質問主意書
質問第七六号
社会保険庁の機構改革の在り方等に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
参議院議長 扇 千景 殿
社会保険庁の機構改革の在り方等に関する質問主意書
社会保険庁改革の在り方等については、衆参厚生労働委員会などの質疑においても明らかとなっていない点が少なくない。そこで、以下質問する。
一 法案の立案過程について
「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」第一回(平成一七年七月八日)において、尾辻厚生労働大臣(当時)は「…その検討に当たりましては、役所のお手盛りの改革になることがないように、国民に開かれた場で御議論をいただくことが必要と考えまして、この『社会保険新組織の実現に向けた有識者会議』を設けることといたしました。」と述べている。にもかかわらず、社会保険庁の廃止と日本年金機構の創設という制度設計の基本が与党内での議論だけで決定されたため、日本年金機構法案の立案過程が不透明となっている。
- 「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」は第一二回(平成一八年八月一〇日 社会保険庁国年保険料免除問題に関する検証委員会報告等を聴取)以降長期間開かれず、第一三回は日本年金機構法案の国会提出後の平成一九年四月三日に、法案について事後的に説明を聞いている。同会議を平成一八年八月一〇日(第一二回)以降、日本年金機構法案の国会提出後の平成一九年四月三日(第一三回)まで開催しなかった理由を明らかにされたい。
- 日本年金機構法案の立案過程は、国民に開かれた場で議論されたと考えているか。政府の認識を示されたい。
- 日本年金機構法附則第二条には、施行後三年を目途として、機構の在り方等について全般的な見直しを行う旨の検討規定が設けられている。機構の在り方を再検討するためには、立案過程を透明化し公的な記録を残しておくことが必要である。よって、「日本年金機構法案」の立案過程を透明化するために、政府・与党における議論について、議事要旨を公開すべきではないか。政府の認識を示されたい。
二 天下り問題について
「年金の福祉還元事業に関する検証会議報告書」(平成一七年九月二〇日)には、「三つの年金福祉還元事業に関連した公益法人が厚生労働省及び社会保険庁の職員の再就職先となっており、国民の目から見て、これら事業の必要性及びそのあり方について疑いをもたれる一因となった。」との記述がある。一方、柳澤厚生労働大臣は、日本年金機構の幹部職員の再就職について、現行の公務員並みの規制が必要であるとの認識を表明している。
- 具体的にどのような形で規制を掛け、どのように実効性を担保するのか明らかにされたい。
- 第一六六回国会で成立した国家公務員法等の一部を改正する法律と同様に、営利企業のみならず非営利法人への再就職も規制対象とすべきではないか。また、「現行の公務員並みの規制」では不十分ではないか。政府の認識を明らかにされたい。
三 設立委員、第三者機関の在り方について
- 日本年金機構の設立委員はどのような者を、どのような手続きで任命するのか明らかにされたい。
- 日本年金機構の役員、設立委員、基本計画策定の際に意見を聴く学識経験者、職員の採否決定について意見を聴く学識経験者については、厚生労働省出身者や年金業務の民間委託に関し利害関係を有する可能性がある民間企業関係者は排除するべきではないか。政府の認識を示されたい。
四 日本年金機構の人員削減の在り方について
日本年金機構の職員数について、政府は、平成一七年一二月に策定した社会保険庁の人員削減計画を上回る削減を検討する趣旨の答弁をしている。しかし、年金記録問題が浮上した現時点では状況が大きく異なっている。年金記録の確認等の作業によって業務量の増大は必至であり、人員削減の在り方は抜本的に見直すべきではないか。政府の認識を示されたい。
五 民間からの職員採用について
政府は日本年金機構の職員について、社会保険庁職員のみならず、民間からも積極的に採用するとしているが、年金業務の委託先企業等、年金事業と密接な利害関係を有する企業からの職員の採用には一定の制限を設けるべきではないか。政府の認識を示されたい。
六 不当労働行為の排除について
日本年金機構に移ることを希望する社会保険庁職員は、設立委員が、人事管理の学識経験者から成る第三者機関の意見を聴いて採否が決まることとされている。この点に関し、労働組合(職員団体)に加入していることを理由に採用を拒否されるようなことがあってはならないが、政府の見解を明らかにされたい。
