山本孝史さん がんを公表した民主党参院議員〔毎日新聞「ひと」〕
毎日新聞「ひと」 2006年5月29日掲載
「がん患者は先のことが考えられないつらさと向き合い、一日一日を大切に生きている」。医療制度改革関連法案を審議する22日の参院本会議で質問に立ち、自らがんであることを公表した。事務所に届いた激励メールに「励みと受け止めてくれた人がいたのなら、思いがけない喜びです」。
がんが発見されたのは昨年暮れ。月に1度の抗がん剤治療を受けながらの政治活動だ。今は与党と民主党がそれぞれ提出した「がん対策基本法案」の今国会成立に力を注ぐ。「何が必要で、解決にはどういう段取りを設けなければならないのか。土台作りには法律が必要」と訴える。
5歳の時に交通事故で兄を亡くした経験から、学生時代は交通遺児の支援活動に携わった。国会議員になってからも、薬害エイズ問題や自殺対策など、常に「命」の問題にかかわってきた。
だが自らのがん公表については、質問が決まってから2カ月間悩んだ。政治的な波紋、支持者の動揺……。それでも公表したのは「当事者の訴え」の重みを信じたから。「やれることは、その時やれる人がやらないと。たまたま私がそういう(国会の)場にいて、その場でできることをした」
がんという病気について「ぽっくり死ぬのではない。やり残したことも、新たなことも、成就する(時間的)余裕が与えられている病気。治るという前向きな希望を持てば、必ずいい人生になる」と笑顔を見せた。【山田夢留】
【略歴】山本孝史(やまもと・たかし)さん。大阪市出身。米ミシガン州立大大学院修士課程修了。93年衆院議員に初当選。01年参院議員となり、民主党「次の内閣」厚労相などを歴任。56歳。