弔辞

 本日、山本孝史さんの告別式にあたり、民主党を代表して、謹んで弔辞を捧げます。

 私どもの掛け替えのない同士である山本孝史さん、貴方が58歳という若さで旅立たれましたことは、まさに痛恨の極みであります。

 貴方はがんに冒され、しかし、不撓不屈の精神でがんと闘い、治療の苦しみに打ち克ち「がん対策基本法」と「自殺対策基本法」の制定に心血をそそがれました。貴方の情熱と行動力なくしては二つの基本法制定はあり得ませんでした。

 貴方の「いのち」をかけた闘い、自らがん患者であることを公表して「がん対策基本法」の制定を切々と訴えた2006年5月22日の参議院本会議における代表質問は、憲政の歴史に深く刻まれることでしょう。

 昨年7月には、病状が悪化するなか、参議院の比例代表選挙に挑まれました。酸素吸入チューブをつけながら街頭に立ち、いのちの尊さ、いのちの政策を訴えた貴方のその使命感、そしてそれを支えられた奥様はじめご家族の思いに本当に心打たれました。

 そして見事に当選された貴方が酸素吸入器をつけて出席した民主党肝炎対策本部の会議、C型肝炎訴訟の6人の原告の方に、「皆さんが抱えている問題は進行がん患者の場合と同じ。皆さん、病気を抱えて生活するのはいろいろ大変だと思うけれど、がんばって下さい」と励まされた貴方。私は民主党代表として貴方を本当に誇りに思います。

そして貴方は、昨年12月4日には、参議院に提出された「在外被爆者支援法案」の筆頭発議者となられました。「国会議員の仕事は命を守ること」という信念を最後まで貫かれた貴方の姿を忘れることはありません。

 聞けば貴方の命をかけた闘いの集大成である日本のがん医療への提言『救える「いのち」のために』という著作が今月刊行されるということです。亡くなる2日前に刷り出された見本を手にされ、嬉しそうにされていたと伺いました。間に合って本当に良かったと思います。貴方の遺志はがん対策に携わる人たちに必ずや受け継がれていくと確信しています。

 弱者を切り捨て格差を放置、拡大させてきた昨今の政治と真っ正面から闘い続けてこられた山本さん、あなたのたぎる情熱を深く胸に刻み、国民の生活が第一の政治を実現するために、民主党議員一同、全身全霊をかけて挑むことを貴方の御霊に誓います。

 いま私は、貴方の遺影を前にして、奥様のゆきさま、ご遺族のみな様、そして貴方を長年支えてくれた多くの支援者のみな様に対して、民主党を代表して衷心よりお悔やみを申し上げます。そして民主党所属山本孝史議員を支えていただいたことに対しまして、貴方と共に深く感謝の意を表します。

 志半ばにして倒れた山本孝史さん、しかし貴方は貴方を愛する多くの人たちに支えられ、そして社会の片隅で苦しんでいる多くの恵まれない人々に希望の灯を点し、自らの使命を果たすべく人生を全力疾走で駆け抜け、与えられた人生を全うされたのだと思います。

 山本孝史さん、安らかに、永久の眠りにつかれんことを祈ります。貴方の早すぎた死に、改めて哀悼の意を表し、弔辞といたします。

平成20年1月12日

民主党代表 小沢一郎