医療についての議論には患者交えるべき〔月間CLINIC BAMBOO〕

月間CLINIC BAMBOO 2006年7月25日

月間CLINIC BAMBOO 2006年7月25日掲載

 がん対策基本法が今年の6月に成立した。同法では、がん対策の基本計画を作成する協議会に、医療や行政側の者だけでなく、患者も参画することとされている。従来、政策に関する検討会んあどにサービスを受けるものが加わることはなかった。その意味では画期的な法律だと言える。

  患者の声を反映できるようにしたのは、患者中心の医療が叫ばれているにもかかわらず、患者側の想いが医療・行政側に伝わっていないと感じたからだ。がんを患う私自身も、治療法や病院選びなどについて本に頼らざるを得ず、情報不足を実感した。治療は医師との共同作業。両者でコミュニケーションを図ることがとても重要だ。

  今こそ、誰もが最高の医療を受けられるシステムについて、医師や国、そして患者が、それぞれの立場から考えなければならない。個人的な意見だが、日本の医療を考える時、医療費の伸びを推計して、そのデータをもとに議論を進めるのは、ばかげている。そもそも「めざす医療のために、いくら必要なのか」を議論すべき。順序が逆だ。このままではごく一部の人しか希望する治療を受けられなくなるという、“きめの粗い医療”になっていくだろう。

  病院のベッドの数、あるいは病院自体が減っていくなか、患者が地域に戻った時の受け皿として、今後は診療所の存在がより重要になっていくはずだ。

  そこで、是非とも地域の医療について、診療所の先生方には患者を交えて議論をしていただきたい。診療所には、地域のなかで暮らす患者やその家族の人生を支える役割がある。

  厳しいことを言うようだが、たとえば「平日の朝9時から夜7時までビルのなかに診療所を開きます」という経営スタイルでは、今後、その存続は厳しいものになるだろう。多額の税金が投入されているにもかかわらず、「24時間オンコールではない」「土日は自由に遊びに行ける」という姿勢では、いずれ国民からも厳しい目が向けられる気がしてならない。