に要する費用を指すものと考えるが、これは、厚生保険特別会計業務勘定(項)業務取扱費及び(項)施設整備費、国民年金特別会計業務勘定(項)業務取扱費及び(項)施設整備費並びに船員保険特別会計業務取扱費に計上された額を合算したものである。
八について
お尋ねの「社会保険庁自体を運営するための経費」とは、七についてでお答えしたものを指すものと考えるが、平成十六年度厚生労働省所管特別会計歳入歳出予定額各目明細書(以下「各目明細書」という。)の厚生保険特別会計業務勘定(項)業務取扱費等の積算内訳欄等に、例えば、職員基本給について俸給表の種類別の職員の人数を示すなど、その積算内訳を記載しているところである。
九について
厚生保険特別会計法(昭和十九年法律第十号)等においては、各勘定等における歳入・歳出の種類を規定しており、「目の区分」ごとに財源を定めているわけではないが、お尋ねの各目明細書の歳出の「目の区分」について、平成十六年度予算におけるこれらの特別会計の財源充当の考え方に基づき、お尋ねの財源区分をお示しすれば別表第二のとおりである。
十について
お尋ねの「社会保険庁の事務費を一般会計で賄うことが検討されている」とは、平成十七年度以降の年金事業の事務の執行に要する費用の取扱いを指すものと考えるが、一についてでお答えしたとおり、社会保険庁における歳入・歳出予算はすべて特別会計に計上されるものであることから、いずれにしても一般会計予算書に組織としての予算を明示する必要はないものと考えている。
なお、平成十七年度以降の年金事業の事務の執行に要する費用の取扱いについては、予算編成の過程において十分検討することとしている。