質問主意書

質問第八五号
臓器移植法の運用と臓器移植の展望に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

平成十八年六月十五日 山本 孝史

 参議院議長 扇 千景 殿


臓器移植法の運用と臓器移植の展望に関する質問主意書

 「臓器の移植に関する法律」(以下「臓器移植法」という。)が平成九年十月十六日に施行され、まもなく九年が経過しようとしている。臓器移植法は、臓器 提供に関する本人意思の尊重を第一の基本的理念としている。そこで、本人の意思表示に基づいて、臓器摘出の要件としての脳死判定(法的脳死判定)を経なけ れば、脳死下での臓器移植は行うことができないことになっている。そのため、臓器移植の実施例が増えないとか、小児に対する移植術の妨げとなっているなど の批判もなされている。
 しかし、我が国において、臓器移植がなかなか普及、定着しないのは、現行法を支える本人意思の尊重という考え方に問題があるからであろうか。
 そもそも臓器移植法は、その成立過程において、事実上、二度にわたる修正が行われている。旧法案に対する提出者自身による衆議院修正と、新法案に対する 参議院修正である。いずれも本人の意思表示を前提とすることで、臓器移植に関する議論を少しでも前進させようとするものであった。
 当時の国会審議に関わった者の理解としては、臓器摘出の要件としての脳死判定を本人及び家族の同意がある場合に限るなど、脳死下の臓器移植の要件が厳しくなっているのは、移植医療に対する国民の信頼を醸成し、確保するためであったはずである。
 その前提条件を安易に撤廃してしまうと、元も子もなくなるおそれがあるのでないか。
 我が国において、臓器移植がなかなか普及、定着しない真の原因は何か。
 臓器移植法の施行状況を踏まえて、臓器移植の実態を明らかにし、事実に基づいて慎重に検討を行い、冷静な議論を尽くすことが重要である。
 このような観点から、以下質問する。

一、移植希望登録者数について

 臓器移植法施行後の移植希望登録者数の年別推移とこれまでの累計を、移植対象臓器ごとに明らかにされたい。

二、法的脳死判定の実施件数、認定件数と臨床的脳死状態の発生件数について

  1. 臓器移植法施行後における法的脳死判定の実施件数と認定件数のそれぞれについて、これまでの年別推移と累計を明らかにされたい。
  2. 政府は、臨床的脳死状態の発生件数を把握しているのか。把握できているのであれば、臓器移植法施行後において、臨床的脳死状態の発生件数の年別推移と これまでの累計を明らかにされたい。また、臨床的脳死状態の発生件数を把握していないのであれば、その理由と我が国における臨床的脳死状態の発生件数の推 計を示されたい。

三、臨床的脳死状態の発生件数若しくはその推計値と法的脳死判定の件数との乖離について

  1. 臨床的脳死状態の発生件数のうち、患者の臓器提供意思表示カード若しくはそのシールの所持・不所持の件数とその割合が分かれば示されたい。分からなければ、その推計を示されたい。
  2. 臨床的脳死状態の発生件数のうち、臓器提供施設としての必要な体制を備えている施設において、臨床的脳死状態が発生した件数、又は臨床的脳死状態の患 者が当該施設に搬送された件数はどれだけか。臨床的脳死状態の発生件数の総数が分かれば、そのうちの割合についても示されたい。
  3. 臓器提供施設としての必要な体制を備えている施設において、臨床的脳死状態にある患者で臓器提供意思表示カード若しくはそのシールを所持していた者の うち、臓器提供に係る本人の意思表示が同意・不同意であった者の数とその割合を示されたい。また、家族の意思表示が同意・不同意であった者の数とその割合 について示されたい。家族の意思表示全体の数字とともに、本人の同意・不同意の別にも示されたい。

