vol.21 2005年3月〜4月
3月7日(月)号
3月3日、参議院での平成17年度予算案の審議が始まりました。昨年、参議院幹事長として質問のトップバッターを務めたのは3月9日でしたので、今年は、1週間近く早い審議日程です。ちょっと、困ったものですね。
国会議員互助年金の改正を巡って
衆参両院議長の下に設置された「国会議員の互助年金等に関する調査会」が、1月に答申を行いました。
私は、諸外国と同様に、引退議員の老後生活を国費によって保障することは、民主主義にとって必要なコストと考えています。国会議員も、公的年金か、公的年金と同様の年金制度に加入し、あわせて、一定の退職金を受給する仕組みに変えるべきだと考えます。
しかし、答申は、「議員互助年金」が退職金なのか、年金なのかを明確にしなかったばかりか、国庫負担率を50%にすることだけを考えて作文したような内容です。例えば、再来年には衆参ともに改選期を迎えるのですが、その際、これまでと同様の傾向で引退議員が生まれれば、答申通りに改正しても、議員年金の国庫負担率は、たちまち60%を超えてしまいます。これでは政治不信が増すだけです。
いったい、昭和33年の同法制定時に、どんな議論があったのか。インターネットで、当時の衆参両院の議院運営委員会での議論をチェックしました。すると、昭和33年4月16日の参議院本会議場で、無所属の八木幸吉議員が反対討論を行っており、その内容は、現在の問題点をずばり言い当てていました。(議事録はこちらです)
その的確な指摘、周囲の議員が「議事進行」などと叫んで、早々に成立させようというなかでの揺るぎのない姿勢に感銘すら覚えました。いったい、どんな人なんだろう? インターネットで調べました。
八木氏は、兵庫県3区から衆議院議員、また参議院全国区でも選出されていますが、大阪商工会議所の会頭も務めた杉道助氏が社長を務めたこともある、繊維会社の名門、株式会社ヤギ(大阪市中央区)の会長もされています。なんと、大阪にゆかりの、しかも、私の地元、船場の方だったのです。
政治家の仕事と、その背景にある人生を知ることも楽しいですね。
線引きの苦しさ、悲しさ
小児慢性特定疾患調査研究事業という厚労省の業務があります。慢性疾患に罹患した子どもの治療費を補助する役割も果たして来ましたが、補助金での事業だったため、財政再建に伴う補助金カットの対象になりました。
そこで、事業を法制化して、安定的に財源を確保することに踏み切ったのですが、その過程で、患者さんに自己負担をお願いすることになってしまいました。それまでの無料が、有料になるのですから、反対の声があがるのは当然です。財政が豊かであれば、希望も叶うのですが。
法律を作るということは、どこかで「線引き」をすることです。外国に居住する被爆者には被爆者援護法が適用できないと国は言ってきました。国境という線があったわけですが、「法律を恣意的に解釈してはいけない」と裁判所に言われ、徐々に適用範囲が拡大されてきていますが、ここでも、「線引き」をしなければなりません。介護保険の「軽度者」も、今度の改正で、給付が絞られるようです。これも「線引き」です。
線引きの悲哀を嘆いています。そのうえ、権丈善一・慶大教授が語るように、「政策は、所詮、力が作るのであって、正しさが作るのではない」という側面も政治には付きまとっています。大変な世界だと、痛感する日々です。
今週の「なんでやねん?!」
* 参院予算委で、「行き過ぎた性教育」が槍玉にあがった。一方で、性病が低年齢化して、しかも蔓延していることも指摘された。しかし、「では、どうすれば良いのか」の、指摘はなかった。総理は、「これは、ひどいですね。私は、誰にも教わらずに、知らないうちに知っていた」と笑っていたが、事態は深刻。
フランスの箴言家フーコーは「人間は、太陽と死を直視できない」といったが、性も、遠ざけているだけで良い時代ではない。子どもたちに、いのちの「はじまりと終わり」の大切な意味合いを教える努力を重ねている先生方と、国会議員や市民との、真剣な会話が欲しい。