七 保険料財源流用問題について
国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律(いわゆる「国民年金事業等運営改善法」)では、①事務費を全額国庫負担するという原則を見直し、平成二〇年度予算から保険料財源の充当を制度化する、②いわゆる福祉施設規定を見直し、公的年金事業の円滑な実施のために必要な事業(例えば年金教育・広報、年金相談、情報提供、オンラインシステムの運用等)には引き続き保険料財源を充てることができるとしている。しかし、保険料財源充当の理由付け(「受益と負担の明確化」、「公的年金事業の沿革な実施のために真に必要なもの」)が抽象的であり、新たな保険料濫費の温床となるおそれが大きい。平成一七年九月の「年金の福祉還元事業に関する検証会議報告書」が「まとめ」において指摘した事項を政府はどう具体化していくのか明らかにされたい。
八 年金事務所の新設・廃止について
日本年金機構の発足に伴い、現在の社会保険事務所は「年金事務所」となる。その新設は、国会承認事項から外れることになるのか。また、今後、年金事務所の再編について地元自治体の理解と協力を得ることが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
九 年金記録確認作業に必要なマンパワー等について
マイクロフィルムや紙台帳の記録とオンラインシステムの記録との照合に掛かる費用・時間及びマンパワーを、それぞれ明らかにされたい。
十 時効特例法が年金財政に及ぼす影響について
厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(いわゆる「時効特例法」)により、記録訂正がなされた場合は時効を適用しないこととした。これに伴う給付費増は約九五〇億円(うち国庫負担約六〇億円)との粗い試算が示されているが、今後、記録訂正が広範に行われるようになると、金額は更に膨らむことが予想される。このことによる年金財政への影響をどのように見込んでいるか。また平成二一年までに行われる財政検証への影響について、それぞれ政府の認識を明らかにされたい。
十一 年金記録確認第三者委員会について
- 保険料納付記録がない場合の判断基準を「年金記録確認中央第三者委員会」が策定することとされているが、五〇の地方委員会が地域差なく判定できるのか明らかにされたい。
- 「年金記録確認地方第三者委員会」は総務省行政評価局の地方出先機関に設置することとされているが、特に管区行政評価局以外の地方事務所の行政相談担当は、ごく限られた人員体制しか有していない。十分な対応は可能なのか明らかにされたい。
- 本年六月一九日の参議院厚生労働委員会において、行政評価局長は、第三者委員会への申請に際し、全国に約五千人いる行政相談委員を活用すると述べた。しかし行政相談委員は、年金制度については全く素人である。適切に対応するためには、年金制度について一定の知識を持つ必要があり、そのための研修などを行うべきではないか。政府の認識を示されたい。
- 他方、行政相談委員は基本的にボランティアであり、負荷をかけ過ぎると引き受け手がいなくなり、本来の行政相談活動に支障を来すおそれも考えられるが、政府の認識を示されたい。
十二 社会保険審査官の在り方について
日本年金機構の発足とともに、現在、地方社会保険事務局に置かれている社会保険審査官はブロック単位に設置される地方厚生局に置かれることとなる。年金記録問題への不安が高まっていること、年金記録確認第三者委員会が都道府県ごとに設置されることを考えると、当分の間、社会保険審査官は現在のように都道府県単位に設置するのが妥当ではないか。政府の認識を示されたい。
十三 NTTデータとの契約の在り方について
会計検査院の調査により、社会保険庁とNTTデータとのデータ通信サービス契約においては、平成一八年度まで正式な契約書を交わさないまま「約款」のみで運用されてきたことが明らかにされた。正式な契約書を交わさなかった理由及び本年より長期利用計画に切り替えた理由を明らかにするとともに、この間の経緯を明らかにされたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第七六号
内閣参質一六六第七六号
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員山本孝史君提出社会保険庁の機構改革の在り方等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員山本孝史君提出社会保険庁の機構改革の在り方等に関する質問に対する答弁書