四、法的脳死判定等の実施状況について

  1. 法的脳死判定がこれまでどのような医療施設において実施されてきたのか、実施したすべての施設名を明らかにされたい。また、大学付属病院、日本救急医 学会の指導指定施設、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設又は救命救急センターとして認定された施設の別ごとに、これまでの年別推移と累計を示されたい。
  2. 法的脳死判定が実施された日について、これまでのすべての事例の日付と曜日を示されたい。また、実施日を曜日ごとに集計して示されたい。実施日が休日であれば、その旨を記載されたい。
  3. 臓器の摘出が実施された日についても、これまでのすべての事例の日付と曜日を示されたい。また、実施日を曜日ごとに集計して示されたい。実施日が休日であれば、その旨を記載されたい。

五、臓器提供施設について

 臓器提供施設として、厚生労働省のガイドラインの条件をすべて満たしている施設の数の推移と、臓器提供施設としての必要な体制を整えている施設の数の推移を示されたい。また、その乖離は、どのような理由から生じているのか、明らかにされたい。

六、移植実施施設について

 移植実施施設として、移植関係学会合同委員会において選定された施設の数の推移について、移植臓器ごとに示されたい。

七、臓器提供意思表示カード等の普及について

  1. 臓器提供意思表示カード、医療保険の被保険者証に添付することができる臓器提供意思表示シール及び運転免許証に添付することができる臓器提供意思表示シールのそれぞれについて、これまでの配付枚数の推移と累計を示されたい。
  2. 臓器提供意思表示カード等の配付に際しては、添付される説明書において、少なくとも、①脳死とはいかなる状態であるかということ、②脳死状態の患者に は自動運動、脊髄反射、ラザロ徴候があり、臓器摘出時に血圧の上昇が認められること、③臓器の摘出に際して、臓器提供者に麻酔・筋弛緩薬・モルヒネを使用 すること、④脳死下の臓器提供においては、本人の意思表示と家族の承諾が必要であること、⑤心臓停止後の臓器提供(腎臓と眼球)に関しては、拒否の意思表 示をしていない限り家族の承諾があれば提供できること、⑥臓器提供者は臓器の移植を受ける者を指定することはできないこと、⑦臓器提供に関する意思表示 は、いつでも任意に撤回できること等の事項について、分かりやすい説明がなされていることが望ましい。現行の説明書について、これらの事項についての記載 の有無と、記載されているのであれば、どのような記載がなされているのかを明らかにされたい。

八、移植結果について

 臓器移植法の施行後に実施された心臓、肺、肝臓、腎臓及び小腸の移植に関して、移植術を受けた患者のうち生存している者の割合を示す生存率と、移植術を 受けた患者のうち移植された臓器が免疫反応による拒絶反応や機能不全に陥ることなく体内で機能している者の割合を示す生着率について、それぞれ一年経過 後、二年経過後、三年経過後、四年経過後及び五年経過後の数値を明らかにされたい。

九、脳死下の臓器提供事例に係る検証について

  1. 脳死下での臓器提供事例について、検証の結果が報告書に取りまとめられ、公表されている事例をすべて示されたい。また、一般市民による閲覧方法を明らかにされたい。
  2. 検証結果が公表されていない事例が数例あると承知しているが、その理由を事例ごとに明らかにされたい。

十、教育用普及啓発パンフレットについて

 厚生労働省が全国の中学校等に送付している教育用普及啓発パンフレットや臓器移植ネットワークが作成している臓器提供意思表示カード等の説明文書におい て、人の死と脳死の関係、脳死と臓器移植との関係は、それぞれどのように説明されているのか。脳死を人の死と認めない考え方については、どのように記述さ れているのかを明らかにされたい。

十一、「脳死は人の死」とする医療関係者が四割にも満たないことについて

 平成十八年四月二十六日に開催された厚生労働省の臓器移植委員会において、研究班による調査結果が報告されている。それによると、臓器提供を扱う医療機 関の医療スタッフのうち、脳死による死の判定を妥当と肯定する者は三十パーセント台にとどまっていることが明らかとなった。この調査の対象(どのような医 療施設、職種)と対象者の数、主な設問と回答の結果について、紹介されたい。また、この結果について、政府はどのように受け止めているのか、明らかにされ たい。