3月14日(月)号
小泉総理の年金改革への不真面目な姿勢は許せない
3月10日、参院予算委で「社会保障に関する集中審議」が行われ、民主党を代表して小泉総理に「年金改革」について質問した。昨年6月の参院厚労委での強行採決直前の質問(そこでは年金改革の柱であり、給付抑制策である「マクロ経済スライド」の意味を、総理は理解していなかったことが露呈した)、今年2月の補正予算質疑での質問に続く私の質問の第3弾だ。
「年金改革とは、全国民が給付を受ける”基礎年金”の安定化にある」と考える私は、小泉総理に、「基礎年金の負担のあり方や給付水準」について、どのような姿が望ましいのか、いろいろな考えがあるだろうから、総理の考えを述べて欲しいと願って質問した。
しかし、小泉総理は、昨年の失言が参院選の敗退につながったという苦い思いからだろう、失言を恐れ、言質を取られまいと、制度の複雑さを理由に逃げの一手に終始。説明責任をまったく果たそうとしなかった。
前日までに、質問の趣旨を官邸の担当者に伝えているし、総理自身も経済財政諮問会議で聞いているはずの内容に過ぎない。それにも係わらず、答弁を逃げる不真面目な姿勢は、年金制度の問題点は何かを理解しようとすらしないのだと断ぜざるを得ない。国民生活の安定という、政治にとって最大の仕事を為すべき指導者としては失格ではないか。そんな総理に、「三党合意の履行を」などと言われる筋合いはない。
小泉総理の盟友であるブッシュ大統領は、米国年金制度の改革(給付の削減)を国民に訴えるために全国行脚をしているとの新聞報道があった。今回の参院での審議はテレビ中継されていたのだから、総理には、年金制度の問題点とその改革案について、国民に直接に説明して欲しかった。残念だ。政権交代しかないとの確信を深めた。
NHKの国会中継で質疑の模様が全国放送されたので、私の質問を見てくれたという仙台の方から次のようなメールをいただいた。私の憤りが、まさに視聴者の方にも届いていることを知って嬉しい限りだ。
『昨日の国会中継を見ました。与党側はすべて予防線を張って、誉め殺しのような手法でしたね。基礎年金とは何なのか、国会の場で議論しようという誘いを何度もふった与党、その真意をちっとも報道できないNHKのニュースにはうんざりです。仙台の地元紙、河北新報の朝刊にもいつもどおり国会質疑のまとめが出ていますが、ピントがぼけたまとめ方。記者も勉強が必要な証拠でしょう。 山本議員の最後の提案に至るプロセスをじっくり聞きたいと思いました。画期的です。短い時間でしたが、過去を踏襲するだけでないすぐれた制度を導入した実績にも触れたあたり、ずいぶんと考えた構成でした。あんな与党に切れもせず、本当に忍耐強いことと、感心します。私も国民年金ですから、まさに人ごとでないのです。』
自殺予防シンポで
「原因不明の身体不調が続いたり、酒量が増えたりしたら、うつ病かもしれない。早期に精神科の受診を」と、専門家は話す。うつ病への理解が広まること、専門医との連携の強化など、取り組むべき課題は多い。
自殺対策支援センター「ライフリンク」代表の清水康之さんは、「若者の自殺の増加は、死期を自ら定めることで、それまでの時間を濃密に過ごそうとしていることの現れではないか」と指摘する。
「良く死ぬとは、良く生きること」と言われるが、「死を見つめることで、お互いのつながりが実感でき、生きる力となるような家族や社会の環境、地域づくり、教育が大切」と、清水さん。手探り状態が続いているが、「いのちの教育」のさらなる展開が望まれる。
今週の「なんでやねん?!」
