がんゆえ 命守る仕事を 患者ら、再選支援の輪〔朝日新聞(大阪版)〕

朝日新聞(大阪版) 2007年7月7日掲載

朝日新聞(大阪版) 2007年7月7日 国会でがん患者であることを公表し、がん対策基本法の成立に尽力した民主党の山本孝史参院議員(58)が、治療を続けながら参院選に臨む。6年前は大阪選挙区で当選したが、今回は病状もあって比例区に。演説に立つ機会は限られそうだが、「命を守る政策を充実させたい」と意気込む。共鳴するがん患者らの支援の輪も広がっている。

  「命を守るのが政治家の仕事。がんも自殺も、救える命が次々と失われているのは、政治や行政の対応が遅れているからだ」。山本氏は昨年5月、参院本会議で自らのがんを公表し、がんや自殺対策の強化を訴えた。

  政治家が病気を告白すれば、政治生命にもかかわる。リスクを承知で訴えた演説は党派を超えた共感を呼び、がん対策基本法と自殺対策基本法の早期成立を後押しした。

  がんと診断されたのは05年末。胸腺から肺と肝臓に転移しており、「治療しなければ余命半年」とされた。痛み止めを毎日飲み、毎週土曜は抗がん剤治療にあてる。今年5月には医師から「今の体力では治療も続けられない」と言われ、立候補断念も考えた。だが、「がんになった自分だからこそ、できる仕事がある」。そう思い直した。いまは「治療でがん細胞は減っており、体力も回復してきている」という。

  外出が制約される山本氏を支えるのは、がん患者や自殺防止に取り組む市民らだ。埼玉県の患者会シャローム代表、植村めぐみさん(56)は、「ここまで身を挺して医療改善に取り組む人はいない」。4月には「勝手連」も結成され、選挙戦では、患者や遺族らが寄せた応援メッセージを街頭で流す計画だ。

  今月1日、大阪市福島区の大阪NPOプラザ。「山本たかしさんに国会活動を続けてもらおう」と名付けた集会には、約150人が集まった。山本氏に代わって妻ゆきさん(56)が「まだまだリタイアできないと頑張っています」と訴えた。

  再選を目指す思いを、山本氏はこう語る。「治らない病気の人はさっさと逝けというのが今の社会。でも、どんな人もみな普通に暮らしたいと思っている。それを支える社会をめざして働き続けたい」

(斎藤利江子)