十二、日本人の死生観と臓器移植の展望について

 臓器提供意思表示カード等を大量に配布しているにもかかわらず臓器の提供者が増えないこと、臓器提供を扱う医療機関の医療スタッフでさえ、脳死による死 の判定が受け入れられていない事実などから、我が国においては、脳死下の臓器移植による移植医療が本当に受け入れられるのか、という根本的な問題が横た わっているように思われる。脳死下の臓器移植は、日本人の死生観とは調和的ではないのではないか、との疑いを持つ所以である。
 政府は、これまでの施策によって脳死下の臓器移植が進まなかったことについて、どのように評価しているのか、その総括を示されたい。また、脳死と臓器移植に関する日本人の意識について、どのように理解しているのかを明らかにされたい。

十三、臨床的脳死状態及び法的脳死状態における加害行為の法的評価について

  1. 臨床的脳死状態にある者から、適正な法的脳死判定を経ずに、臓器を摘出した場合の法的評価について、政府の見解を示されたい。
  2. 適正な法的脳死判定を経ていない臨床的脳死状態にある者に対して、致命的な加害行為を行った場合の法的評価について、政府の見解を示されたい。
  3. 適正な法的脳死判定を経た者に対して、移植のための臓器の摘出以外の致命的な加害行為を行った場合の法的評価について、政府の見解を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第八五号
 内閣参質一六四第八五号

平成十八年六月二十二日 内閣総理大臣 小泉 純一郎

 参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員山本孝史君提出臓器移植法の運用と臓器移植の展望に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


参議院議員山本孝史君提出臓器移植法の運用と臓器移植の展望に関する質問に対する答弁書

一及び七の1について

 お尋ねの臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号。以下「臓器移植法」という。)の施行後の移植対象臓器ごとの移植希望登録者数の年別推移につい ては、平成十年六月十八日の第百四十二回国会参議院国民福祉委員会、平成十一年七月十三日の第百四十五回国会参議院国民福祉委員会、平成十二年八月九日の 第百四十九回国会参議院国民福祉委員会、平成十三年六月二十六日の第百五十一回国会参議院厚生労働委員会、平成十四年十月二十九日の第百五十五回国会参議 院厚生労働委員会、平成十五年七月十七日の第百五十六回国会参議院厚生労働委員会、平成十六年十月二十八日の第百六十一回国会参議院厚生労働委員会及び平 成十七年十月二十日の第百六十三回国会参議院厚生労働委員会において報告しているとおりである。
 また、これまでの移植対象臓器ごとの移植希望登録者数の累計並びに臓器提供意思表示カード及び医療保険の被保険者証や運転免許証等に添付することができ る臓器提供意思表示シールの配布枚数の年別推移及び累計については、臓器移植法第十二条に基づく臓器のあっせんの許可を受けている社団法人日本臓器移植 ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)のホームページに掲載されているとおりである。

二の1について

 臓器移植法施行後における臓器移植法に基づく脳死の判定の実施件数は、平成九年零件、平成十年零件、平成十一年四件、平成十二年六件、平成十三年八件、 平成十四年六件、平成十五年三件、平成十六年五件、平成十七年九件及び平成十八年(六月十六日現在)六件で、累計四十七件であり、いずれも脳死と判定され ている。

二の2について

 臨床的脳死状態の診断は、一般的に行われている医療行為であり、そのことについて報告を求めていないため、臨床的脳死状態の発生件数については、把握し ていない。なお、臨床的脳死状態の発生件数については、年間死亡者数の約一・○パーセントとするもの、約○・六パーセントとするもの、約○・四パーセント とするもの等様々な調査研究があるものと承知している。