* 参院での質疑後に、トイレで谷垣財務相と並んで立った。「マクロ経済スライドによる年金額の抑制は、物価の上昇を前提にしているが、人口減少社会だし、デフレ要因が強いなかで、即効性は期待できない。もう一段の給付抑制がそう遠くない時点で求められるのではないか」と重ねて質問。「そういうご趣旨だと理解していました」と谷垣さん。「小泉政権で、きちんと改革に乗り出しておいてくださいよ。民主党政権への先送りは御免ですよ」「そういう意味だったんですか!」
* 介護保険の担当者から、「軽度者への給付見直しで、サービス利用者や介護事業者からの反対が強い。国会議員も同じ調子だ」と泣きが入る。介護保険の定着を狙って、サービス開始時点では「制度の乱用」を大目に見ていた厚労省が、今度は一転してサービス抑制に走る。いったん飲み込んだ魚を吐き出せと言われても、要介護者も事業者も「鵜ではない」。
* 新幹線で、妻の介護で高槻市長を辞職した江村さんとバッタリ。施設はいくら造っても足りないだろうが、入居者も本当は在宅で過ごしたいのだ。在宅介護を進めるためにも、ヘルパーによる痰の吸引を認めよと主張してきたが、厚労省はようやく認めた。遅いとお叱りを受けた。
* 江村さんとの話が、寝屋川での教師殺傷事件に話が及んだ。警備員の配置の前に、元気なお年寄りに「シルバー・ボランティア」として力を貸してほしいと言うべきだったのではないかと
江村さん。私も同感だが、国会での議論は「ボランティアが怪我をしたらどうする!そんな危険なことは頼めない」という論調だったと話す。教育大池田校での事件をきっかけに、すべての国立の小中学校には警備員が配置された。しかし、自治体には予算がない。国の教育行政には、何か、ちぐはぐな印象を受ける。
3月21日(月)号
3月17日、予算委員会で二度目の質疑に立たせていただいた。
今回のテーマは、中国残留邦人の継子への強制退去処分は誤りであったとの高裁判決を受けて、法務大臣が上告を断念した(今後の流れにして欲しい)問題、子どものうつ症状への対応策の充実、基礎年金改革、人口減少社会における経済の動向と社会保障給付財源のあり方などについて、谷垣財務相、尾辻厚労相、竹中経済財政担当大臣、南野法相らと質疑を交わした。
子どもの「うつ症状」を巡っての質疑
こどもの「うつ症状」を巡って、中山文科大臣に質問。
「うつ症状を示している子どもたちが多いと聞くが、そのような調査はあるか?」
前日の質問取り(事前に官庁の職員が質問を聞きに来て、答弁を準備すること)の時に、文科省が主体となっての全国調査はないと聞いていたので、「大学の先生らが行った調査がある。ぜひ、目を通してほしい」とお願いしておいた。
だが、中山大臣の答弁は、「調査はない。プライバシーの問題があるから調査は困難」。
私の質問の趣旨は、小中学生で「うつ症状」を示している子どもが多くおり、不登校や引きこもり、いじめ、自傷・他傷行為とも関連があると言われている。ストレスの多い社会だから、大人だけでなく子どもの「うつ」にも関心をはらい、文科省としても対応策が必要ではないかというものだが、大臣の問題意識は乏しい。
「先生には、ガイドブックを配布している」と言うが、問題意識もないままに資料を配布しても、的を射たものにはならないだろう。中山大臣のいい加減さ、無責任さに驚いた。
長崎選出の犬塚直史委員(民主党)が、「昼間、スナックなどが開いていて、カウンターに並んでお酒を飲んでいる人がいる」という。私の友人も「昼間、地下鉄に乗ると、お酒臭いと妻が言っている」と語る。アルコールは、一時だけだが気分を高揚させるので、うつ症状の人と飲酒は深い関係がある。ストレス社会で、かなりの広がりを持って、うつの患者が増えていると感じさせる。
今週の「なんでやねん?!」
厚生労働委員会でのちょっとしたハプニング。その1。
埼玉県越谷市に職安を新規に開設することに伴い、国会に承認を求める件が諮られた。
現地も視察した民主党の柳澤委員が、「お昼の時間帯に窓口を閉めている。職員が交代で相談に応対できないのだろうか」と指摘。
尾辻厚労相は「3月末までに勤務体制の見直し案をまとめる」と答弁。