一の1について
御指摘の社会保険新組織の実現に向けた有識者会議(以下「新組織実現会議」という。)は、平成十七年五月の内閣官房長官主宰の社会保険庁の在り方に関する有識者会議の最終とりまとめを受け、国の行政組織としての年金運営新組織の具体的な在り方等を検討することを目的として運営されてきたものであり、新組織実現会議が同年十二月に取りまとめた「組織改革の在り方について」を踏まえ、昨年三月にねんきん事業機構法案が内閣から国会に提出された。新組織実現会議では、その後、同年四月から八月までの間、社会保険庁の業務改革や国民年金保険料の免除等の不適正事務処理等について議論が行われたが、同法案は同年十二月に廃案となったところである。他方、同月に与党年金制度改革協議会が取りまとめた「社会保険庁改革の推進について」(以下「与党取りまとめ」という。)において、非公務員型の新組織を設立する改革方針が示され、これに沿って、本年三月に日本年金機構法案(以下「機構法案」という。)が内閣から国会に提出されたことから、同年四月に、新組織実現会議に対して、機構法案の趣旨及び内容等について報告が行われたものである。
一の2について
機構法案については、政府部内の検討のみにより取りまとめたものではなく、与党における精力的な御議論を踏まえ、立案されたものである。
一の3について
機構法案は、与党取りまとめに沿って作成されたものであるが、機構法案に係る与党内における議論については、政府としてお答えする立場にない。また、政府と与党間における議論については、議事要旨等の議事に関する記録は作成されていない。
二について
日本年金機構(以下「機構」という。)については、発注契約は競争入札等を原則とし、業務運営の透明性を高めること等により、これまで国家公務員のいわゆる天下りの問題点として指摘されてきた押しつけ的な再就職あっせんの土壌を生じさせないようにすること等としている。さらに、機構は、国民から信頼される組織として生まれ変わったものにする必要があることから、厚生年金保険事業及び国民年金事業(以下「政府管掌年金事業」という。)の運営の効率性及び公正性について仮にも疑念を持たれることのないよう、今後、機構の役職員の再就職の取扱いについて検討することとしている。
三の1について
機構の設立委員については厚生労働大臣が任命することとなるが、設立委員は、職員の採用を含め、機構の設立に関する事務を処理することとなるため、政府管掌年金事業、経営管理、人事管理等の分野において優れた識見を持つ人材の中から選任されるものと考えている。
三の2について
お尋ねの機構の役員、設立委員、基本計画策定の際に意見を聴く学識経験者及び職員の採否の決定について意見を聴く学識経験者については、適材適所の観点から幅広く人材が求められ、それぞれの任命権者において、機構の適正な業務運営の確保の観点から、各々の職務の性格に応じた適切な人選がなされるものと考えている。
四について
今回の年金記録問題への対応については、本年七月五日に年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会において取りまとめた「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」で公表した日程に即して処理していくこととしており、多くの対策が機構設立前に完了する予定であるほか、外部の事業者によるコンピュータのプログラム開発等により対応できるものもあることから、現時点において、機構の処理すべき業務に要する人員規模については、大きく変更する必要があるとは考えていない。いずれにせよ、機構の設立に際して採用する職員の数は、機構の当面の業務運営についての機構が自ら行う業務と委託する業務との区分等の検討を踏まえ、日本年金機構法(平成十九年法律第百九号。以下「機構法」という。)に基づき政府が策定する基本計画(以下「基本計画」という。)において定めることとなる。
五について
機構法は、職員の採用に関し、政府が、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴いた上で、職員の採用についての基本的な事項を含む基本計画を定めるとともに、基本計画に基づき、設立委員が機構の職員の労働条件と採用基準を定め、その採否を決定するに当たっては、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の会議の意見を聴くことを規定しており、こうした仕組みのもとで適切に対応していくこととしている。
六について