三の1について

 二の2についてで述べたとおり、臨床的脳死状態の発生件数について把握していないため、そのうちの臓器提供意思表示カード又はシールの所持・不所持の件 数及び割合についても把握しておらず、推計を行うことも困難である。なお、平成十六年八月に内閣府が実施した「臓器移植に関する世論調査」によると、臓器 提供意思表示カードを「持っている」とする者の割合は十・五パーセント、臓器提供意思表示シールを「知っていた」と答えた者のうち、運転免許証等に「はっ ている」と答えた者の割合は七・九パーセントであった。

三の2について

 臓器提供施設としての必要な体制を備えている施設において、臨床的脳死状態が発生した件数等については、把握していない。

三の3について

 臓器提供施設としての必要な体制を備えている施設において、臨床的脳死状態にある患者で臓器提供意思表示カード又はそのシールを所持していた者のうち、 臓器提供に係る本人の意思表示が同意・不同意であった者、また、その家族の意思表示が同意・不同意であった者の数等については、把握していない。

四の1について

 第一例目から第四例目までの臓器移植法に基づく脳死の判定が行われた施設の名称については、公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会(以下「臓器 移植専門委員会」という。)が平成十一年六月二十九日にまとめた「臓器移植法に基づく脳死下での臓器移植事例に係る検証に関する中間報告書」又は臓器移植 専門委員会が同年十月二十七日にまとめた「臓器移植法に基づく脳死下での臓器提供事例に係る検証に関する最終報告書」で公表されているとおりであり、第五 例目以降の臓器移植法に基づく脳死の判定が行われた施設のうち臓器提供者の遺族から公表の同意が得られた施設の名称については、ネットワークのホームペー ジに掲載されているとおりである。
 また、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の制定について」(平成九年十月八日付け健医発第一三二九号厚生省保健医療局長通 知。以下「ガイドライン」という。)に定める施設類型別の臓器移植法に基づく脳死の判定件数の年別推移と累計は、次のとおりである。
 大学附属病院については、平成十一年一件、平成十二年三件、平成十三年四件、平成十四年四件、平成十五年零件、平成十六年三件、平成十七年四件及び平成十八年(六月十六日現在)三件、累計で二十二件である。
 日本救急医学会の指導医指定施設については、平成十一年二件、平成十二年三件、平成十三年五件、平成十四年三件、平成十五年零件、平成十六年一件、平成十七年三件及び平成十八年(六月十六日現在)四件、累計で二十一件である。
 日本脳神経外科学会の専門医訓練施設(A項)については、平成十一年一件、平成十二年五件、平成十三年八件、平成十四年六件、平成十五年三件、平成十六年四件、平成十七年七件及び平成十八年(六月十六日現在)六件、累計で四十件である。
 救命救急センターとして認定された施設については、平成十一年三件、平成十二年四件、平成十三年七件、平成十四年五件、平成十五年三件、平成十六年二件、平成十七年五件及び平成十八年(六月十六日現在)四件、累計で三十三件である。