事務方は慌てただろうが、政治主導の委員会運営は、こうでなくっちゃ。
厚生労働委員会でのちょっとしたハプニング。その2。
社会保険庁での監修料問題について小混乱。
厚労省は、同様の事態がないか、全省を調査して報告するとしていたが、実際の報告書は「社会保険庁」に限られていた。
全省調査し発表するとしていた厚労省は約束違反だと迫られて、大臣は思わず「調査をした。一番多いところを発表した」と答弁。
「うん?一番? じゃ、二番は?」
結局、委員会にきっちりとした報告書を提出すると再答弁して、チョン。
愛知県選出の与党議員との会話です。
「愛知県に、富山村(とみやまむら)という村がある。人口202人、世帯数は80ぐらい」。
「ずいぶん小さい村ですね!」
「離島を除けば、一番少ない。村会議員は6人。いつも無投票。2期勤めれば交代で、全員が議員になる」
「?」。
富山村のシンプルなホームページが開設されています。駐在所、消防駐在所がある。駅もあるが、無人(これが、りっぱな駅です)。ここにも、郵便局がある。ただし、無人。ホームページには、村の財政や、村長の挨拶は載っていません。何で?
4月1日(金)号
3月22日、厚生労働委員会で、戦没者の遺族等への特別弔慰金の支給法案の審議があり、中国残留邦人の自立支援策の充実、シベリア抑留者の未払い賃金問題についても質問しました。29日には、三位一体の改革に伴う国民健康保険法改正案の質疑があり、質問に立ちました。30日には、同法案の反対討論を行いました。
シベリア抑留者未払い賃金問題
ソ連によって、シベリアでの強制労働に従事させられた人たちは、未払い賃金の支払いを、長年にわたって求めてこられていますが、戦後60年を迎えた今も未解決のままです。政府の誠意ある対応を求めて、3月22日の厚労委で質問をしました。
出席した外務省担当者の答弁は奇妙なものばかり。「未払い賃金は存在するのか?」と政府の認識を尋ねれば、「仮にあるとすれば」と答弁。これは、「未払い賃金があると思う人は、ソ連に請求してください。日本政府が代わって交渉することはありません」という外務省の姿勢からきています。
「捕虜か抑留者か」という質問にも、「当事者が、『捕虜と呼ばずに抑留者と呼んでください』といわれたので、抑留者です」と答弁。国際法上で「捕虜」となれば、当然に、賃金の支払い義務が相手国(ソ連)か捕虜の所属国(日本)に発生します。「生きて捕虜の辱めを受けず」という戦陣訓から、「捕虜」の呼称を嫌った心情は理解できますが、日本政府は、シベリアでの強制労働をどのように捉えているのでしょうか。解決に向けての取り組みを続けます。
国民健康保険の安定的運営を巡って
いわゆる「三位一体の改革」の一環として、国民健康保険財政における国庫負担割合を引き下げ、税源を都道府県に移譲するとともに、医療費の「適正化」に都道府県も加わってもらうことを内容とする「国保法等の改正法案」の質疑が参院厚労委で行なわれ、3月29日、質問に立ちました。
高齢者や低所得者の加入者増で、市町村が運営する国保は大きな赤字に悩んでいます。しかし、小泉内閣は、地方団体の反対を押し切って、国庫負担割合を引下げ、地方交付金での財政措置に切り替えます。今後、療養給付費の増加に伴って、地方への税源移譲が進まなければ、保険料の大幅引き上げにつながるのではないかという地方団体の心配に、厚労省はまったく応えていません。
要は、国保運営における国・都道府県・市町村の役割が定まっていないままに法案が提出されているのです。これは、「補助金を大幅にカットする」と小泉総理が打ち上げた政治的パフォーマンスに、あわてて厚労省が「数字合わせ」を行なったからです。結局、地方財源を確保し、地方自治を確立するとの小泉流「三位一体」も、「看板倒れ」に終わりました。