機構の職員の採用については、設立委員が労働条件と採用基準を定め、機構の業務にふさわしい者であるか否かを審査の上、その可否を決定することとなるものであり、その際、労働関係法令を遵守することは当然であると考えている。
七について
お尋ねの「年金の福祉還元事業に関する検証会議報告書」の「まとめ」においては、これまでの反省の上に立って、福祉施設事業への保険料の充当額等の情報公開の徹底及び福祉施設事業の実施の意思決定等に際して保険料拠出者等の意見を聴く「恒常的な場」の設置といった「事業拡大制御システム」の構築、行政における福祉施設事業の実績評価の仕組みの構築並びに年金の企画立案部門と年金事業担当部門との緊密な連携等を提言するとともに、政府管掌年金事業の事務費への保険料充当について国民の理解が得られるよう留意すること及び地域医療への影響等を配慮した年金福祉施設の整理合理化の推進の必要性等を指摘している。
これらの事項への対応については、政府は、機構に対する交付金の交付に当たっては、当該交付金の財源の内訳とそれに対応した交付金の使途を明らかにする一方、機構においては、年金保険料の使途が国民の目に常に明らかになるようホームページにおいて公表するとともに、被保険者及び事業主等の意見を業務運営に反映させるためにこれらの者により構成される運営評議会を設けることとしている。また、機構が達成すべき業務運営に関する中期目標の設定及び実績評価等を通じて、厚生労働大臣が機構の業務運営を適切に監督することとしている。
なお、政府管掌年金事業の事務費については、平成十八年十二月の財務・厚生労働二大臣合意に基づき、保険事業運営に直接関わる経費(職員人件費を除く。)については、保険料を充てることを原則とし、職員人件費及び職員宿舎並びに公用車等の内部管理事務に関する経費は、国庫負担としているところである。
さらに、年金福祉施設(厚生年金病院を除く。)の整理合理化については、現在、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構において、老人ホームの入居者及び施設で働く職員の雇用問題にも配慮しつつ、施設の売却・譲渡を進めるとともに、厚生年金病院については、地域医療を損なうことがないよう留意しつつ、厚生労働省において、整理合理化計画の策定を検討しているところである。
八について
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十六条第四項の規定による国会承認は、国の地方行政機関の設置の際に必要となるものであり、年金事務所の新設及び廃止については、その対象とならないが、年金事務所の再編については、地元自治体の理解と協力を得るよう努めることが必要であり、機構法において、同事務所は、被保険者等の利便の確保に配慮しつつ設置するものとされていることも踏まえ、機構において適切に行われるべきものである。
九について
社会保険庁のマイクロフィルム記録や市町村(特別区を含む。)が保有する国民年金被保険者名簿等の記録と社会保険オンラインシステム(厚生年金保険及び国民年金等の適用、保険料の徴収、給付並びに年金相談等に使用するコンピュータシステムをいう。)において管理する記録の突合せ作業については、計画的に実施し、その進捗状況を半年ごとに公表することとしているが、現在、その実施に当たっての具体的な手法等について検討しているところであり、お尋ねの費用・時間及びマンパワーについて、現時点でお答えすることは困難である。
十について
厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(平成十九年法律第百十一号)の規定により支払うものとされる保険給付又は給付(以下「特例給付」という。)の支給に必要となる額については、現時点で見込める範囲は、既に年金記録が訂正された方に係る部分のみであり、この部分について一定の前提の下に機械的に推計を行った結果は、年金給付費で約九百五十億円、国庫負担で約六十億円である。
今後、年金記録問題については、包括的かつ徹底的な取組を行うこととしており、現時点では訂正される記録の数や内容が不明であるため、年金財政への影響を見込むことは困難であるが、平成二十一年までに行う財政検証(政府管掌年金事業の財政の現況及び見通しの作成をいう。)に当たっては、その実施までの間に判明した特例給付の額の実績等を反映させることとしている。
十一の1について
お尋ねの中で言及された判断基準は、年金記録確認中央第三者委員会(以下「中央委員会」という。)の調査審議の結果に従って策定したものであり、全国の年金記録確認地方第三者委員会(以下「地方委員会」という。)はこれに従って判断を行うこととするものであるが、当該判断基準により難い新たな案件については、中央委員会において先例として審議、検討することとしており、こうしたことにより、地域差のない判定ができるものと考えている。