四の2について

 臓器移植法に基づく脳死の判定が実施された日は、第一例目は平成十一年二月二十八日(日)、第二例目は平成十一年五月十二日(水)、第三例目は平成十一 年六月十三日(日)、第四例目は平成十一年六月二十四日(木)、第五例目は平成十二年三月二十八日(火)、第六例目は平成十二年四月十五日(土)、第七例 目は平成十二年四月二十五日(火)、第八例目は平成十二年六月七日(水)、第九例目は平成十二年七月八日(土)、第十例目は平成十二年十一月四日(土)、 第十一例目は平成十三年一月八日(月)、第十二例目は平成十三年一月二十日(土)、第十三例目は平成十三年二月二十六日(月)、第十四例目は平成十三年三 月十九日(月)、第十五例目は平成十三年七月一日(日)、第十六例目は平成十三年七月二十六日(木)、第十七例目は平成十三年八月十六日(木)、第十八例 目は平成十三年十一月二日(金)、第十九例目は平成十四年一月二日(水)、第二十例目は平成十四年四月十四日(日)、第二十一例目は平成十四年八月二十九 日(木)、第二十二例目は平成十四年十一月十日(日)、第二十三例目は平成十四年十一月十二日(火)、第二十四例目は平成十四年十二月三十日(月)、第二 十五例目は平成十五年九月十一日(木)、第二十六例目は平成十五年十月六日(月)、第二十七例目は平成十五年十月十八日(土)、第二十八例目は平成十六年 二月五日(木)、第二十九例目は平成十六年二月五日(木)、第三十例目は平成十六年五月二十日(木)、第三十一例目は平成十六年七月五日(月)、第三十二 例目は平成十六年十一月二十日(土)、第三十三例目は平成十七年二月十四日(月)、第三十四例目は平成十七年二月十五日(火)、第三十五例目は平成十七年 二月二十三日(水)、第三十六例目は平成十七年三月八日(火)、第三十七例目は平成十七年三月十六日(水)、第三十八例目は平成十七年八月二十一日 (日)、第三十九例目は平成十七年九月二日(金)、第四十例目は平成十七年十月十三日(木)、第四十一例目は平成十七年十一月二十六日(土)、第四十二例 目は平成十八年一月二十五日(水)、第四十三例目は平成十八年三月二十日(月)、第四十四例目は平成十八年三月二十五日(土)、第四十五例目は平成十八年 三月二十六日(日)、第四十六例目は平成十八年五月二十五日(木)及び第四十七例目は平成十八年六月十六日(金)である。
 お尋ねの曜日ごとの集計結果については、日曜日は七件、月曜日は八件(うち休日一件)、火曜日は五件、水曜日は六件、木曜日は十件、金曜日は三件及び土曜日は八件である。

四の3について

 臓器の摘出が実施された日付については、ネットワークのホームページの「脳死での臓器提供」という項目に掲載されているとおりである。
 臓器の摘出が実施された曜日については、日曜日は第一例目、第六例目、第九例目、第十一例目、第十四例目、第十九例目、第二十六例目及び第四十四例目で 累計八件、月曜日は第三例目、第十例目、第十二例目、第十三例目、第二十一例目、第二十三例目、第三十例目及び第三十七例目で累計八件(うち休日一件)、 火曜日は第七例目、第二十五例目、第三十二例目及び第四十二例目で累計四件(うち休日一件)、水曜日は第二例目、第五例目、第十八例目、第二十二例目、第 三十三例目から第三十六例目まで及び第四十一例目で累計九件、木曜日は第四例目、第十五例目及び第二十七例目から第二十九例目までで累計五件、金曜日は第 十六例目、第二十例目、第二十四例目、第三十八例目、第三十九例目、第四十五例目及び第四十六例目で累計七件並びに土曜日は第八例目、第十七例目、第三十 一例目、第四十例目及び第四十三例目で累計五件(うち休日一件)である。

五について

 臓器提供施設として厚生労働省のガイドラインの条件をすべて満たしている施設と臓器提供施設としての必要な体制を整えている施設とは同じ施設を意味する ものと考えており、それらの施設数の乖離のお尋ねについてお答えすることは困難であるが、施設数の推移については、平成十一年七月十三日の第百四十五回国 会参議院国民福祉委員会、平成十二年八月九日の第百四十九回国会参議院国民福祉委員会、平成十三年六月二十六日の第百五十一回国会参議院厚生労働委員会、 平成十四年十月二十九日の第百五十五回国会参議院厚生労働委員会、平成十五年七月十七日の第百五十六回国会参議院厚生労働委員会、平成十六年十月二十八日 の第百六十一回国会参議院厚生労働委員会及び平成十七年十月二十日の第百六十三回国会参議院厚生労働委員会において、報告しているとおりである。