小泉総理は厚生大臣の時に、保険の自己負担3割への引き上げを強行し、医療制度の抜本改革を約束しましたが、反故にしたまま。その一方で、社会保障制度への国の関与を一方的に薄めようとしています。秋には、生活保護費の国庫負担割合の引下げも検討されます。
今週の「コツコツと!」
「中国養父母お見舞い訪中援助事業」の拡充
2月の予算委員会に続いて、3月22日にも厚労委で取り上げた、中国残留孤児への支援問題で、厚労省は標題の事業を拡充し、養父母を見舞うための訪中費用(交通費、滞在費、お見舞金等)を2度目以降も給付することになりました。これによって、離日に伴い生活保護費の支給が停止されるため、訪中を断念していた事例がなくなることが期待されています。担当の小林佑一郎・厚労省中国孤児等対策室長は31日に退職されましたが、この間、熱心に中国残留邦人支援問題に取り組んでいただきました。感謝。
ハローワークの窓口時間の改善
3月17日の厚労委での埼玉県越谷市への職安(ハローワーク)新設承認案件の審議の際、現地を視察した民主党の柳澤光美委員が「昼休みに窓口が閉まっているのは、利用者には不便。改善すべきではないか」と指摘したことを受けて、尾辻厚労相は改善を約束していましたが、3月29日、「全国すべてのハローワークで昼休み時間も窓口を開く」と厚労省は発表しました。都市部や県庁所在地のハローワークでは業務終了時間の延長や、土曜日の開庁も決定。順次実施に移されます。柳澤委員の「現場主義」が腰の重い行政を動かしました。
今週の「なんでやねん?!」
監修料問題、混迷深める答弁
3月17日の厚労委で、「厚生労働省の監修料受領問題について、厚労省は、まともに調査していないのではないか」と指摘されたことを受けて、3月29日の厚労委で、同省官房長は再度説明を行いました。しかし、「監修料を受け取った職員は、その収入について確定申告しているだろうから、確定申告書の控えがあれば監修料の金額が確定できるのではないか」との質問に、「監修料を受け取ったと申告している約200人の職員に確定申告書の控えでの確認は求めなかった。手元に確定申告書の控えを残している職員はいなかった」と答弁。「だれも保管していないとは不自然」と追及され、尾辻大臣も「私も残していない」と援護射撃。ホント? 疑惑は深まるばかり。
4月17日(日)号
「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」の実質的な第1回の会合が、4月14日の午前10時から12時30分まで開かれました。
会場へ向かうエレベーターで乗り合わせた武部勤幹事長は、「(年金合同会議より)もちろん総務会の方が大事だ」とポツリ。郵政民営化法案を巡って自民党内は大荒れ。年金どころではないというのが本音です。
開会1時間後には議事進行役を仙谷会長代理にお願いして、これまた郵政問題への対応に出かけると言われていた与謝野馨・自民党政調会長が、開会後わずか5分で席を離れました。「あら、もう出るの? やっぱり郵政だよね」と思っていたら、数分後に会場に戻ってきました。トイレだったのか、あるいはテレビカメラの多さや傍聴人の熱気に押されて、「これは抜けられない」と観念したのか。結局、最後まで会長席に座って議事進行役を務めました。
自民党委員席には、丹羽雄哉、津島雄二の厚生大臣経験者や伊吹文明氏らの厚生族、柳澤伯夫元金融担当大臣らの大蔵族に加えて、武部勤幹事長、片山虎之助参院幹事長らの執行部も顔を揃え、まさに、超重量級の布陣。公明党からも、坂口力前厚労大臣、冬柴鐡三幹事長らが参加しています。
顔ぶれはすごいのです。でも、この合同会議で一定の方向性が見出せるのか。不安いっぱいのスタートとなりました。
与野党の決定的な違いは危機感の強弱
丹羽雄哉委員が、自民党の考えを述べることから議事が始まり、民主党は岡田代表が出席して、民主党の考え方を述べました。
自民党、公明党の与党と、民主党の発言を比べれば、今後の日本社会に無年金者や低年金者が続出する姿を、どのように考えるのかについての基本的な立場がまったく違います。