十一の2について
各地方委員会の事務を担当する職員については、各行政評価事務所内の行政相談業務以外の業務に従事している職員も配置するとともに、社会保険労務士、市区町村の国民年金事務の経験者等も活用することにより、年金記録の確認に関する相談のみならず、通常の行政相談業務にも支障が生じない十分な体制としてまいりたい。
十一の3について
行政相談委員は、地域住民の身近な行政相談の相手として、行政サービスに関する苦情、行政の仕組みや手続に関する問い合わせなどの相談を受け、その解決のための助言や関係行政機関に対する苦情の通知などを行っているところであり、年金記録の確認に関する相談業務についても本来の相談業務の一環として実施するものであるが、年金記録の確認に関する相談業務に当たっては、相談者の立場に立って対応するよう行政相談委員の代表者会議の場で総務大臣から行政相談委員の代表者に対して特にお願いしているところであり、この点も含めて、行政相談委員の具体的な対応方法については、各管区行政評価局及び各行政評価事務所において、管内の行政相談委員を一堂に集め指導するなど必要な研修の実施に努めてまいりたい。
十一の4について
今回の年金記録の確認に関する相談を行政相談委員が受ける場合には、その実情に応じて、職員による様々な支援を充実させることにより、行政相談委員に過重な負荷がかからないよう適切に対処してまいりたい。
十二について
社会保険審査官は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)等による審査請求事件を処理するものであり、行政上の不服申立てに関する事務を処理する行政機関として、現在は地方社会保険事務局に置かれているが、社会保険庁の廃止により、地方社会保険事務局が廃止され、地方厚生局(地方厚生支局を含む。以下同じ。)に統合されることとなるために、統合後は地方厚生局に置かれることとされたものである。
社会保険審査官の地方厚生局への配置後においても、当該事務の適切な処理が確保されるよう、その運用の在り方を含め、今後、必要な検討を行ってまいりたい。
十三について
社会保険庁が株式会社エヌ・ティ・ティ・データと平成十八年度まで締結していたデータ通信サービス契約については、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第二十九条の八、予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)第百条の二及び「契約書の作成を省略することができる場合の協議について」(昭和三十八年十二月十二日付け蔵計第三八〇八号大蔵大臣通知・昭和六十年三月二十七日付け蔵計第八〇四号大蔵大臣通知・昭和六十二年四月一日付け蔵計第七七七号大蔵大臣通知)により、随意契約で電気通信役務の提供を受ける場合は、契約書の作成を省略することができることとされており、社会保険庁が株式会社エヌ・ティ・ティ・データとデータ通信サービス契約を締結するに当たり、社会保険庁の支出負担行為担当官が、契約に必要な事項が定められた契約約款を踏まえ、申込書を提出して、株式会社エヌ・ティ・ティ・データより承諾書が得られたことから、国の会計事務処理として適正な契約手続がなされたと判断し、契約書の作成を省略したものである。
しかしながら、平成十八年六月七日の参議院決算委員会における「平成十六年度決算措置要求決議」において、レガシーシステムに関する業務について長期継続契約を認めている現状の是非を検討し、当該業務に関する契約について会計法上の位置付けを明確にすべきである旨指摘されたこと及び平成十八年十月に会計検査院法(昭和二十二年法律第七十三号)第三十条の三の規定に基づき会計検査院長から参議院議長に対して報告された「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」において、これまでの電気通信役務の利用料金の構成要素には、ハードウェア使用料等、本来、長期継続契約により支出することがなじまない費用が含まれている旨指摘されたこと等を踏まえ、平成十九年度から、長期継続契約を取りやめることとし、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十五条による国庫債務負担行為を活用し、本年四月一日から平成二十二年十二月三十一日までの有期の契約に見直すとともに、併せて契約書を作成することとしたものである。