六について

 移植実施施設として移植関係学会合同委員会において選定された施設の移植対象臓器ごとの施設数の年別推移については、平成十一年七月十三日の第百四十五 回国会参議院国民福祉委員会、平成十二年八月九日の第百四十九回国会参議院国民福祉委員会、平成十三年六月二十六日の第百五十一回国会参議院厚生労働委員 会、平成十四年十月二十九日の第百五十五回国会参議院厚生労働委員会、平成十五年七月十七日の第百五十六回国会参議院厚生労働委員会、平成十六年十月二十 八日の第百六十一回国会参議院厚生労働委員会及び平成十七年十月二十日の第百六十三回国会参議院厚生労働委員会において、報告しているとおりである。

七の2について

 ①のお尋ねについては、説明書においては、「脳全体の働きが無くなり、人工呼吸器などの助けがなければ亡くなってしまう状態です。」等と記載されているとともに、「正常な脳」、「全脳死」及び「植物状態の一例」の図が記載されている。
 ②及び③のお尋ねについては、説明書に記載はない。
 ④のお尋ねについては、説明書においては、「あなたの意思が必要です。」等と記載されており、「家族の意思決定」という項目の中で「移植コーディネーターから説明を受けた後、十分に話し合いをして臓器を提供するかどうかを家族の総意として決めます。」と記載されている。
 ⑤のお尋ねについては、説明書においては、「家族の意思決定」という項目の中で「移植コーディネーターから説明を受けた後、十分に話し合いをして臓器を 提供するかどうかを家族の総意として決めます。」と説明されているとともに、「心臓停止後に、腎臓や眼球を提供する場合には本人の書面による意思も法的脳 死判定も必要ありません。」と記載されている。
 ⑥のお尋ねについては、説明書においては、「提供される臓器が最も適した患者(レシピエント)に移植されるように医学的な基準が作られており、コンピュータによって公平に選ばれます。」と記載されている。
 ⑦のお尋ねについては、説明書においては、「カードもシールも気持ちが変わったらいつでも書き直しができます。」と記載されている。

八について

 心臓、肺、肝臓及び小腸については平成十七年末、腎臓については平成十六年末までに、移植術を受けた患者のうち生存している者の割合を示す生存率は、心 臓については一年経過後が九十六・六パーセント、二年経過後が九十六・六パーセント、三年経過後が九十六・六パーセント、四年経過後が九十六・六パーセン ト、五年経過後が八十九・一パーセント、肺については一年経過後が七十四・六パーセント、二年経過後が七十四・六パーセント、三年経過後が六十八・三パー セント、四年経過後が六十八・三パーセント、五年経過後が五十八・六パーセント、肝臓については一年経過後が七十六・五パーセント、二年経過後が七十六・ 五パーセント、三年経過後が七十六・五パーセント、四年経過後が七十二・○パーセント、五年経過後が七十二・○パーセント、腎臓については一年経過後が九 十四・八パーセント、二年経過後が九十三・一パーセント、三年経過後が九十一・四パーセント、四年経過後が八十九・八パーセント、五年経過後が八十九・一 パーセント、小腸については一年経過後が○・○パーセントである。
 また、心臓、肺、肝臓及び小腸については平成十七年末、腎臓については平成十六年末までに、移植術を受けた患者のうち移植された臓器が免疫反応による拒 絶反応や機能不全に陥ることなく体内で機能している者の割合を示す生着率は、心臓については一年経過後が九十六・六パーセント、二年経過後が九十六・六 パーセント、三年経過後が九十六・六パーセント、四年経過後が九十六・六パーセント、五年経過後が八十九・一パーセント、肺については一年経過後が七十 四・六パーセント、二年経過後が七十四・六パーセント、三年経過後が六十八・三パーセント、四年経過後が六十八・三パーセント、五年経過後が五十八・六 パーセント、肝臓については一年経過後が七十六・五パーセント、二年経過後が七十六・五パーセント、三年経過後が七十六・五パーセント、四年経過後が七十 二・○パーセント、五年経過後が七十二・○パーセント、腎臓については一年経過後が八十五・三パーセント、二年経過後が八十一・六パーセント、三年経過後 が七十八・一パーセント、四年経過後が七十四・七パーセント、五年経過後が七十・九パーセント、小腸については一年経過後が○・○パーセントである。