丹羽委員が目指すとした「皆年金」を、すべての人に「意味のある年金額を老後に給付すること」と考えれば、与党の標榜する社会保険方式での実現はかなり困難です。
低年金や無年金は、保険料を払わなかった人の責任だと与党は言います。しかしながら、個人も企業も保険料を払えない者が多すぎるという年金制度は、システムとして壊れているといっても良いでしょう。
将来への暗い予測は、社会を不安定にし、資本主義や民主主義にとっても重大な危機となる可能性が高いと考えますが、その危機意識が、与党には薄いのです。
基礎年金改革に議論が収斂されるか
年金額についても、丹羽委員は「機械的抑制はしない」と言い、冬柴幹事長は「老後生活の必要額を確保した」と述べました。しかし、昨年の年金改革で、1階部分の基礎年金も、2階の報酬比例年金も一律15%のカットがなされます。賃金スライドの廃止で、厚生年金の給付水準は受給開始時の50%が、年月とともにさらに下がって、40%近くにまでなってしまいます。なぜ、基礎年金まで一律に15%カットすることにしたのか。合同会議でも、依然説明はありません。
「一元化」についても、伊吹委員は「基礎年金として、すでに一元化されている」と言います。確かに国民年金も厚生年金も「基礎年金」部分の給付は、加入期間に応じて支給するという計算式は同じであるため、一元化されています。しかし、保険料の負担方法は、国民年金と厚生年金では異なります。
定額保険料制の第1号被保険者と、所得に応じて保険料を払う第2号と第3号被保険者の間で、保険料の賦課方式を一致させることが、「一元化」の第一歩です。国民年金第1号被保険者では、高収入の者も1万3,580円で済んでいます。また、国民健康保険も介護保険も、高所得者は所得に応じて保険料を支払っているのに、国民年金保険料は1万3,580円(平成17年4月以降)と、頭打ちになっています。これがおかしいのです。
そこで、国民年金保険料を所得比例にする。正確な所得の捕捉ができないと与党が主張するなら、次善の策として、消費税で確保する。それが年金の抜本改革に向けての第一歩となるはずです。基礎年金の所要財源を、一般会計からの捻出と消費税で賄うこととすれば、保険料の徴収は無くなる代わりに、年金税が徴収されることになりますが、国民の負担総額は同じです。ただし、負担する人の範囲が異なってきます。
伊吹委員は「負担もないままに、老後の一定年齢に達したらお金をあげるというのはおかしい」と言いますが、保険料の代わりに税で負担していると考えても良いのではないでしょうか。
開催日の調整で、一苦労
さて、合同会議の設置にかかわる「国会決議」によれば、「秋までに改革の方向付けを行い、骨格の成案を得ることを目指す」とあります。今後、会合は定期的に開かれるのでしょうか。
合同会議には衆参の厚生労働委員が多数参加していますが、衆議院厚労委の開催日は毎週水曜と、金曜。参議院は火曜と木曜と定まっています。したがって、両院の厚労委が開かれない日は、土、日、月曜日しかありません。
しかし両院ともに、介護保険や障害者自立支援法、労働安全衛生法等の改正案など、審議案件が多数残っていて、委員会審議で手一杯の状態です。では、「月曜日に開催するか」となるのですが、地元行事等もあって、支持する意見は少数です。
14日の会合も木曜日となったため、自民党の武見敬三理事と野党筆頭理事の私が交渉して、午前中は年金合同会議、午後は参院厚労委で年金等の福祉施設廃止法案の審議と、時間を割り振りました。次回は、衆院の定例日である22日の金曜日に開催されます。今度は衆院が譲る番という意味です。
この調子では、会期内に何回、合同会議を開くことができるのでしょうか。
おそらく、国会閉会後でないと、まとまった時間は取れないのではないかと思うのですが、その時にも、今回のように大物議員がずらっと顔を揃えるでしょうか?
