がん対策基本法で与党と民主党が合意しました

6月1日から、与党案提出者の鴨下一郎(自民)、福島豊(公明)と、民主党案提出者の仙谷由人(以上、いずれも衆議院議員)に、私、山本孝史も加わり、がん対策基本法について、与党案と民主党案の一本化に向けた協議を連日行なってきましたが、6月7日、合意に達しました。

これまでの経緯をかいつまんで報告します。<合意に至った法案> <対照表 与党案をベースに、赤字で記載した部分が新たに追加された箇所で>

民主党はかねてから、仙谷由人衆議院議員が中心となって「がん対策基本法」の法案化作業を進めていましたが、06年4月4日、同法案を衆議院に提出しました。

公明党も福島豊衆議院議員が中心となって、同党案を取りまとめていました(国会には提出されていません)。

民主党は、衆議院での健康保険法等の法案審議にあわせて、がん対策基本法(民主党案)の審議も行なうよう求めましたが、自民党が拒否。それでは「与党案を、早期に国会に提出してください」となり、5月23日、自民党と公明党が協議して作成した「与党案」が衆議院に提出されました。

この時点で、国会会期末まで1か月しかありません。しかも、与党案と民主党案には、二つの大きな違いがありました。一点は、がん対策の推進母体を「政府」と漠然と規定する与党と(この趣旨は、これまでと同じように厚労省が、がん対策を行なうということです)、総理を本部長とする組織を内閣府に設置すると定める民主党案(省庁の壁を越えて、政府全体で取り組むべきだとの主張です)の違い。もう一点は、がん登録制度を設けるとする民主党案と、自公間の協議で断念した与党案の違いです。

5月22日の参院本会議で、与党案と民主党案の一本化を訴えた私としては、患者団体の要望もあって、なんとか二案の一本化を図り、今国会で成立させたいと思いました。そこで、旧知の間柄でもある鴨下、福島代議士と、民主党案を取りまとめた仙谷議員に、提案者会議を開いてくださるようお願いしました。

6月1日、第1回目の会合が開かれました。

がん登録は、自民党内の反対が強いと聞いていましたので、修正内容には盛り込まず、法案の附則に検討規定を設けることを提案しましたが、福島代議士も、「同様の手立てを講じたが、自民党内の合意に至らなかった」とのことでしたので、がん登録制度の法定化は断念しました。

民主党が主張する「がん対策本部」については、私自身、自殺対策基本法の立案過程で、内閣府への設置の困難さを実感していましたので、提案しても無理と判断。かわって、環境基本法に則って、厚労省内に厚労大臣を長とする「がん対策会議」を設置し、関係閣僚の参加を求めることを提案しました。しかし、このアイデアも現状では困難とされ、さらに検討することとしました。この他、仙谷代議士より、法案に盛り込むべき事項が指摘されました。

6月2日、衆院厚労委での「がん対策基本法案」の審議が終了した直後、厚労省より、前日の提案者会議で合意された修正事項を整理した資料を受け取りました。がん対策本部の設置には触れられていません。翌週までに、「お互いに智恵を出し合いましょう」といって、別れました。

週が明けて6月5日の月曜日、第2回目の提案者会議が開かれました。

私から、厚労省内に「がん対策推進協議会」を設置することを提案。鴨下代議士は「自民党内がまとまるように、二汗も三汗もかいてみましょう。ただし、確約はできません」との返事でした。その他の、修正事項については、この時点で合意しました。

6月6日の午後4時、鴨下代議士が私の部屋に突然来訪され、「がん対策推進協議会案で、自民党内をまとめた」との朗報がもたらされました。鴨下代議士のご努力と実力に敬服しました。

6月7日、第3回目の提案者会議が開かれ、合意案を最終確認しました。

別途に掲載しました法案をご覧いただくとお判りのように、がん対策推進協議会は、厚労大臣が長となり、がん患者や家族、遺族、医療関係者(外科、放射線、抗がん剤治療に関する学会の代表や、大学病院の代表者など)、学識経験者(医療問題に詳しいジャーナリスト、医療機器や医薬品関連企業の代表者など)が委員となって集まって(委員は20名以内)、オープンに、がん対策を推進するための議論を行ないます。その結果、患者が直面する多くの問題が議論の対象となり、その打開策も検討されると私は期待しています。

しかも、法案附則で、同協議会は、診療報酬を議論する中央医療保険協議会(中医協)などの審議会等と横並びに位置づけられていますので(重みを持った位置づけです)、その機能に大いに期待できると確信もしています。

一部の報道で、「民主党が大幅に譲歩した」などと報じられていますが、この間の経緯を知る者としては、鴨下、福島、仙谷議員の全員が、成案化と法案の今国会での成立に向けて力を合わせてきた結果です。「何党が、どうだ」とか、他法案の審議との駆け引きに使ったという事実はありません。

法案はまだ成立したわけではありませんが、がん患者としての仙谷代議士の先駆的な取り組み、公明党案をまとめられた福島代議士の熱意、そして何より、協議開始から、週末をはさんでのわずか1週間の間に、自民党内の意見をまとめられた鴨下代議士の尽力が決定打となったと感じています。私の参院本会議での訴えが多少なりとも功を奏したとすれば、嬉しいことです。

法案が成立しても、がん対策の充実を巡っての文部科学省と厚労省の連携が強化されるのか、対策を充実させるための予算が確保できるのかなどと、指摘される向きもありますが、今後、協議会が活動するなかで解決する問題だと考えます。

がん対策の充実に向けて、第一歩を踏み出す基点ができようとしています。さらに、頑張って取り組んで行きます。よろしくお願いします。