九の1について

 脳死下での臓器提供事例については、四の2についてで示した第一例目から第七例目まで、第九例目から第十二例目まで、第十四例目から第十六例目まで、第 十九例目から第二十二例目まで、第二十四例目から第二十七例目まで、第二十九例目及び第三十一例目の検証結果が報告書として取りまとめられ、公表されてい る。第一例目から第四例目までの検証結果に関する臓器移植専門委員会の報告書については厚生労働省図書館で閲覧することが可能であり、第五例目以降の検証 結果に関する厚生労働大臣が開催する「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」の報告書については厚生労働省のホームページに掲載されている。

九の2について

 検証結果が公表されていない事例については、現在のところ、その公表について遺族の承諾を得られていないことから、公表されていないものである。

十について

 厚生労働省及びネットワークが全国の中学校等に送付している普及啓発用パンフレットでは、人の死と脳死の関係及び脳死と臓器移植の関係について、「一九 九七年十月十六日、日本でも臓器移植法(「臓器の移植に関する法律」)ができ、脳死で臓器を提供する場合に限って脳死を人の死とすることになりました。」 等と説明されている。脳死を人の死と認めない考え方について、直接の記述はない。
 また、ネットワークが作成している臓器提供意思表示カード等の説明文書では、人の死と脳死の関係について直接の記述はないが、脳死の状態についての説明 等が記載されており、また、脳死と臓器移植との関係については、「脳死での提供から移植までの流れ」等について説明されている。脳死を人の死と認めない考 え方についての直接の記述はない。

十一について

 御指摘の調査は、九県の二十九の病院の五千三十九人の病院職員を対象としており、その職種別の内訳は、看護師六十七パーセント、医師十四パーセント、その他十九パーセントである。
 主な設問及び回答としては、「脳死は、死亡の妥当な判定方法である。」との設問について、「そう思う」と回答した者の割合が三十八・六パーセント、「思わない」が十四・五パーセント、「分からない」が四十六・九パーセントであった。
 この調査結果は、一部の病院に対する調査結果であり、脳死に対する医療関係者全般の受け止め方について一概に判断できるものではないと考える。

十二について

 平成九年十月に臓器移植法が施行されてから、これまでに、法に基づき脳死と判定された事例は四十七例、このうち脳死下での臓器提供が行われた事例は四十 六例であり、脳死下の臓器移植については、実績が積み重ねられてきていると認識しているが、脳死下の臓器移植を普及し、定着させていくためには、臓器移植 に関する国民の理解を深めるとともに、医療従事者等関係者の臓器移植への理解と協力が必要であることから、引き続き、臓器移植に関する国民への普及啓発に 努めるとともに、医療従事者等関係者の取組みを支援していくこと等が必要と考えている。
 また、脳死と臓器移植に関する国民の意識については、平成十六年八月に内閣府が実施した「臓器移植に関する世論調査」によると、臓器移植に対する関心が ある者の割合は半数を若干超える程度であり、また、多くの者が臓器移植に関する情報を十分に得ていないと回答しており、臓器移植に関する国民への普及啓発 が今後とも必要と考えている。

十三について

 お尋ねの「法的評価」の意味が必ずしも明らかではなく、一概にお答えすることは困難である。
 なお、犯罪の成否について述べれば、御指摘の場合、個別具体的な事実関係によっては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十条の死体損壊等の罪、第百九十九条の殺人の罪等が成立することがあり得ると考える。