今週の「コツコツと!」
◎ 昨年、民主党が提案した「年金改革法案」は、各党が望ましい年金像を持ち寄り、議論する場を国会に作ろうという内容でした。その意味で、今回の「与野党合同会議」の開催は、民主党の考えが具体化されたものと言えます。この後は、成案を得る努力を各党がいかに真面目に行なうかにかかっています。ローマ法王の選出ならぬ、望ましい年金像を巡っての、各党の「コンクラーベ」です。
今週の「なんでやねん?!」
* 年金保険料の無駄遣い批判に懲りた与党は、年金や健康保険料を原資として建設・運営されてきた厚生年金病院や会館、健康センターなどの施設を廃止し、売却することを決定。しかも、労働保険で建設した施設が「安売り」されたとの批判を受けて、今回は「一円でも高く売る」との方針を掲げた。いささか乱暴なやり方で、その問題点は、私のHPに掲載したが、与党の姿は、源平合戦の富士川の戦いで、水鳥の羽音を敵襲と誤認して一目散に敗退した平家と同様に、国民の怒りに驚いて逃げ出したように見える。大きな声に引っ張られずに、正しい道を説くのが政治だと思うのだが、与党は浮き足立っている。
4月25日(月)号
衆院での介護保険法案の審議が、大詰めを迎えています。
高齢者の増加による負担増を睨んで厚労省は、今回の改正で、ホームヘルパーによる軽度者への生活援助を見直し、真に必要なサービスに限定するとの方針を立てました。と同時に、単なる給付削減では納得されないだろうと、「介護予防給付」の導入を打ち出しました。
ところが、介護予防給付の柱とされた「筋肉トレーニング」は、要介護度の改善につながっていないと批判され、厚労省は火達磨状態です。そもそも、要介護度の改善に意欲的でない高齢者を、専門指導員も不足するなかで筋トレマシンに座らせても、要介護度の改善が望めるはずはありません。「あれば良い」程度の筋トレを、前面に押し出した厚労省の大失敗です。
ここは素直に、「要支援」と判定された人たちへの介護保険からの給付は、介護予防給付が主体と法律で定められていることを再度説明し、「軽度者への給付内容を見直して、介護保険給付を重度者に集中する」と説明した方が良かったのではないでしょうか。あわせて、「寝たきりゼロ作戦や介護予防に資する事業を、地域で再度展開する」と宣言すれば良かったのではないかと思います。
もう一つの論点である「被保険者の年齢拡大による障害者福祉との一体化」も、障害者福祉の基盤整備が進まないにもかかわらず、厚労省は財源の確保を優先させてしまった結果、暗礁に乗り上げました。
「障害者福祉は税で行うべきだ」と主張する自民党を、公明党がようやく説得して、改正法案の附則に「(被保険者の)範囲について検討する」と書き込ませるところまでこぎつけたのですが、法案審議の最終段階で民主党が、「拡大の方向を法律に明確に書くように」との修正要求を出しました。しかし、寝た子を起こされた格好の自民党・公明党は、民主党案には合意せず、法案の修正協議は成立しないのではと思います。
介護保険で与野党の意見が一致せず、後に続く「障害者の自立支援法」の審議に入れば、障害者への給付削減を巡って、与野党間での議論が紛糾すると予想されます。厚労省にとっては最悪のシナリオです。
5年前の介護保険制度創設後に当選した新人議員が増えたうえに、前回の議論をしっかりフォローする人が少ないことが気がかりです。そうした状況下で議論をリードするのは、どんな法案でも、その筋の専門家と言われる議員です。その人の議論の立て方(論戦の組み立て方)で、後に続く質問者の論調が規定され、法案審議の方向性が決まります。新しい血の必要性を認識しながらも、私のような議員も必要。まだまだ頑張らなければと、老骨に鞭打つ日々が続きます。
今週の「コツコツと!」
◎ 4月21日には、臨床検査技師法の改正案を審議。医師でもある足立信也委員(民主党・大分選挙区)が、「エコー検査やMRIは、高度で緻密な検査に含まれる。医師と共同して検査するようにすべきだ」と主張。その内容を盛り込んだ附帯決議を、私も手助けして作成し、全会一致で採択しました。医療現場を熟知する議員からの発言は説得力があります。その一方で、答弁する大臣や厚労省職員は、現場を知らないことが歴然の答弁でした。現場からの発言の重みを再認識させられました。
4月30日(土)号
JR福知山線脱線事故の原因は、超過密ダイヤと、遅れを許さない管理体制でした。
小泉内閣の閣僚は、JRの民営化を規制緩和の成功例として持ち上げますが、実態はローカル線の廃止と、私鉄や航空会社との競合路線における収入増を図ることでした。北側国交相は、安全輸送は鉄道会社がもっとも優先するべきことと言っていますが、公共交通の安全性を一民間会社の経営努力に委ねてきた政府の姿勢こそ問題ではないでしょうか。
本会議場で犠牲者への黙祷を捧げた後に、政府提出の「都市鉄道等利便増進法案」が可決成立しました。駅の改修等によって、乗り換え時間を短縮しようとするものですが、法案では、「大都市圏における都市鉄道等の利用者の利便を増進するため」、「目的地に到達するまでに要する時間の短縮を図る速達性向上事業」などを行うと書かれています。
利便性の向上は否定するものではありませんが、いま行うべきは「速達性向上事業」ではなく、「安全性向上事業」です。新幹線の建設よりも、安全性向上のための事業が優先されるべきです。民主党は、もっとその点を強調すべきでした。
遅延したり、オーバーランした運転手の再教育が、何枚も反省文を書かせたり、草むしり、トイレ掃除をさせることであたったという報道に、「JR西日本」という巨大組織の中でのいじめとも思える陰湿さが浮かび上がります。かつて警察組織で問題になったのと同じ構図です。人間扱いしない、人格を否定するような組織構造。この点にもメスを入れるべきです。
世界一安全で、確実に運行されていると評判だった日本の鉄道。もはや神話です。庶民には先頭車両に乗らないという程度の防衛策しか思い当たりませんが、一過性の総点検ではなく、真の原因を探る取り組みを政府に求めます。
今週の「コツコツと!」
中国残留邦人の帰国促進と自立支援は、平成5年に成田空港に12名の残留婦人が「強行帰国」したとき以来、ずっと係わってきた政策課題です。最近は、帰国後の生活保障策の充実とともに、継子や養子にかかわる強制退去処分の撤回と在留特別許可を求める運動を、稲見哲男代議士(大阪5区)、藤田一枝代議士(福岡3区)らと一緒に展開しています。
2005年4月25日、衆議院決算第4分科会で、その稲見さんの質問に、自らも中国からの引揚者だという南野知恵子法務大臣が、「中国残留法人の養子や継子の方につきましては、在留特別許可の判断に当たりまして、家族としての実態、ここに重きを置くわけでございますが、その他事案ごとの個別事情を十分に踏まえた上で、さらに人道的配慮をして、適切に措置していきたいと思っております」と答弁しました。
さらには、「(強制退去命令は違反だとの福岡高裁の)判決があったことを踏まえまして、取り扱いを明確にすべく、幼少時、また具体的には6歳未満から実子と同様に育てられ、家族として生活をしてきた方については、その入国を一律に認めるための告示の改正も検討してまいりたいと考えております。なお、告示によりまして一律に認めることとならない方につきましても、個々に、実子と同様に育ったか否か、また育ったとすれば、その経緯や現在の家族状況、生活状況等を踏まえて適切に対応してまいりたいものと考えております」とも述べました。
この発言で、中国残留邦人の継子・養子の強制退去問題は、ほぼ決着を見たのではないかと思います。次なる課題である就労支援や生活支援策の充実に向けてさらに頑張ります。